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第1章の6話 兵隊長レグルス


森の中を駆け抜ける3人。
恵けいを先頭に火の手が上がる森に近づいていく。
ゴォウゴォウと火の手が増していく山火事。
――その時、前方から森の動物達が迫ってきた。
いや違う、火の手が上がる森から逃げ出してきたのだ。
「キャ!」
遅れて。
「うわっ!」
「キャッ!」
とケイ、スバルとアユミちゃんが森の動物達の進行を妨げないように躱した。
(いったい何が起こってるの!?)
「――この森の騒ぎよう、尋常じゃない!!」
とケイが呟いたのを皮切りに。
「――いる! 何か、得体の知れないものが……!」
と僕の危機感知能力が反応を示していた。この森はやばい、全力で逃げろと。
その時、アユミちゃんが僕に話しかけてきて。
「いるって何が……」
「……」
僕は精神を集中し、危機感知能力を高めた。感覚的に捉えてみる。

地図上に赤い点が3つあり。これは僕達の事を指し示している。
幾つもの緑色の点が一塊になってバラバラに逃げていた。おそらくこれは、大村小学校と長崎学院の生徒達。一塊なのはグループだからだろうか。
そして、2つの黒い点があり。その1つが激しく動き回り、その一塊を1つ1つ念入りに消しているのだ。
僕はそれを強く知覚して、恐怖で震え上がった。

「うわっ」
「ッッ」
ビクッと身を震わせるスバル。
それを見ていたアユミちゃんも続いてビックリした。
「ちょっとビックリするじゃないの!」
僕は身の危険を感じたため、アユミちゃんに掴みかかった。
「ここはマズイ!! 何かいる!」
「何かって何がよ!」
「1つ1つ命を喰ってるんだ!! 十分ヤバいだよ奴だよこいつ!!」
僕はスゴイ慌てていた。こいつはホントにヤバい奴だ。今逃げないとホントに全滅しちゃう。
だけど、アユミちゃんの反応はとても冷ややかで。
「……何? スバル君の妄想の話!? 全然笑えないんだけど……!」
「アユミちゃん!!」
(僕を信じて――っ!!)
僕は魂の声を上げた。でも、アユミちゃんの反応はとても冷ややかで。
「それよりもスバル君」
「……」
「……あの子、どこか行っちゃったわよ」
「!」
(しまった……)
「それよりも、爪が食い込んでて痛いんだけどなぁ……そろそろ放してくれる?」
そうなのだ。
僕はアユミちゃんに掴みかかった際、その柔肌に爪が食いこんでいたのだ。
僕はアユミちゃんからそう言われ、掴んでいた肩から手を離した。
この時、アユミちゃんは、僕の話を信じてくれなかった――……
顔を上げた僕は、オーロラ大厄災と真珠母雲を見た。
(なんて空なんだ、今日は厄日だ……)
そして、今日の空は血のように赤い夕焼け空だった。


☆彡
燃える爪を振るい――噴き出す鮮血。
続けて燃える爪を振るい――噴き出す鮮血。
泣き出し、泣きわめく悲鳴。
その場からみっともなく泣きわめきながら、逃げ出す男の子がいた。
「はぁっはぁっ」
(誰か助けて! 誰か……!)
その背中が突然、燃える爪で切り裂かれ、赤い血潮を吹き上げたのだった。
その少年は倒れて、辺りに血の海ができあがる。
「これでざっと44人……いや」
続けて、獲物を狩っていく。
「45」
「46」
「47」
と幾つもの血の海を作り上げた

【レグルス(年齢不明)アンドロメダ兵兵隊長】
その姿は無色透明で、陽炎のようにうつろい正体がつかめない。
ただし、そのシルエット的にわかるのは、獣人みたいだった。

「おいL!! お前もやれ!!」
「……」
そう言われて僕は、そっぽを向いた。

【L(年齢不明)オーパーツL】
その姿は無色透明で、陽炎のようにうつろい正体がつかめない。
ただし、そのシルエット的にわかるのは、小さな獣みたいである事と。
その可愛らしい外見に加え、狐や犬みたいな面影があり、小さな胴体、孔雀のような羽を有し、9つの尾があった。

「チッ! お前には怒りがないのか!?」
「僕達が姫姉に言われたのは、この星のライフラインを絶つこと! 大量虐殺じゃないよレグルス隊長!」
「チィ!!」
俺は半分怒りに任せ、Lのすぐ傍を切り裂いた。
俺が切って見せたのは、森の木だった。
その際、奴はビビり目を瞑っていた。フン、小心者め。
「――もういい、俺1人でやる!」
(疼くぜ、獣の血がよぅ)
「この森にいる、地球人のガキ共の血をみてぇぜ……」
(この体の猛りを鎮めるには、もうそれしかねえ)
「……」
僕は黙って、その光景を見守るしかなかった。
完全にレグルス隊長は暴走していた。血の匂いに当てられて――


☆彡
森の中を駆け抜ける足。それはケイちゃんのものだった。
「はぁっはぁっ! はぁっはぁっ」
今あたしが通っているのは、一般的な山道ではなく、獣達が通る獣道だった。
(おかしい!! こんなに山の動物達が騒ぐなんておかしい!!)
目の前から親子の猪が迫ってきた。
「キャッ」
「「ブヒブヒ」」
あたしはそれをかわし、道を譲る。
その際、尻もちをついた。
「いたたた」
と打ったところを労わるあたし。
とあたしの近くには山蛇がいて、その山蛇も急いで、何かから逃げているようだった。
(おかしい……山の動物達がこんなに怖がって逃げるなんて……これは、ただの山火事じゃない!! もしかして……!!)

――それは少し昔のやり取りだった。
『……山火事ですか?』
『うんそうや。それがあたしがあなたの瞳を見て、見た未来や』
『未来……もしかして予知夢ですか?』
とあたしの知り合いが『そうや』と頷いて答えた。
『――もう1つ見えたのは、少年と少女達。何やら大厄災が起きて、泊まる場を失のうて、その人達にホテルで泊めさしてあげる夢。
その中の2人と妙に仲良ぅなって、一緒に山火事へ向かう夢や』
『2人……他には?』
『鈴が見えた。あなたからその少年に鈴を渡してあげる夢。あなたはそこで大きく分岐点が変わる!』

「――そうだ! 確かに姫様はそう言ってた……! え~とどこまで話してたっけ。う~ん……」

――あたしはさらに記憶の糸を辿る。
『――運命の分かれ道……という事ですか?』
とあたしの知り合いが「うん」と頷いて答えた。
『1つは1人で獣道を進む夢。もう1つはある少年が、あなたを探し出し、命を繋ぐ夢。どちらにしても運任せ、天任せ。
あなたは1人で、なるべく多くの命を救おうと懸命に働いた。
……その後、どうなったかは闇の中や……』
『それってもしかして、あたしの運命の人なんですか!? きゃー!』
『いんや。確かに命を繋ぎとめるとは出とるけど……将来付き合う人とは……』
『どっちも同じじゃないですか!』

「…………」
顔から汗が信じられないほど出た。そこはかとなく乙女なのにだ。
(んんっ……!?)
まさか、あたしは記憶違いかと思い、『銀の鈴』と『金の鈴』を取り出してみた。
あった。あたしは2つの鈴をそのまま持ち合わせていたのだ。
チリ~ンと鳴る2つの鈴。

――その音色はよく響き、Lとレグルスの元まで届いた。
「!」
「へ……!」
最悪だ、気づかれてしまった。
だが、幸運にも、目の前をあるグループが横切った。
「フッ……まずはこいつ等からだ」
運が良かった。レグルスの狙いはそちらへと流れた。

――とそんな事を露知らないあたしは、さらに記憶の糸を辿る。
『――もしも仮にタイミングを逸脱した場合、その場合は……』
『その場合は……』
『ケイちゃんのその大きな胸元に隠すんよ』

「胸元に隠す」
あたしは記憶を信じ、その2つの鈴を自慢の豊胸に隠した。
その際、鈍い鈴の音が鳴った。

『そうすれば致命傷は受けるけど、どうにか一命は取り留めるはず……後は』
あたしは獣道を走った。
『高いところの木の上に上るんや』
あたしはその言葉を信じ、獣道を走っていく。
(なるべく多くの命を助けないと……! みんなにこの事を早く報せるんだ……ッッ)


☆彡
――そして、あたしは獣道を駆け抜けて、シシド君達のいるグループを見つけた。
「シシド君!」
「……恵さんか!」
あたしはシシド君に歩み寄る。とその手には『木の棒』が握られていた。
とその他の人達にもチラホラ。これは何かと戦う気構えだ。
「それは……」
「決まってるだろ。これで戦うんだ!」
男の子も女の子も戦う気満々だ。そんな『木の棒』で。
「何と戦うというの?」
「お前、あれを見ていないのかよ!!」
と取り巻きの男子が声を荒げた。
「あんな大量虐殺見たことないわ!!」
「一瞬だったのよ!! 瞬き一つしている間に、5~6人の命が奪われたの!!
「それからあたし達は逃げた。逃げて逃げて逃げた!! 断末魔が響いてこの耳にこびりついて離れないのよ……ッッ!!」
シシド君の取り巻きの女子達は身を震わせていた。
(余程のものをみたのね。可哀そうに……)
「あれは人間じゃない!! 人間にあんな動きができてたまるか……ッッ!! あれは、『炎の死神』だ!!」
「『炎の死神』……」
「ああ、しかも、『目に見えない』炎の死神だ」
「『目に見えない』!!!」
シシド君の口から言われたワードは、どこかで聞いたことがある言葉だった。

『いーい! もしも『炎の死神』とか『目に見えない』とかワードが出たら、もうレッドカード! 何を置いてもすぐに逃げ出しなさい』

「……ッッ」
(ホントに姫子ちゃんの予知夢通りになってきた……ッッ)
寒気が走り。いよいよあたしも肌寒くなってきた。
「……ッッ。そうなの! ねえ、他の皆はどこにいったか……知らない!?」
「……」
皆は押し黙った。
おそらくみんなはもう――

その時だった。誰かの断末魔が続けざまに上がったのは。
「グギャアアアアア!!!」
「ギャアアアアア!!!」
「もっもう!!! もうやめてくれ――!!!」
「お願い誰かぁあああああ!!!」
「いや――!!! 何で!!! 何で!!! こんな奴がいるのよぉおおおおお!!!」
と、山火事のどこかから断末魔が聞こえてきた。。
あたしは生まれて初めて、その声を聞き、思わず尻もちをついてしまった。
「は……はははは……」
空笑いしてしまうあたし。ダメだ、本気で逃げなきゃ死んじゃう。
もう、涙目だ。
とそれぞれの武器『木の棒』を構える男子と女子。
「おい恵さん!!」
「ひゃひゃい!」
(ダメだ……こいつはもう使い物にならない……)
シシド(俺)は優しく諭して、逃がしてあげることにした。
「……戦う気がないなら、他の人達にこのことを報せたほうが……いいんじゃないのか?」
「そっ……そうねっ! そうさせてもらうわ!!」
とあたしは立ち上がり「じゃあ頑張ってね!!」と言葉を残して立ち去るのだった……。


☆彡
――獣道を走っていくあたし。
その道の途中、向かいの方からクコンちゃんが走ってくるのだった。
その手に持っているのは、『木の棒』か。
「……く、クコンちゃん!?」
「ケイちゃんじゃないの!? 何でこんなところにいるの!? 長話は!?」
「あぁ……」
とあたしはつい長話してしまったのを、後悔した。
これは皆の記憶に残ったに違いない。1班の班長なのに情けない話だ。
「今あたしは、この森が危険だから、みんなを非難させようと……!! でもねっ!! なんかすんごい奴が出て、森が大変な事に……ッッ!!」
「あぁわかってるわかってる! あの一瞬で5~6人の人が絶命しちゃったやつね!」
「……ッッ」
本当だったんだ。
だとしたら人間業じゃない。人間以外の別の何かだ。
そうか。クコンちゃんもその現場を見た1人なんだわ。すっごい勇気があるな
「でもね! ある事に気づいたの!」
「え……」
「返り血よ! 返り血を浴びた奴が激しく動き回ってるのよ! 今ならどんな体躯の奴か拝めるかもしれないわ!」
「!」
「そこをあたしが!! てやぁ!! とカウンターを当ててやるんだから!!」
(そうか……! 例え姿形が見えなくとも、あたし達の返り血は見えるんだ……!
それなら、どんな体躯の奴か一目でわかる。
そこをカウンターで当てるだなんて、さすがだわクコンちゃん!!)

――その時だった。山火事のどこかから悲鳴が上がったのは。
「うわぁあああああ!!!」
「ギャアアアアア!!!」
「そんな!!! 何で!!! 何で!!!」
「自ら燃えるなんて聞いてない!!!」
「なんでこっちの攻撃が効かないんだよぉおおおおお!!!」
「皆!!! あたしを置いていかないで!!! いやぁあああああ!!!」
その断末魔を聞いた時、どちらからとは言わず、あたしとクコンちゃんは恐怖のあまり抱き合った。
「ひぃ!!」
「キャッ!!」
その際、あたしの豊胸とクコンちゃんの胸板(スレンダーボディ)とが密着した。
あぁうん、知ってるよ。あたしが長崎学園でも発育がいい女子ってことは。自慢だからね。
「い、い、今の声」
「う、うん!!」
何度も頷くクコンちゃん。あぁやっぱり怖いんだ。
「……」
(どうしよう……このまま引き返す? でも、パパやママに何て言おう!?
……ううん、あたしはホテルの娘だ。みんなの旅の安全を守るのが、あたしの使命なんだ!
……ごめん、姫子ちゃん。あたし、やっぱり、馬鹿だわ)
あたしは開き直った。
(そうだ、あたしはあたしにできる、働きをしよう!)
とあたしは決心した。
「……クコンちゃん」
「!」
「悪いんだけど、クコンちゃんが来た道の先に人はいるの?」
「……もういないよ。行っても血の海が広がってるだけだから……あたしも怖くなって……」
「そ、そうなんだ……うっ、想像しちゃったぁ……」
そんなもの、ちっとも想像したくなかった。
人がバラバラになった殺人現場だなんて……。
なお、バラバラになんかなってません。血の海が広がっているだけです。
「……じゃああたしはもう行くね?」
「ねえ、恵さん。こっちの方は?」
「あぁこっちの方には、シシド君がいたよ!」
「そ、そうなんだへ~~」
どうやら恵さんが来た道の先には、シシド君がいるらしい。
シシド君がいるという事は男女の取り巻きがいるという事で、恵さんと一緒にいるよりも、生存率はグッと高いはずだ。
それに頼りになるしね。うん。
「……じゃあねケイちゃん。ここで別れよう」
「うん……そっちも気をつけてね」
あたし達は、手を振って別れた。


☆彡
――その頃、スバル達は山道を走っていた。
「はぁっはぁっ」
「はぁっはぁっ。もうっダメ!! 走れない!!」
先にバテたのはアユミちゃんの方だった。
もう2人とも汗だくだ。
「はぁっはぁっ」
僕はアユミちゃんを見た。
アユミちゃんは汗だくで輝いてみえた。
その汗が頬を伝い、首、鎖骨と伝い、ワンピースの中へ。
(きっとあの中も輝いて。おっぱいが……)
「はぁっはぁっ」
あたしは膝に手をついて呼気を整えていた。
(もうダメ、さすがに走れない……! んっ? 何か別の視線を感じるような。特に胸の辺り……)
その時、スバル君がまたあたしの胸の辺りを注視していた。
(はは~ん、まったくもう……!)
「いや~~ホント、熱いな~ぁ」
「うん、ホントに」
とあたしはスバル君に見えやすいよう、わざわざ前屈みになって。
ワンピースの上部の隙間から見える豊満なスポットを垣間見せた。
その時、スバル君は「おぉ……」という感じでガン見してきた。それはまるで宝物を見るかのような目だった。
(嫌らしい……。でも少しくらい、サービスしてあげようか……!)
あたしはワンピースの胸の辺りを掴み、ポンポンと叩いた。
その弾みで、おっぱいがポヨンポヨンよく弾み、波打った。
その時、アユミちゃんは「んんっ……」なんか感じたような様な顔をして、Hな声を上げた。き、気持ちいいんだろうか。
僕も気持ちよくなりたい。
「はぁ……熱いなホント」
と今度はあたしは、熱ぽい声を出して。
懐からハンカチを取り出して、それをワンピースの中に入れた。
あたしは自分の体の拭いたの。
汗できらめくその肢体は輝いてみえた。
これにはすごいスバル君もガン見してきて、カメさんが甲羅から首を伸ばしたような姿勢を取った。ホントにわかりやすい。
と、今度はスバル君は、その手をニギニギさせていた。
(うっ……さすがにこれ以上はまずそうね……)
体裁を保つためにも、ここで切り上げるべきだ。
(ホントに好きね、男子……! でも、もうサービスタイムはここまでよ!)
「スバル君」
「はい」
「見えてるでしょ?」
「うっ……」
「ホントに好きね男子! ふぅ……」
「……」
あたしはこの話は終わりにしたかった。
(スバル君で遊ぶのもいいけど、あまり遊びすぎるのもよろしくない……! 早く、恵さんを探しに行かないと……!)
僕は猛省した。というか女子はズルい、あんなの男子が勝てるわけがないのだ。
「はぁっ……もうみんなどこにいるのよッッ!!」
「あっち!」
「ん!?」
スバル君は獣道を指差した。
「あっちの方から何かが聞こえたよ。今僕達が走っているのは山道で、いわゆる外周、外回りなんだよ!」
スバルは気づけなかったが、何かとは誰かの断末魔だった。
「えーといつから……?」
「恵さんと離れてだから……もう5分以上前!」
ドンッとあたしは怒りに任せ、スバル君のお腹に『鉄拳制裁』を打ちつけたのだった。
「ガフッ!」
とその際、僕の肺から呼気が漏れたのだった。
僕は呼気を「えほっえほっ」と吐き出し、呼吸を整えようとした。
この暴力女子め。本気でその乳いつか揉んでやるんだからな。
「そーゆう大事なことはもっと早く行ってよね! んっ……スバル君は、みんなの場所とかわかるの!?」
「……まぁなんとか」
ようやく僕の呼気は落ち着いた。
「恵さんは?」
「あっち! こっから走って3分~5分ぐらいでつける距離だよ!」
「なーんだ! じゃあ次からはスバル君にナビゲートしてもらえばいいじゃん!」
とあたしは軽いノリで言った。
「と、フードコートエリアで会った彼と、問題の奴との距離は近いよ!」
「問題の奴?」
「うん……少なく見積もっても、4、50人ぐらいの反応が消えた……おそらくもう……」
「何よもしかして死ん……」
「……」
僕はあゆみちゃんの不安を言い当てるように、「うん」と頷いて答えた。
これにはアユミちゃんもビックリした。
けれど……
「……ッッ大変だわ! すぐに恵さんを助けに行かないと! 行くわよスバル君!」
「えっここを通るの!?」
そこは恵けい達が通っていった獣道だった。
「グダグダ言わないの!」
かくして、スバル達も獣道に入っていくのだった。
山火事はさらに広がっていく、ゴォウゴォウと。


☆彡
山火事の中を気をつけて進むシシド達。
その手に持っているのは『木の棒』だ。
俺達は戦う気満々だった。この人数だ、負けるわけがない。
問題はあいつだ。
あいつがいつ襲ってくるのかわからない。だからこそ注意を怠らない。
注意して進むこと、数歩。

――その時が訪れた。
そいつはいきなり俺達を、急襲してきたんだ。
グシャと知り合いの男子がいきなり頭から潰された。
潰れた裂傷から血がブシャーと噴き出して息絶えた。
これには周り生徒達も驚愕し、悲鳴を上げた。
「うわぁあああああ!!!」
「きゃあああああ!!!」
俺達はなりふり構わず、潰れたそいつのところを木の棒で攻撃した。
だが、空を切るばかりで、手応えがない。
「どっ! どこにいる!!? 出てこい!!!」
だが、そいつは俺の目の前にいて。

(いるぜ、お前の目の前にな!!)

俺は気づけなかった。
俺は周りをキョロキョロした。
レグルスはシシドの横にいる少女を狙い、その燃える爪で急襲した。
「ギャアアアアア!!!」
彼女は悲鳴を上げて倒れ、絶命した。辺りは血の海に変わる。
「ひっ、火だ!! 目に見えない奴はやっぱ、火を使うんだ!!」
(うるさい小僧だ、黙れ)
俺は燃える爪を振るい、その小僧を亡き者にした。
「うわぁあああああ!!!」
彼は悲鳴を上げて倒れ、絶命した。辺りは血の海に変わる。
「ッッ!! みんな一か所に集まれ!!! お互いの背を庇い合うんだ!!!」
シシドの指示で、残った皆が集まり、お互いの背を庇い合うようにして、円形の陣を取った。
(ほっほう、少しは考えたものだ……! なら特別に、お前は最後にしてやる……!)
「……」
それは最後にシシドを殺すというものだった。
まずは、取り巻きの男共からだ。
一瞬でその首をはねて、残り2名の男子生徒の命を奪った。
その首があったところから、ブシャ――と鮮血が噴き出した。
その様を見た彼女達は、「キャ――」という悲鳴を上げた。
(次はその柔らかそうな肉を頂こうか)
俺は、その嬢ちゃんの首根っこをガッと掴み、グイッと俺の目線まで持ち上げた。
「うっ……う~~!!」
く、苦しい。あたしはジタバタと足をバタつかせた。
お願い、助けて。
だが、これはチャンスだ。
残された俺達は木の棒で攻撃するのだった。
だが、ヒットしているにも関わらず、空を切るばかりだ。何なんだこれは。
「ッッ!!」
「そ、そんな!!」
「攻撃は当たってるはずなのに何で!!?」
攻撃を仕掛けた俺達3人は驚いた。なんと物理攻撃がきかないんだ。
(残念だったな……小僧と取り巻きの女共……! 俺にはそんな攻撃は通用しない……! どうやらまだ、絶望が足りないようだな……!)
俺は、もう片方の手でもう1人の彼女の首根っこをガッと掴み、グイッと俺の目線まで持ち上げた。
さっきの女と合わせて、窒息死させてやるよ。せいぜい苦しめ。
「ぅ……あ……」
「ぁあああああ」
彼女達はまともに呼吸もできず、苦しそうな声を上げていた。その口からブクブクと泡を出して、とても苦しそうだ。
「あぁ!! どうしてこんな事になるのよ!!! 次はあたしだわ!!!」
そう、次はお前だ嬢ちゃん。
そして、最後はお前だお坊ちゃん。
(このままじゃマズイ。本気で全滅してしまう……)
俺はとっておきを出すしかなかった。これは使えば、俺は退学処分は決定だろうが、彼女達を救うにはもうこれしかなかった。
(許してくれ!! 父さん)
俺は心の中で偉大なる父に謝り、懐からそれを取り出した。
「学校の奴等には黙っておけよ!!」
「え!!」
「「!」」
(!)
俺は懐から『拳銃』を取り出して構えた。
そして、その引き金(トリガー)を引いて、実弾入りの鉛を発砲したんだ。

パンッ
パンッ
「!」
その時、こちらに向かって走ってくるクコンちゃんが、その音に反応した。
「まさか発砲!?」
あたしは現場に急いだ。
パンッ
パンッ
こちらから離れていくケイちゃんが、その音に反応した。
「拳銃!? いったい誰がっ!?」
あたしは、その場で足を止めた。
パンッ
パンっ
こちらではなく、ケイちゃんの方へ向かって獣道を走るスバルとアユミの2人は、その音に反応した。
「い、今のは……」
「きっと銃声だ!!」
と僕は言った。
「銃!? 子供が銃を持ってるの!?」
「うん、そうとしか思えない! あっ……危ない!! 何やってるんだ!!」
「え……」
「そっちじゃない!! 何でケイちゃんの方に逃げていかないんだ君は!!」
僕が知覚したのは、まだ会って話したのことのない少女クコンだった。


☆彡
クコンちゃんはそのまま獣道を駆け、シシドの方へ向かっていく。
とあたしの目に、シシド君と残りの彼女さんの後姿が見えてきた。
「あっ……シシド君~~!!」
と手を上げるあたし。
「!」
「!」
「「!」」
その声に気づき、シシドと残りの彼女さんが振り向いた。
並びに首根っこを掴まれている少女2人も、その声に気づいたのだった。
「君は、確かクコンさん!」
「おっ! 何々! さてはその『拳銃』でやっけちゃったかな~! やるね~憎いね、このこの!」
とあたしは悪ふざけ半分で、拳銃を持ったシシド君の背中を突いた。
「……だが、多くの取り巻き達を失ってしまった……」
俺は意気消沈し、構えたその手を下ろした。
「でもよく、あの化け物を倒したじゃない! さすがだね!!」
「フッ……」
と笑う俺がいた。だが――

(――希望はこれぐらいでいいか!? これから訪れるのは絶望だ!)

シシドが撃った実弾は素通りし、その向かいにあった木に6発の実弾が撃ち込まれていた。
こいつには、『木の棒』も『拳銃』もきかないのだ。
「シシド君!」
「さあ早く、あたし達を助け」
レグルスの手によって、首根っこを捕まれていた彼女達2人は、希望を抱いていた。
生きて帰れるという希望を。
だが、レグルスはその手に力を込め、ゴキッゴキッと彼女達の首の骨を折り、死に至らしめる。
「ゲフッ」
「ゲエッ」
さらにゴォウゴォウと彼女達の遺体を燃やしたのだ。
「何!?」
「キャッ!!」
「嘘ッッ……」
シシド、取り巻きの彼女、クコンの順に驚いた。

(お前に、その武器は似合わねえよ)

「あっ……」
俺は小僧から拳銃を取り上げた。
そして、小僧の目の前で、無造作にその玩具をバキバキと壊して見せたのだ。
その様を見て、少年と少女達の顔が恐怖で歪んだ。
おっいいねえ、いい顔だ。
じゃあお返しに、死なない程度にその腹にパンチを入れてやるよ。
――ドスッ
「おぶっ……おえぇえええ」
得体のしれない何かに殴られた俺は、その場でうずくまくって、吐いた。
いい具合に下がる頭。俺は無性に踏みつけたくなった。
――ドンッ
と俺はそのまま、死なない程度にその小僧の頭を踏みつけた。
「あ……あああああ」
――ミキミキ
とその小僧の頭蓋骨から、いい音が鳴る。いいねえ、いい音だ。

「シシド君!!」
「シシド君から離れろ!!」
と彼女達2人がその手に持った『木の棒』で俺を攻撃してくるが、残念きかない。
「何で、何でこっちの攻撃が素通りするのよ!!」
「……ッッあんたいったいどこの誰よ!!」
(そうだ! こいつは今、シシド君の頭の上に足を乗ってけているんだ! 確実にそこにいるのに、なぜ……!? こっちの攻撃が素通りするのよ! そんなの卑怯よ!!)
「クッ! このこの!」
「このクソ野郎があ――!!」
だが、全ての攻撃は素通りした。

(目障りだな……! 1人やっておくか……! この攻撃は慣れてねぇけどエナジーア弾!!!)
レグルスはその掌からエナジーア弾を放ち。
それがクコンに命中したのだった。
そのままクコンは吹き飛ばされ、先に倒れた者の血の海にドシャッと落ちたのだった。
その身はピクピクとし、まるで動く気配がない。
その様を見ていて、残された彼女は、恐怖した。
「あ、あは、あはははは」
壊れた。
壊れた人形のようにその少女は笑うのだった。
そして、その綺麗な顔に迫るレグルスのその大きな手。
その大きな手は、壊れた少女の顔面を掴み。

(つまんない奴だったぜ)

その手からボッと発火した。
その炎はその少女を飲み込み、その少女は最後に踊ったのだった。踊り狂って死んだ……。
その様を地に伏したシシドは見ていた。
口角がガチガチと震え上がり、恐怖と絶望を目の当たりにしたのだ。
もう、俺の戦う意志は折れていた。
レグルス(俺)は足をどけて、そいつの首根っこを掴んだ。
俺の眼前まで、そいつの顔を持ち上げる。

(ダメだ……体に力が入らねえ……。……もう、楽になりたい。逆らう気はねえから、潔く殺してくれ……ッッ!!)
俺は涙を流した。
その大粒の涙は、頬を伝い流れてゆく。
レグルス(俺)は、さっきの少女を殺したときと同様の手段で、このガキを焼き殺そうとしていた。
その手を、こいつの顔に当てた時――

『――適合者確認! エナジーア変換システムが使用できます!!』

(!)
なんと幸運が訪れた。それは僥倖(ぎょうこう)に他ならなかった。
俺は大いに驚いた。
驚いた拍子にそのガキを滑り落としてしまったんだ。
「グッ」
と呻き声を上げる少年。
助かった。なぜかはわからないが手元から滑り落したらしい。
ラッキーだ。俺は立ち上がれないまでも4つ足でその場から逃げようとしていた。
だが、ドシンッと俺は背中から踏まれた。
「グッ」
(逃がさねえよ。)
「グッ……クッ」
(俺は死ぬ……!! 今日、死ぬんだ……!!)
俺は殺されると思い、生まれてこのかた涙を流したためしがないのに、泣いて泣いた。
無様な男泣きだった。
「『エナジーア変換』だ!」
『ピッ! 承認しました! エナジーア変換システムを起動します!』
――カッ
と辺りに眩しい閃光が走った――


TO BE CONTIUND……

しおり