バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第1章の7話 災誕! 災禍の獣士


――カッ
次の瞬間、辺りに閃光が走った。
その閃光が収まるとそこにいたのは、生まれ変わったレグルスだった。
いや、レグルスというのは古い名だ。
新しく生まれ変わった者には新しい名がいる。

「俺は……『災禍の獣士』だ……!」

俺は目を瞑った。
俺の瞼に移るのは、アンドロメダ王女の一言だった。
『ライフラインを絶て』という。
俺は目を開けた。
「『ライフライン』……奴等の財産……! 電力発電所・ダム・ガス施設……そして、お前等の子供を1人残らず。この手で!」
俺は手を上げて、ボッと発火させた。
僕はその光景を、高いところから見下ろしていた。
「エナジーア変換システム……まさかここに、レグルス隊長の適合者がいたなんて……。なんて不運な子なんだ君は……! んっ……あれは……」
僕は高いところから見下ろしていたから、よくわかった。
残りの人数達が。
そのグループの中に男の子と女の子がいた。
それはスバルとアユミであった。
「!」
その時、何かが僕を推した気がしたんだ。

【――夕焼け空が沈むとき――黄昏時の陽光が山火事の森を差し込み、運命の2人は邂逅を果たす】

「はぁっはぁっ」
「はぁっはぁっ」
獣道を走る2人。
その時、スバル君が何かに気づき、アユミちゃんの手を掴んで制止させた。
「待って! アユミちゃん!」
「ッッ」
立ち止まるあたし。
あたし達は一度ここで、呼気を整えることにした。
「……はぁっはぁっ。まずい事になった……!」
「はぁっはぁっ。まずい事って?」
「……仲間の命を奪っていた奴のパワーが増大した……!」
「……」
あたしはその話を聞き、急いで恵さんを迎えに行くべきだと判断した。
「……恵さんは、今どこにいるの!?」
「また進路が変わって、こっちの方!」
「よしっ行こう!」
あたしはそう言い。
スバル君が「うん」と頷いて答えて、
あたし達は2人は、また進路を変えて獣道を進むのだった。


☆彡
「今の俺なら、前の俺にできなかった事ができそうだ……!」
俺の目線まで持ち上げていた手は燃えていた。
俺はその『炎』を『光熱』へと変えた。
「これが、俺の新しい力だ!! 炎上しろ、我が炎!! 『飛来炎上爪』!!!」
俺はその場から動かずに、山火事の向こうに見えた逃げ惑うグループへ向けて投じた。
『飛来炎上爪』は森の中を駆け抜ける。
一度狙った獲物を追いかけ、背後から急襲するのだった。
「ぎ、ギャアアアアア!!!」
背後に裂傷後、瞬く間に火炎が燃え上がり、その少女は踊り狂って絶命した。
その様を見ていたグループは驚いた。
「ひっ!!」
「何があった!!」
「ねえ、あれを見て!!」
それは、森の奥から迫ってくる幾つもの『飛来炎上爪』だった。
「「「!!」」」
その様を目撃した少年少女達は、驚愕した。
その場からすぐに逃げ出した。逃げる方向はてんでバラバラだ。
「無駄だ」
それは一度狙った獲物は逃さないとばかりに、カクンと曲がり、背後から裂傷した。瞬く間に燃え上がる炎。
少年少女達は、その身を焦がし、踊り狂い、そのグループは全滅したのだった。

――その光景を高いところから見下ろしていたLは、驚いた。
(ダメだ……! これはもう以前のレグルス隊長の比じゃない。こっこれは……!)

「まだだ!! 速さはこんなもんじゃないぞ!!」
俺はその場からドンッと駆けた。一直線上に炎の轍(わだち)ができる。
駆ける、駆ける、駆ける。森の中を駆け巡って、山火事から森林火災へと辿る。
瞬く間に男子と女子生徒達の悲鳴が上がっていく。
「うわぁあああああ!!!」
「ギャアアアアア!!!」
「何でいきなり!!!」
「パパ!!! ママ!!!」
「嫌だぁあああああ!!!」
「50」
「60」
「70」
「80」

――そして、そいつは恵けいの前に現れた。大きな炎として。
「何、大きな炎!?」
俺は背後や横からも少年少女達を襲っていた。
だが、お前の前に姿を見せたのは、記念すべき88番目だからだ。
「88」
(まさか炎の死神……!)
俺は一直線に駆け抜け、×の字にその少女の命を絶った。
宙に舞い、燃え上がる火の粉と血飛沫、それはさながら血の花であるようだった。
その際、その少女が豊胸に隠していた鈴の音がリィ~ンとなった。
そして、あたしの意識がなくなる前に見えたのは、宙に舞うたくさんの火の粉だった――……


☆彡
獣道を駆けるスバルとアユミ。
だがその時、スバルの足が止まった。
「あ……あぁ……」
「どうしたのスバル君……?」
「……ッッ。消えた……恵さんの反応が……」
それは恵けいちゃんの死を意味するものだった――……
僕は立ち止まって、その場から動けなかった……。
スバル君からその話を聞いたあたしも、当初の目的がなくなり、立ち止まってしまう
僕は、あたしは、その場から動けなかった……。
場に静寂が包み込む。
「……」
「……」

――その様子を、高いところから見下ろしていた者がいた。Lだ。ここで僕は、あの子に接近してみたくなった。

「……ねえ、スバル君。ねえ」
「!」
その顔を上げる僕。
「嘘だよね……あの子が死んだなんて、嘘だよね……」
「僕は辺りを見回した」
辺りに転がっていたのは、血の海が広がる少年少女達の遺体だ。
アユミちゃんは現実を受け入れ難かった……
「……ッッ」
「……」
押し黙るスバル君。
あたしも受け入れ難いけど。ここで行動しないなんて嫌だ。
「ねえ、アユミちゃん。引き返そうか……」
「……」
そんな言葉聞きたくなかった。あたしはスバル君に冷たい言葉で返した。
「1人で勝手に帰れば……!」
「!」
それはここで別れるというものだった。
その間にも、誰かの断末魔は聞こえてきて。
それが僕達の恐怖心を増大させた。
「「……ッッ」」
「あ、アユミちゃんは怖くないの? 人がいっぱい死んだんだよ!」

「『こっ怖いよ! けどね……今日、逃げ帰ったあたしを見て、明日のあたしはきっと後悔すると思うから』!!」

「!」
僕の脳内にそのフレーズが何度も反響した。
「……ッッ!! ここで逃げたらか……! わかった! 僕がナビゲートしよう!」
「いいの!? 逃げないの!? 別に逃げ出しちゃってもいいんだよ!」
「いや、ここで逃げ出したらさ……明日、アユミちゃんに声をかけづらいと思ってさ!」
「フッ」
あたしは笑みを浮かべた。
(さすがスバル君、それでこそ男の子だよね!)
あたしはスバル君を見直した。
「ここから一番近いのは、彼の反応が消えた場所だよ」
「あぁスバル君が、なんでそっちの方に行くんだ! って言っていた場所だね!」
「うん……」
(覚えてたんだ……)
「そうか……あの子も死んだんだ。そうか……うん……。……行こうか……」
あたしはスバル君に手を差し伸べた。
「……うんよろしく」
差し伸べられたその手を、僕は握り返した。
「こちらこそ」
笑顔を向ける2人。
(君だけは)
(あなただけは)
(僕が守る)
(いつまでも一緒に)
そうして、僕達は仲良く獣道を駆け上がっていくのだった。
――だが、その後ろから降りてくる光があった。
「クスクス」
それは、Lだった。
僕はその仲睦まじい様子を見て、笑うのだった。


☆彡
僕達2人は山火事の中を走っていく。
周りは物凄く熱く、ここにいるだけで火傷してしまいそうだ。
チリチリと肌が痛い。
「ってこれはホントに山火事と呼べるレベルなの!?」
「もう、山火事じゃなくて森林火災じゃないの!? にしても熱いッッ!!」
とその時、アユミちゃんは何かを見つける。
「!」
それは水が入ったままのポリタンクの容器であった。誰かの忘れものだろうか。
あたしは(ラッキー!)と思った。
「スバル君!」
「わっ、何々!?」
トポトポとあたしはスバル君の頭の上から、水をかけてあげた。
これで肌が焼ける心配はなくなるはず。
(なるほどそーゆうことか)
「フフフ……次スバル君、お願いね」
「OK!」
「キャッ! 冷たーい!」
「フフフ」
と今度は僕がアユミちゃんの頭の上から水をかけてあげる。
これでアユミちゃんの長い髪が痛む心配はなさそうだ。
僕は水かけながら、その長い髪を洗ってあげる。
なんてキューティクルで繊細な髪なんだ。それはもう絹のように肌触りがよかった。
「んんっもう、いつまで触ってるのよもう」
「……さあ行こうか」
「……うん」
2人とも準備万端。


☆彡
――さあ、行こうとした時、スバルの危機感知能力に黒い点が最接近していた。ってもう近くにいる。
僕がそっちの方向に向いた時、小さい何かが宙に浮いていたんだ。多分、宇宙人。
『ウフフフ、アフフフ』
と僕はにこやかに笑っていた。この子達、見てて可愛い。
「……」
(……でもきっと! 僕の姿が見えないんだよな~~残念! 残念ー!)
僕はこの小さな宇宙人を見ていた。
僕はこの小さな地球人達を見ていた、それにしても、いいないいな。
「……」
(……あれ? ひょっとしなくても見えてる、まさか――ね)
僕がそう思ったとき、僕の顔を信じられない顔で見ていた彼氏さんは、信じられない勢いで振り返り。そして――
「――に、逃げろ!!!」
彼女さんの手を掴んで逃げ出していった。
これには僕も。
『……えっ……! も、もしかしてこれって……』
僕はすぐ様、あの2人を追いかけた。
追いかける僕。
僕は姫姉の言葉を思い出していた。
姫姉はあの時、『ライフラインを絶て』という指令の他にも――
『そうじゃ! もしも地球人の中に、我等の姿や声を理解できる者がいたならば、わらわの元まで連れてこい』という指令を残していたのだ。
これは――
『――朗報だ! まさかこんなところにいるだなんて!!』
だが、この時預かり知らぬところだが、アンドロメダ王女が求めていたのは、話が分かる大人だった。断じて子供ではないので、そこはかとなく残念だった……。
僕はついてると思った。

――山火事の中を走り抜ける2人。それを追いかける宇宙人のLという構図が出来上がっていた。
「ちょっとスバル君! どうしたの!?」
「やばいやばいやばい!!! もう1人の方に見つかちゃった……!」
「えええええ」
それは大変なことだった。
(クソッ!! あの時僕はもう1人の方にも注意していたのに……! 人殺ししている方に注意を向け過ぎた!! 何てことだ、穴があったら入りたい……ッッ)
と、すぐにその小さな宇宙人に追い付けられた。
『ねえねえ、君々見えてるよね?』
これには僕も、「ギョ」と驚いた。
「見えてません!! そして何て言ってるのか言語がわかりません――ッッ!!!」
『……』
「……」
とLとアユミが押し黙る。と次の瞬間には。
「『見えてるじゃないの(じゃないか)!!!』」
「ヒィ~~ン!!」
僕は必至で、見えていない、聞こえていないフリをした。
「呆れた……んっちょっとまてよ……」
と次にはあたしの顔からサ――ッと血の気が引いていった……。
「待って待って!! もしかしないでもいるの――!?」
あたしは段々と怖くなっていった。目に見えない恐怖ほど、怖いものはない……。

――とその時、前方からケイちゃんも殺めた災禍の獣士がきた。その後ろには炎の轍(わだち)が、こ、怖っ。

「なに炎!!」
ちょっと待って、こっちにくるんだけど……ッッ
「あっあいつはケイちゃんを殺めた奴だ!!」
にしても来るのがいくら何でも速い速過ぎるッッ。相手は僕の知覚を振り切っていた。
その様相は前門の虎、後門の狼を表していた。
「あっ」
(レグルス隊長だ! あれ、なんか様子がおかしいような……なんで?)
僕は気づいていなかった。僕の重要性に。
俺、災禍の獣士は、ある命令を至上としていた。
それは、Lのお守りをすることだ。
姫君から言われたことでもあるが、あいつはアンドロメダ星とソーテリアー星の生きた宝なのだ。
首が飛ぶとかその程度で済む話じゃない。
俺は焦りに焦った。
そして、眼前にあいつを発見したのだ。
相中に地球人の子供達を挟んでいる。よーし、L、挟み撃ちだ。
「ちょっちょっ!」
「ッッ」
(ダメだ!! 躱すなんて無理だ!! 威圧感あり過ぎッッ!!)
走っていた僕は無我夢中でアユミちゃんの手を掴んだ。
それが僕達の生死を分ける。
「『炎上爪』」
「!」
(まさか僕の目の前で、この子達を殺す気なの!?)
そう思ったとき。
この少年は思い切った行動に出た。
なんと彼女さんの手を引っ張り、思い切り反転、僕の方に駆け出してきたのだ。
う、上手い。
僕はすかさず。「『バリア』(エンセルト)を張った。この子達を護る。
ま、マズイ、このままでは『炎上爪』で、Lを攻撃してしまう。
俺は攻撃に移る一瞬、パワーを抑えた。
そして、そのまま両者の『炎上爪』と『バリア』(エンセルト)がぶつかり、ドォオオオオオンと爆発。
そして、炎の轍(わだち)が周囲に散ったのだった。
「グッ」
「クッ」
爆発の中、『バリア』(エンセルト)を張ったLが耐え、災禍の獣士がそのパワーを抑える。
その刹那、僕とアユミちゃんは爆風に煽られ飛んでいた。
「うわぁあああああ」
「きゃあああああ」
そして、僕達は離れ離れになりどこかに落ちたのだった。


☆彡
【恵起ホテル】
――その頃、恵起ホテルでは
高台にあるホテル周辺に人だかりができ、ザワザワと騒いでいた。
その人達が見ているのは、今も赤々と燃えている山火事だ。
そう、今、スバル達がいる場所だ。
「おい森が燃えているぞっ!!!」
「嫌ぁあああああ!!!」
「ちょっと待ってよっ!! まだうちの生徒達があの森の中に……ッッ!!」
「恵さん!!!」
「ケイちゃーん!!!」
そんな悲鳴めいた叫び声が上がる。
そんな中、その火災の延焼範囲が、不自然なまでに縦横無尽に走り抜ける。
これを不可思議に思う人達がいた。
「おいおい、何だあの炎の轍(わだち)は……!?」
「まさか……1人の生き物がやった仕業なのか!?」
「馬鹿言うでねえ!! この世にあんなに早ける動物がいるかいな!!」
「もし、そん事さいたらそいつは……『神獣』様だ……!!」
と、森の一点で炎の風が集まり、火災旋風らしきものが起った。
それを見た人々は「おおおおお」と驚いた


その様子を長崎学院の先生方と班長が見ていた。
だが、先生方は頭を押さえていて。
「……ッッ」
「先生、横にならなくて大丈夫ですか!?」
「ああ、大丈夫だ!」
「でも他の先生方は……ッッ」
班長達はほぞを噛んだ。
そうだ。他の先生方のほとんどはちょっと休むから大丈夫だといい、そのまま死んだんだ。
今、生徒達がその亡骸を前にして、泣いていた。
その死んだ先生の顔の上には、白い布が被せられていた。ご愁傷様だった……。
「……ッッ、その原因はわかってる! だが誰にも言うなよ!」
「!」
僕は頷いて応えた。
「俺達教師達のほとんどは、頭の中に『チップ』を埋め込んでいるんだ!
そのチップは、AIナビやスパコンと連動して日夜やり取りしている!
それは生徒達の前で抗議する以上、高度な情報化社会において必要不可欠なことだった!」
「そんなチップが頭の中に……!」
「あぁそれは君の親にもだ。もちろん、全員じゃないがな……!」
「……ッッ」
僕は恐怖した。頭の中にそんな恐い『チップ』が植えられていただなんて。
「俺達が廃人になるのも時間の問題だ……!! ならなくても脳に重大な障害が残る……!! どちらにしても、無事じゃ済まなくなるだろう」
「……」
「だからやるべき事をやろう! 人として、1人の大人として!」
先生は周りの班長達に振り向いた。そしてこう抗弁を述べる。
「すぐに救助部隊を編成していくんだ!! 急げ!!」
「取り急ぎ君達! 残りの2班と3班の生徒達に集まるように伝えて!! さあ急いで」
「はっはい!」
と班長達は駆けだしていった。
そして。
「これが大人の最後の仕事だ!」
「うっ……ううっ……」
自分達の死期を悟った大人(先生)達は涙した。
だが、その涙を拭いて、前を見据えるのだった。
――その様子を見ていたのは遠くから眺めるホテルのオーナーだった。
感動ものだった。
そこへ私の奥さんが。
「……あなた……ケイをお願い」
もう私に迷う理由はなかった。
「やるべき事をやろう! 1人の大人として……!」
私は決意を新たに前を見据えるのだった。
見つめる先は燃ゆる山火事。そこにいるであろうケイを助けに行くことだった。
「待ってろケイ……今パパがいくぞ!!」
ゴォウゴォウと森が燃えていた。


☆彡
――そして、ロビーにて号令を開いた。
ここに集まっているのは、大村小学校と長崎学院、そしてホテルの関係者達だった。
「皆さん聞いてください! 今から部隊を編成し、子供達を助けに行きます!!」
と号令をかけたのは、長崎学院の先生だ。
この号令を聞いた生徒達は、ザワザワと反応を示した。
「警察と消防、そして病院には、前もってこの事を報せに先生方を走らせています」
そう、大村市の先生と長崎学院の先生方は、この事を報せに警察と消防と病院に早馬を出していた。
「今から、2班と3班合同で、取り急ぎあの山火事の現場に向かいます!
同じ、子供達の命を助けに行きましょう!」
「「「「「はいっ!!!」」」」」
「君達ホテルのスタッフ達も、バックアップに当たってもらう!!」
「「「「「はいっ!!!」」」」」
小学生達、ホテルのスタッフ達は威勢のいい返事をした。
(――ケイ、無事でいてくれ)
そして、恵けいのお父さんは心持ち加減顔を上げて、娘の心配をするのだった。


☆彡
山火事の中、あの爆発に巻き込まれたスバルとアユミは、離れ離れになっていた。
その周りの現場は、妙に荒れていた。
「……」
「……」
2人とも気絶していた。


★彡
そんな中、アユミちゃんは夢を見ていた。
『痛っ……」
あたしは夢の中で、足をくじいてもう走れなかった。
「ッッ……ッッ」
と顔がゆがむ。声を張り上げて叫びたい。
けれど、近くには大きな火の玉が徘徊していた。
あれに見つかったら死ぬ。瞬時にそう悟ったわ。
あたしは、息をひそめた。
何分も何十分も、そして優しい声が後ろからかけられた。
「アユミちゃん」
「スバル君」
スバル君が見つけてくれた。あたしはその場で立ち上がろうとしたけど。
「あいたた」
うまく立てず、尻もちをついた。
「足を怪我したのかい?」
「うん」
「立てそう?」
あたしは「ううん」と首を振った。
(無理だ、立ってなんて歩けないよ……ッッ!)
「そうかわかった」
とスバル君はあたしを抱き寄せて、お姫様抱っこしようとしたけど……。
「無理だよ……スバル君の細腕じゃ」
「うぅ……できると思ったんだけどなぁ。う~ん」
あたしもスバル君に続いて「う~ん……」と考えた。
そして、あっこれならできるかもと思った。
「スバル君! あたしに肩を貸してくれる?」
「肩を……あっそうか! アユミちゃん冴えてる――!」
「へへへ~」
とスバル君はあたしのアイデアが受け入れる。
スバル君はあたしの脇の下に顔を入れて、一気に持ち上げた。
うん、これなら歩けそう。
「あ……」
「うん……?」
なんか豊胸(横乳)に何かが当たってるような。それはスバル君の横胸だった。
あたしはそれを見て「はにゃん」と変な声を上げた。
「ご、ごめんアユミ!!」
すぐにスバル君はその危ない体勢をやめようとした。だけど、何か惜しい気がして……。
「いいの!」
「!」
「いいの……このまま運んでくれる?」
「うん……」
スバル君はあたしの体重を半分持ってくれて、これならどうにか歩けることができた。
でも、動く度にあたしの豊胸(横乳)がスバル君の横胸に、ポヨンポヨン当たってよく弾んだものだ。
スバル君は恥ずかしそうな顔をして、そっぽを向いていたなぁ。
あたしはその事が気になって。
「ねえ、スバル君」
「うん……」
カリカリカリ
「……1つ賭けをしない?」
「……賭けって?」
「うん、勝敗は簡単……あいつに見つからずに無事に帰れたら……」
カリカリカリ
「あたしの裸……見てくれる?」
これにはスバル君もすごく驚いた。
あたしも言っていて恥ずかしい。けどね、これには訳があってね。
「こんな時代だし、もしかしたら……親もいないかも。だから2人でたくましく生きていくしか……」
「……見つかった」
目の前には、あの大きくて危ない火の玉があった。
「そんな……キャッ!」
スバル君はあたしを投げ飛ばして、あいつの眼前に出た。
「す、スバル君!」
「……そう言えば聞いてなかったね。あいつに見つかった場合は……」
「……賭けの内容を変更するね。もし、もしもよ!」
カリカリカリ
「そいつを倒すことができたら……あたしをお嫁さんにもらってくれる?」
スバル君はにこやかに笑った。
そして、それがきっかけであるみたいにスバル君の横に上から光る何かが降りてきた。
「だったら負けられないね。この勝負!! 行こう!! ――!!」
その時、スバル君は誰かの名前を言ったような気がした。
カリカリカリ
「あ~~もううっさいなこの音!!! どこの誰よ!!!」
カリカリカリ


☆彡
――あたしは目を覚ました。
あたしの目の前にいたのは、リスだった。
(うん?)
リスはリスでもAIナビのリスじゃなくて、山に住む山リスだからね。
そのリスは「カリカリカリ」とクルミをかじっていた。なるほど、その音か~~。
あたしは「あっ」と声を上げて、その声にビクッとした山リスはどこかへ逃げていった。
「なるほど……あの音はリスだったか……って事は、夢か~~」
あたしは惜しい夢の続きを見逃した気がした。
でも、夢は夢でもあの夢は――
「――ってあたしどんだけ性的欲求不満気味なのよ!! どんだけ夢の中のあたしエロイの!? えっえっ!? そゆこと!? そゆ事なの!?
あ~~夢の中のあたし正直だなクソ――ッ!!」
あたしは自分に潰れた。どんだけ~~。いいないいなもうッッ
「本気で羨ましい……」
本音がだだ漏れだ……。
うん、でも所詮は夢だ。夢を現実にするのは力なんだ。その為にはひたすら行動するしかない。
あたしは立ち上がり、辺りを見回した。
山火事だった。火の粉が舞い、バチバチと音を立てていた。
「よくこんなところで寝てたもんだ……」
我ながら図太い神経に驚いた。けれど、これはあくまで気絶だった。
「……よしっ! ここからならスバル君が言っていた! 『何やってんだそっちじゃない』って子とはち会えるかもね!」
そして、あたしは燃える山火事の中を進んでいくのだった。
「待ってろ~! 夢の続き~!」
あたしは手をグーにして挙げて、ここからそのやる気を出すことにした。


☆彡
――そして、スバルは。
「……」
山火事の中。
「……うっ……」
ようやく僕は目を覚ました。
「……ここは」
森はバチバチと音を立てて、火の粉を上げていた。
そこにいるだけで肌がまるで焼けるようで、すごく熱かった。
その時、音を立てて、上から燃ゆる木の枝が落ちてきた。
「ビックリした」
僕はその燃ゆる木の枝を掴もうとした。
「熱っ!!」
それは熱くて、とても掴めそうになかった。
「はぁ……ここはどこなんだろう?」
僕は目を瞑って、当時の光景を振り返った。
額に手を当てて考える。
「そうだ、確か……」
あれは突然の出来事だった。
僕はアユミちゃんを連れて、小さな宇宙人に追いかけられていた。
でも、前方からケイちゃんを殺めたもう1人の宇宙人が最接近してきて、攻撃を仕掛けてきたんだ。
僕はアユミちゃんの手を引いて、避けようとした。でも爆風に巻き込まれて――
「――ハッ! アユミちゃんは……!」
僕は周りを見渡した。
でも、どこにもアユミちゃんがいない。
「どこにいるんだ……?」
僕は落ち着いて周りを見渡した。
その時、僕の危機感知能力が彼女の所在を明らかにした。
「……これって、僕が見つけた子のところに向かってる……? そうか……! 助けに行ったんだ! さすがだアユミちゃん! んっ待てよ……この反応は……!」
それは僕の危機感知能力が拾ったものだった。
なんと地図上で激しく行き交い、あの2つの反応が争っているんだ。
こ、これはまさか……。
「何であの2人が戦ってるんだ……!?」
疑問に思うばかりだった。
今現場では、あり得ない事態が起きていた。


TO BE CONTIUND…

しおり