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第1章の4話 オーロラ大厄災と真珠母雲

【フードコートエリア】
スバルは1人、思い悩んでいた。
「……」
僕は何も言えず、ただただ黙考す。
(何か……何か……他に何か……いい解決策はなかったんだろうか……」
ぼくはそんな綺麗事を考えていた。
――そんな折、ある少女が僕の背後から歩み寄ってきた。あの占い師の少女だ。
「……なんて愚かな人達……」
それは僕達ではなく、今も騒いでいる人達へ向けての手向け(言葉)だった。
「……」
何も言い返せない僕がそこにいた。
少女は言葉を紡ぎ続ける。僕の後ろから。
「……あなたじゃない。そこにいるのはあなた」
(僕は疑問符を覚えた。彼女は何かを訴えているかのようで。それはかとなく、未知的なものだ)
僕の隣にいるアユミちゃんは、やや後ろ斜めにいる少女の横顔を見た。
その少女の横顔はとてももの悲し気だった。
(今にも涙を流しそうな顔。……何者なの……?)
彼女の言葉には、その立ち振る舞いには、何か言い知れないものを含んでいるようで。
「浮かれ、騒ぎ、物事の本質を見ようとすらしていない……。いいえ、起源を知り、いつ自分達の身に降りかかるのか、それすらも受け入れようとすらしていない。
人とは反省しない生き物なのだろうか……」
あたしは言っていてもの悲しくなってきた。
「……」
俯くあたし。
(もしかしてこの子も、今の僕と同じ……)
すぐ近くに理解者がいた。その少女は僕達に背を向けると手向け(言葉)を紡ぎ続ける。
「本当に痛いのはあっち。
それなのに仲間同士で同調するように立ち振舞うような人がいて、なんておバカ……」
「……」
僕はそんな馬鹿な人達を見た。今も浮かれ騒いでいる人達だ。
「あの人達には良心がないのかしら? 心が痛まないのかしら? ……なんて身勝手な種族……」
「……」
僕には何も言い返せなかった。
「……ねえスバル君。あなたはどう思う? どうやって今日の事を乗り越えるの? あたしに教えて」
「わかんないよそんなの……」
「そう、『その日』が来るまで考えててね……」
それだけ言い残し、その少女は歩み去っていく。
そして――
「そこで『決断』するのはあなた――……』
それが残した手向け(言葉)だった。

――嵐が過ぎ去った後、訪れるは静寂だった。

「……」
僕は言い知れない何かをこう胸に抱き、腕時計型携帯端末に手を伸ばしていた。
ロイ、彼の言葉を聞きたいからだ。
「ロイ」
『なにスバル君?』
「僕は……同じ間違いを犯したくない……!」
俯いていた僕は顔を上げた。
「僕は、今日の事を忘れない! もう二度とこんな悲劇を犯させない……ッッ」
『……』
「スバル君でも、そんな顔をするんだ」
あたしはつい呟いてしまった。
「……」
「……」
見つめ合う2人。
それを見たロイとリスは。
『……いい雰囲気だね』
『……うん。でも……不憫な子よね』
リスはつくづく実感した。
『アユミ……あんた貧乏クジ引いたかもよ』
「うん……」
あたしは思いを新たにこう胸に手を当てる。
「でもね……そんなところが、スバル君のいいところだと思うの……」
『……』
リスは何も言えなかった。
それは大変失礼だからだ。第一にアユミちゃん事を思えば、スバルは捨てたほうがいいだろう。
データ的に集計して、結果を出せばそれが正解なのだ。
だが、そう上手くいかないのが人間性であり、良心だ。
アユミちゃんは言葉を紡ぐ。
「だからあたしがいて、支えるよ……」
それは母みたいな、お姉さんじみた心だった。
そう、それがあたしの立ち位置。


☆彡
【高速道路】
スバル達を乗せたスクールバスは、再び高速道路をひた走っていた。
スバルの脳裏によぎるは、あのアンドロメダ星で起こった人災事故だった。
「……」
僕は気分を変えるために、窓の外の景色を見た。

――高速道路の下には、浸水した町があって、当時の大津波の被害を物語っているようだった。
「昔の人達は、いったいどんな暮らしぶりを送っていたんだろう……?」
「ん? 何だって?」
「あ、いや……浸水した町がこの下にあってさ、何でかな~~って思って」
「あぁそんな事!」
それは簡単な事だった。
「原因は人間が犯したCO2……環境破壊が原因よ!」
あたしは指を立てて言う。
「二酸化炭素が増えれば、北極や南極大陸の氷が減り、海水温が上昇するでしょ!
海水温が増えれば水かさが上がり、大津波による被害は甚大!!
なぜそうなったのか……!?
それは人間が山に登り貴重な木材を伐採していったから。
今でも森林伐採する密猟者は後を絶たないわ!
……まぁ他にも色々な複合的な原因があって、その一番の原因を作っているのが……悲しいけれど、あたし達人間なのよ……!」
アユミちゃんの説明を、リスが引き継ぐ。
『でもね! 植林地している人達がいるのもまた事実!
海水面上昇によって上がった水かさを減らそうと努力している科学者達だっている!
一番の原因は密猟者達! それを取り締まるのが地元の人達の協力よ!』
「じゃあ飲み水が減ったのは?」
『産業が発展して、その時に使用される水の総量が上がったから」
とロイが簡潔に答えた。
「山や川の水が飲めなくなったのは?」
「『『……』』」
アユミ、ロイ、リスは痛いところをつかれた。こ、これは答え辛い。
とそこへ、先生が名乗りを上げた。
「何だスバル勤勉か? それは答え辛いな……! なら原因は何かじゃなく、何のためだと思う!?」
先生は話の流れを上手く誘導させた。
「何のため……」
「そうだ! 水を飲めなくさせたのは確かに俺達側の問題だ! 光化学スモッグや酸性雨を降らしているのも俺達だ!
だが、それはこの科学文明の礎であって。私達人間は、科学でその問題をクリアしてきた!」
「化学でその問題を……」
「そうだ! だから化学薬品工場、病院、学校と幅広い分野のエキスパート達が、日夜頑張って、その問題を解決しようとしている! 大丈夫だ! やれる! 俺達なら!!」
「……」
「『『……』』」
「それともまだ何か不満か?」
「いえ……」
僕はもう、後の事は大人の人達に任せて、窓の外の景色を見た。


☆彡
【赤道上に建てられたアースポート】
そのはるか彼方の上。
【宇宙エレベーター】
その先。
【静止軌道ステーション】
一般公開されている場所には、無重力で遊泳できる場所と、地球と同じように立って歩ける区画とがある。
その一般公開されている場所の中で、結婚式場があった。
問題は、そこで行われていた挙式ではなく、あの宇宙探査機が起こした問題であった。
「――以上が事件のあらましです」
「なんて憂鬱なの。しかも最悪のシナリオだわ」
花嫁は一面ガラス張りの前に立って、部下からの報告を受けていた。
花嫁は頭を抱えていた。なんて悩ましい問題を持ってくるのよ。
このガラス張りの眼下に見える、青い星の人達になんて説明しよう。
「如何いたしましょうか? 次期代表」
「……」
次期代表と呼ばれた花嫁は考えた。この報告にはいい点と悪い点の双方が介在していた。
どんな話にも棘があるのは当たり前なのだ。
問題は、どうその棘を摘み取っていくかだ。
「少し考えさせて。ここで対応を誤るわけにはいかないわ」
「ハッ」
と私に報告に来た役員の1人が頭を下げて、この部屋を後にした。

――1人になった私は愚痴を呟く。
「クソッ……」
私は自棄になり、一度ここで気を落ち着かせるため、葉巻に火をつけて吸う事にした。
「フゥ――……」
と口から煙を吐き、白い煙の輪が浮かんでいった。
「正直参ったわね。
ここであの宇宙探査機を破棄したり。AIナビを更正処分をするものなら地球の奴等からどんな反感を買うか……」
私は、そのもしもを考えた時怖くなり、身がブルリと震えたのだ。
メディアを通じた誹謗中傷ほど怖いものはない。
「せっかく掴みかけた椅子なんだ。簡単に手放してなるものかよ」
と私の口調がグレて、まるで男みたいだった。
いや、この重役に就く以上、性格が男みたいでないとやっていけないのだ。
「あ~~腹が立つ~~」
私は、吸いかけの葉巻を灰皿にグリグリと押し付けて無理やり消した。
「あ~~使えない奴等だあ。ホント腹が立つ~~。今のうちにメディアへの対応、広告塔等の上手い言い回しを考えないと……!」

――とその時、ピピピッ……ピピピッ……と腕時計型携帯端末が鳴った。
向こうから回線が割り込んできた。
「大変です! 次期代表!」
「何だい!? 宇宙探査機は帰ってきて、今整備してるんだろ? せいぜい大事にしてやんな!」
「そ、それが……!!」
とホログラム映像が移り変わり、何者かの手によって半壊した宇宙探査機と倒れ伏した作業員達が映った。
しかも、ホログラム映像がさらに移り変わり、いくつかの廊下には作業員達が倒れ伏していた。
そして、突然の奇襲を受け、作業員達がまた倒れた。その奇襲をした敵がわからない。いや、目に見えないのだ。
「こ、こいつは……」
私は思い出した。そうだ、あのアンドロメダ星でも見た、目に見えない敵だ。
「総員!! 装備を整えろ!! 何でもいい!!」
私は血相を変えて立ち上がった。
「いいか絶対に殺すな!!! 必ず生け捕りにしろ!!!」
私は他の部下に伝えるため、この部屋を後にしようとしていた。
「そうだ!!! 必ず生け捕りだ!!!」
それは私の口を衝いて出た。
(なんて事だい! 向こうから舞い込んできやがった、幸運が……! よし、いいぞついてる!)
私が自動ドアの前に立ったその時、自動ドアが開き。ドアの前にはTVキャスター達が押し寄せていた。
「坂口代表!! 今のお気持ちをお聞かせください!!」
「今、あの宇宙探査機はどうなってますか!?」
「国民的大スターですよ!!」
「WSL(ワールドシステムロード社)TVの独占取材を!!」
「ちょっちょっちょっ待って待って!! 坂口代表だと!! 私はまだ次期代表」
私は大いに慌てた。何でここにTVキャスタ達が集まってるのだ。
「現代表はあなたを推すと言ってましたよ!!!」
(えっ)
「今回の計画はあなたの立案なんですってね!! その動機はどこからきたんですか!? 是非ともお聞かせください!!」
(ちょっと)
「宇宙探査機AIには固有の名称があるのですか!? あるのでしたら何ていうのですか!?」
(これって私の時代がきてる)
そう思った私は、髪を払って、腕を組み構えた。その時にわざと胸を寄せてあげる。この時、私は調子に乗っていたのだ。
「何でも聞きたまえ。可能な限りどんな願いでも答えてやろう」

「「「「「おおおおお」」」」」

とその時、役員達がキャスター達を押し退けてきた。
「済みません! ちょっと通してくださーい!」
これにはキャスター達もいい顔をしない。
「何だ!?」
「動画は見ましたか? 社長!」
「もちろんだ! それよりも聞け、私は次期代表になれるみたいだぞ」
――とその時だった。
地球に向けて、青い光の矢が穿たれたのは。
場が一瞬、あまりの光量の為、フラッシュアウトした。
何だ、何が起きた。
私はすぐさま振り返り、全面窓ガラス張りのところまで走った。
そして、絶句する。
加えて、場にいた者達は皆、私の部屋に押し寄せてきて、同様に絶句した。
ドォオオオオオオオオオオンンンと謎の青い光の矢が地球を穿ち、穿たれた地点が赤く燃え盛っていたのだ。その衝撃波が周りに伝播する。
そうだ、地球は何者かの奇襲を受けたのだ。


☆彡
【――その数分前】
高速道路をひた走るスクールバス。
「……」
スバル(僕)は窓から見える外の景色を眺めていた。
とその時、ちょいちょいとアユミちゃんが僕の肩に指を突いてきたのだ。
振り返る僕。
「何アユミちゃん?」
「ねっねっスバルくん!」
とアユミちゃんは、僕に膝枕はどうかと自分の膝をとんとんと叩いていた。
あっそういえば、朝来るときアユミちゃんに膝枕をしたんだ。つまり、そのお返しか。でも、さすがにそれは……恥ずかしくできない。
「……」
僕は恥ずかしくなり、アユミちゃんから目を話すように、もう一度窓の外を見た。
「ねえ~しよ! ねえ~しよ!」
「……」
何度も誘うアユミちゃん。
振り返らない僕。
そして、「クスクス」と隣の席にいる女子達が笑う。
「ねえ~ムゥ……」
ぷく~~とどうやら僕は彼女を不機嫌にしてしまい、水を含んだトラフグみたいに、頬を膨らまかせた。
そして次には、力技に出た。
アユミちゃんは僕を掴みかかり、無理矢理に自分の膝の上に乗せたのだ。
その際、アユミちゃんの膝枕は柔らかった。
「ちょっとー!」
「フフッいいじゃない。ねー!」
『ねー!』
怒る僕に対し、アユミちゃんはそう言い、阿吽の呼吸でリスが笑みを浮かべる。
「う~ん……」
と唸る僕。
僕は隣の席を見た。お隣の席の女子達はその様を見て、ニヤニヤと笑いながら「クスクス」と笑っていた。
僕は恥ずかしくなり、首の向きを変えたら……。
「あ……」
「あ……」
アユミちゃんのおニューのワンピースの中身がばっちり見れた。
これには僕もアユミちゃんも驚き。
僕はすぐさま起き上がり、アユミちゃんはバッとワンピースの中身を隠した。
で。
「……」
「……今……見た?」
2人とも頬が紅潮していた。でもあたしは大事なことなので、それを聞いてみた。
「……」
頬が紅潮した僕はうんと頷いた。
カァアアアアアと耳まで赤くなったあたしは、スバル君を突き放した。
「もう馬鹿ッッ!!」
と突き飛ばされた僕は、窓側に叩きつけられた。
「そんな理不尽……」
「フン」
とプリプリ怒るアユミちゃん。
「いてて」
と突き飛ばされた箇所を労わる僕。

――その時だった。僕の危機感知能力が働いたのは。
ピクンと反応を示した。
すぐに僕は窓の外。空のう~んと上の方を見上げた。


☆彡
――地球を見下ろせる宇宙空間。
アンドロメダ星から1機の宇宙船がやってきていた。
その宇宙船の上部(ハッチ)が開き、そこからエネルギー生命体の美女が競り上がってきた。

【アンドロメダ王女(年齢不明)】

「地球人達よ」
あたしは攻撃態勢に入る為、ふわりと浮いた。
あたしは、その手を伸ばしてエナジーアを収束させる。パーからグーに変えてエナジーアを集約させつつ蓄力させる。
それは1本の青白い光の矢となる。あたしの身の丈の10倍以上の大きさだ。
「思い知れ!!」
あたしは力強くそれを投じた。

「『青白い光熱の矢』ブルーフレイア(キュアノエイデスプロクスア)!!!」

青白い光熱の矢は、地球に吸い込まれるように投じられ、着弾後。
ドォオオオオオオオオオオンンンと大爆発を起こした。
着弾点から赤い炎が燃え盛り、周囲に衝撃波が伝播していった――
ォォォォォ……
地球は様変わりしていた。
あの青かった地球が今や若干赤みを帯びており。
その着弾点には黒い穴ができていた。
そして、今地球は世界各国ですごい荒れ模様となっている事だろう。

その地球を見据えるはアンドロメダ王女。
その手を高く上げて、全兵に指示を出した。
全兵はその指令に従うようにUFOから湧き出した。
その多くがエナジーア生命体。そう、スバル達が見たあの姿が見えない相手だ。
「行けお前達!! ライフラインを絶て!! 地球の奴等に我等が母性が受けた痛み、怒りを示せ!!」
上げていた手を振り下ろすアンドロメダ王女。
「「「「「オオオオオ」」」」」
全兵はそれに従うように駆けていった。ヒュンヒュンと光の矢となって。
だが、その中の1人に乗り気でない、可愛らしいエナジーア生命体がいた。

【オーパーツL(年齢不明)】
その身が小さなエナジーア生命体で、半透明でその身が揺らいでいた。
まるで小動物みたいな体形で、可愛らしい容姿に、犬や狐みたいな面持ち、孔雀みたいな羽を有していて、尾を9本有していた。
その子はまるで幼く、心に迷いがあった。
「L、お前はレグルス隊長と行け」
「……」
僕はその言葉に従った。


☆彡
――その着弾点。
それは一言でいえば、見る影もない大惨事だった。
中心点には巨大な穴が開き、その穴が赤々と溶解していた。
その穴の深さは計り知れず、奈落の底まで続いているかのようだ。
周囲では海の水が流れ込み、流れ込むとジュウ……と蒸発していた。
周囲の気候は荒れに荒れていた。
吹き荒ぶ暴風雨の嵐。
降り注ぐ落雷、
乱れ狂う竜巻の嵐。
吹きつける大粒の雨と雹の嵐。
海は大荒れ、幾つもの大渦が乱れ狂っていた。


☆彡
――その周辺地域では。
見た事もない気象が襲っていた。
巨大な竜巻が積乱雲と砂煙を飲み込み大いに荒れる。
その巨大な竜巻に触れる前に、幾つものビル群がバラバラと崩壊していった。
その巨大な竜巻から放たれるは、幾つもの雷撃の嵐と大粒の雨を含んだ砂粒手と雹の嵐。加えて瓦礫やガラスの山が飛んでくるのだ。
こんなの見た事も聞いた事もない。
そして、そこには生きている人の姿はなかった。


☆彡
【――世界各国では、同様の現象が観測されていた『オーロラ大厄災』と『真珠母雲』である】
【Aurora(オーロラ)。
これは本来であれば、北極や南極大陸など、高緯度で観測されるもので。
中心地では放射線状となり。その周辺地域ではカーテン状となって見惚れるほど美しい。
一般的には緑色。珍しいものでは紫色だ。
また、日本の北海道でも観測されている】
【Mother Of Pearl Clouds(マザー オブ パール クラウド)(真珠母雲)。
これは、冬の高緯度地域や極域の上空で観測されるもので。
発光条件としては日の入り後、暗いのにも関わらず、雲が虹色に揺らいで見える事で有名なのだ。
こちらが観測されたという事は、オゾン層の破壊にも起因している。
またその最たる原因は、二酸化炭素やPM2.5といった大気汚染化学物質が原因なのだ】

――この日、この地球のどこかで、どこかの家族連れが山にキャンプに着ていた。
テントが抜け出した少年と少女が見たものは、幾つもの降り注ぐ流星だった。
「あれ」
「……」
少年はその流星を指さし。少女は口元を覆った。まるで信じられないものを見るかのように。

【shooting star(シューティング スター)(流星)。
宇宙から降ってくるものには、大小様々あるが……。その大元は、塵や微粒子、隕石や宇宙ゴミ(デブリ)といったものだ。
そのうち隕石は、年間500個ほど落ちてくる。
大抵は、大気圏の摩擦熱・高温・高熱に熱せられ、地表に届く前に、燃え尽きているのだが――】

【――だがこの時、地球を護る磁気バリアが壊れていたのだ。
仮にもしも、オゾン層、大気圏も壊れていた場合、被害はこの比ではなかっただろう。
縦横無尽、四方八方から隕石の雨が降り注ぎ、街の被害は尋常ではなかった。
遠くの山から火の手が上がる。
少年少女達はそれを遠くの山から見ていたのだった】






――幾つもの高層ビル群が立ち並ぶ、近代文明都市。
そこに1人の30代ぐらいの女性がショッピングに着ていた。

【リンシェン(30歳)国際警察】

「決済よろしくある!」
腕時計型携帯端末からチャリンと音が鳴る。
「決済完了したよリンシェン!」
「さあ、たまの非番ある! どんどんいくあるよ~!」
『お~~!!』
その時だった。
都市直下型の大地震が襲ったのは。
――ドドドドドドドドドドッ
と立っていられないほどの大揺れだった。あたしは立っていられず尻もちをついた。
さらに。
『ガビビビファルルルコ』
ブツ……と腕時計型携帯端末が突然壊れ出したのだ。
「何事ある!!?」
あたしは自分のAIナビに呼びかけようとするも、画面はブラックアウトし反応が返ってこなかった。
そればかりか周りの人達も。
「おいどうした!!」
「返事をして」
「おいおい、これじゃあ無銭飲食になっちまうぞ!!」
「ショッピングの会計ができない!!」
「初デートが!!」
「オイオイ全然笑えねえぞ!!」
「腕時計型携帯端末が突然壊れた!!」
「この揺れはいったい何なんだぁあああ!!!」
それは周りの人達も同様だった。
そればかりか。
ショッピングモールの全ての電化製品が壊れ、照明すら消えたのだ。酸素供給清浄化システムもたちどころに止まっていく。
これは異常事態だ。
すぐにあたしは身を屈め、歩伏全身で進む事にした。
(突然の大揺れ、腕時計型携帯端末の一斉の故障、停電、電化製品の故障)
と目の前に、照明がガシャンと落ちてきた。
「きゃっある!!」
「うわっ!」
「きゃ!」
これにはあたしも思わず立ち上がり、壁伝いに進む事にしたあるよ。
(考えられるのはどこかの国が戦争を仕掛けてきた)
進む。
(でも何で攻撃したのか……)
進み続ける。
その時、目の前の横から空を飛ぶ車が店内に侵入してきた。
やっぱりあるか。
あたしは即座に手すりを掴み、下の階に飛んだ。
そこまであたしがいたところに侵入してきて、最悪の事態は避けられた。
下の階に着地を決めて、さらに進む。
「何だ!? 車が侵入してきたぞ」
「うわ――っ!! 誰かがひき殺された――ッッ!!」
と車からエンジンオイルが漏れていて。近くで火がちょろちょろとしていた。
(考えられる原因は、ただ1つある!!)
「どこかの国が電磁波爆弾を持ち出してきたあるか!?」
――とその時。
ドォオオオオオンとあたしの背後で爆発事故が起こった。
(危なかったある……あのまま進んでなかったら巻き込まれていたあるよ……!)
あたしはキッと向き直り、出入り口に向かって、進み続ける。

――とショッピングモールの出入り口に人だかりが集まっていた。
先程までの地震は鳴りを収め、立って歩けるまでに回復していた。
「そこをどくある!!」
「!?」
やっぱり自動ドアも壊れていた。
あたしは自動ドアに手をかける。
「うぉおおおおお!!!」
と気勢いっぱい、壊れた自動ドアを力づくでこじ開ける。
このままここにいたんじゃ、酸素供給正常化システムが止まった後、酸素が薄れ、みんな一酸化炭素中毒で死亡してしまう。そんな事させない。
「うぉおおおおお!!!」
と後ろから歓声が上がる。
「すげーな!! 姉ちゃん!!」
周りがバカ騒ぎをするある。
だが、あたしは余韻に浸れなかった。
すぐにあたしは、外に出てそれを確かめた。
「……やっぱり……」
それがあたしの口から零れだした言葉だった。
それは地獄絵図だったある。
都市部は荒れ、幾つものビル群は半壊し、地表には、ガラスの山が降り注いだのか通行人は大怪我してたある。
その原因となったのは空飛ぶ車で、数えきれないほどの車が落下劇でも演じたのか、ビル群を半壊させたのだ。
とビル街の大型テレビが落ち、ガシャンと音を立てて壊れた。
これはもう、間違いないある。
「どこかの国が戦争を無断で仕掛けてきた……」
あたしはそう呟いたのを切っ掛けに。
「じゃあ、どこの国が!」
「あたし達の街を! 暮らしを!」
「許せない!!」
「戦おう!!!」
「……ッッ」
(ダメだ!! 一般人を巻き込めないある)
あたしはすぐに後ろに振り返り、こう言った。
「ダメあるよみんな!!」
「!!」
私は懐から免許証を取り出した。それを見せる。
「あたしは国際警察の者ある!! 市民の安全を第一優先とします!!」
あたしは国際警察の身分を明かした。
「国際警察!?」
「すげーっ!!」
「今から皆さんを市役所に誘導します、そこから皆さんが今後どうするか話し合うある!!」
「お、お姉さんは!?」
「決まってるある!!」
あたしは免許証を懐にしまい。みんなに向き直る。
とその時、あたしの上空を大きな影が過ぎ去っていった。
大きな影の正体は、滑空する大型の飛行機で、ビル街の上部を半壊させながら、そのまま落ちていった。ドォオオオオオンとどこかで爆発事故が起きた。
「「「「「!!」」」」」
これには一同ビックリだ。
「あたしには夢があったあるよ! それはヒーローになる事!
そして、そこで皆さんと同じ、、困っている人を助けていくあるよ!! それが私が国際警察を目指した使命ある!!」
あたしはガッツポーズをみんなの前で取り、気勢を改めた。
そうある、それがあたしが目指した夢あるからね。
その光景を、まだ幼い少年少女達が見たのであった。
夢を紡ぐ者として。


☆彡
――どこかの大学病院では。
数名の医療スタッフがチームを組み、難しい患者のオペを行っていた。
また大学病院である為、腕の立つ数名の大学院生もそれに携わり。
バックアップとして講師と、海外から呼んだ女医もそこに参加していた。
さらに器械だしとして、アンドロイドAIの姿があった。

【クリスティ(27歳)女医】

今あたしは数名のスタッフのチームの中に入り、助手に当たっていた。
担当医師(講師)が口を零す。
「ダメだ術野が狭い」
「クーパー」
あたしは担当医師の仕事がし易いよう、クーパーを用いて術野を広げてあげる。
「ほう、手際がいいですなクリスティ先生。無駄に乳がデカいだけじゃないか」
とニヤニヤ笑う担当医師(クズ講師)。
周りの研修医(生徒)達もクスクスと笑う。
「おっぱいは関係ありませんよ。それより大事なのはいったい何人切ってきたかです!」
「わかってるじゃないか」
そのまま手術は順調に進んでいき。小さな心臓が脈を打っていた。

「やっぱり小さい……」
と研修医は口を零した。
「この患者さんは……」
あたしはこの患者さんの事を詳しくは知らない。
「はい。交通事故にあったまだ小さな女の子で。以前から心臓に『重い病』を患っていました」
「なるほど可哀そうに。その病名は?」
「おや、クリスティ先生は『病名がわからないと手術ができない』のですか?」
「……ッッ。いいえ」
「ンフフフ、いいでしょう、お答えしましょう。この子の病は『心房粗動』です」
「『心房粗動』……」
あたしはその病名と手術手順なら知っている。
あたしはそのマニュアルに従って、手術を進めていたら。
突然、小さな心臓に裂傷が入り、ビシュッと血が噴き出した。
「「「「「ッッ」」」」」
(ち、違う!! この子のは『心房粗動』なんかじゃない!! これは……ッッ!!)
手術室に警報音(アラート)が鳴り響く。
加えて心拍数が乱れ、心電図に位相のズレが生じた。
手術室は大変まずい事態に陥ってしまった。
「まずい止血しないと!」
「でも! 出血箇所がわかりませんよ!」
「……ッッ。『パッチングフィルム』を持ってきて!」
「ぱ……『パッチングフィルム』……?」
あたしは事前にもしもの事を考えて、私物を持ち込んでいた。
当然、世間にはまだ知られていない新商品。
大学病院の担当医師も、その名を知らなかった。
「海外で新しく開発されたフィルムで、これは破れた血管に使われるの」
アンドロイドAIさんがあたしの前に『パッチングフィルム』を持ってきてくれる。
あたしはありがとうと会釈をし、向こうも会釈で返してくれた。
あたしはそれをクーパーで掴み取り、1回1回、心臓の上、そして血管の上に置いていく。
「人の臓器や血管ってホント不思議でね。それ自体に熱が放ってるの。特に破れた箇所からは強い血圧反応が出てるわ。これはそうした反応を探り当てて……」
「「「あ……」」」
「ビンゴ!
研修医3人が驚いた顔をしていた。
あたしの勘が当り、出血箇所が判明した。
そして、それはじわぁ……と『パッチングフィルム』が緑色に反応する様子だった。そうだ、そこが出血痕だ。
「お前達、すぐに止血しろ!」
「「「は、はい」」」
さすが大学病院の研修医達。自分達がやるべき仕事をホントわかってるわ。
あたしと担当医師は対面で何も言わず、対話した。
なるほど、最低限の事は守ってる訳ね。
それは、この子達を一人前の医師として育て上げること。
だけどね。これとこれとは話は別。
「診断名の誤りをここで正しておこうかしら」
「何……?」
「この子の診断名は、『心房粗動』ではなく『ポンペ病』よ!」
「ポンペ病……!」
「「「!?」」」
誤診を告げるクリスティ先生。
担当医師はその診断名を聞き驚き。
3人の研修医達は、その名を知らなかった。
「あなた達3人もよく聞きなさい。ポンペ病は、ライソゾーム病に分類されるもので。
グリコーゲン(糖原)を分解できないものが、全身の様々な臓器・器官に溜まる事よ。
そうしたグリコーゲンが溜まり続けることで、徐々に障害が発生してくるの……。
……心機能障害、筋力の低下、成長の遅れ、女の子として発達の遅れ、栄養不足、
呼吸困難、呼吸器官感染症、誤嚥性肺炎、頭痛といったものまでね。
……そうなるまでなぜ気づけなかったのかしら?」
「……ッッ」

――その時。
ガチャとこの部屋を見下ろせる位置から、大学病院の院長が話しかけてきた。伝えてくるのはマイクと拡声器か。
『残念だよミスターライセン先生』
「ミスターイリヤマ大学病院院長これは……私も気づけなかっただけで」
「言い訳は聞きたくないよ。君はチャンスを逃していたんだ。その女の子はお母さんと一緒に、何度も君のところを訪れていたのだろう?
だが、君はかたくなに君の判断とAIを信じ過ぎた。
私は何度も言っていたよね?
私達はチームだ。AIだって間違う。その都度、会議(カンファレンス)を開き、その子の事をもっと前面に推し出すんだった。誠に遺憾だよ」
「……ッッ……ッッ」
『ミスクリスティ先生』
「はい」
「担当医を変わってもらえるかな?」
「大学病院院長!! 私はッッ!!」
『今の君の精神状態で、まともにその子の手術をできるだなんて思えないよ」
「……ッッ」
「……お願いできるかな?」
「はい!」

その時だった、首都直下型地震が襲ってきたのは。
――ドドドドドドドドドドッ
と立っていられない大揺れだった。あたし達は立っていられず尻もちをついた。
「キャッ!」
「うわっ!」
さらに、当大学病院の全ての電子機器と照明が消え。室内は真っ暗闇になった。
さらに、アンドロイドAIが奇声を上げて、壊れ出したのだ。
『ピ――ガガガガガ」
そして仰向けに倒れ、器械出しだった事もあり、手術道具が辺りに散乱した。
とても危ない状態に陥った。
「怖い――何々!?」
研修医の女の子が怖がり出した。
それはそうだ、あたしだって叫びたい。
でも、あたしの方がずっと大人だから、グッと堪えた。
「お前達、絶対に下手に動くなよ!!! 身を屈めて身の安全を第一にしろ」
さらに、当手術室を見下ろせる位置にある高台の部屋の窓ガラスが割れ、辺りにガラス片が散乱した。
「うわっ!」
「きゃ!」
「絶対にこれ、普通の地震じゃないぞ!!!」
3人の研修医達が騒ぎ出した。

――さらに、ゴロゴロ、ガシャーンとどこかで雷が落ち、その衝撃で何かが壊れたような物音が聞こえた。

「……ッッ」
あたしはその音にビックリした。何、何が起こってるの。
「何があったんだ!?」
前・担当医師がそう叫んだ。
そんなの決まってるでしょ「地震!!!」よ。
「停電!!」
「アンドロイドAIが突然壊れた!」
「……ダメです! 手術道具が使えません! すべて逝ってます……!」
あたしの後に続いて、3名の研修医達が口を揃えて言うのだった。
そして、その3人目は、試しに電熱メスのスイッチを入れてみるが……何も反応がなかった。
「……何なんだいったいッッ!? この地震に加え! 全ての電気系統ばかりか! 電子機器やアンドロイドAIまで逝くだなんて! 絶対に普通じゃないぞコレ――!!」
その日、当手術室は悪戦苦闘の一途を辿った。それはまさしく最悪だった。


☆彡
――話は少し戻り、スバル達を乗せたスクールバスでは。
頬が紅潮した僕はうんと頷いた。
カァアアアアアと耳まで赤くなったあたしは、スバル君を突き放した。
「もう馬鹿ッッ!!」
と突き飛ばされた僕は、窓側に叩きつけられた。
「そんな理不尽……」
「フン」
とプリプリ怒るアユミちゃん。
「いてて」
と突き飛ばされた箇所を労わる僕。

――その時だった。僕の危機感知能力が働いたのは。
ピクンと反応を示した。
すぐに僕は窓の外。空のう~んと上の方を見上げた。
(何だ……)
『どうしたのスバル君?』
僕の様子にロイが話しかけてきた。
窓の外の景色の様子は変わらない。けれど、僕の何かがザワついていた。
来る、何かが、来る。僕はそう直感した。
『え~~皆様、もう間もなく真空管トンネルに入ります。ご安全の為にどうかシートベルトを締めてくださいませ』
とバスガイド型女性アンドロイドがそう案内した。
スクールバスはそのまま真空管トンネルに入っていった。
――そこは空気の抵抗がなく、スクールバスの速度がグングンと増していくのだ。
そのスクールバスを運転するのは、男性型アンドロイドだ。
並びに、その車内でスピーチを行うのは、バスガイド型女性アンドロイドの役割だったりする。
その話を聞き、わいわい、ガヤガヤ騒ぎ出すバス車内の様相。
『現地到着まで、今しばらくお待ちくださいませ』
と挨拶を締めくくりバスガイド型女性アンドロイドは、自分の席に戻っていく。
周りの生徒達も、一応念の為にシートベルト閉めていく中、スバルとアユミの2人はまだ閉めていなかった。
「どうしたのスバル君?」
アユミちゃんはシートベルトに手をかけた状態で、そう尋ねてきた。
僕はそのまま、窓から見える外の景色を見ていて。

――そして、う~~んと遠くの空の一点が光り、雲が弾け飛んだ様を見た。
「まずい!! 伏せてアユミちゃん!!」
「え」
僕は思わず、アユミちゃんの上に覆いかぶさって、手すりに掴んだ。
その際、アユミちゃんは「キャッ」と悲鳴を上げた。
そんなスバル君のH。
――そして、その時が訪れたのだ。
ドドドドドドドドドドッとその時、スクールバスが大きく弾んだ。
その際、バスガイド型女性アンドロイドがその弾みで大きくバウンドしたのだ。そのままドンッドンッと弾んでいき、頭から天井にめり込んだのだ。
「うわっ」「きゃ」と騒ぐ男子生徒と女子生徒。
シートベルトすらしていないスバルとアユミの身も危なかった。
必死で耐えるスバル。
(この手すりは離さない! 離さないぞ!!)
大きくバウンドしそうになるスバルとアユミの体。
そして、先に根負けしたのはアユミちゃんの方だった。
「あ……」
とその身が浮き、浮遊感に包まれる。
飛んでいこうとする先は――スクールバスのフロントガラスだ。
「そんな」
僕の懐から抜けてしまったアユミちゃんが。
「あ……あぁ……」
飛んでいこうとするあたしは、諦めたように目を瞑った。
「ッッ……そんなのヤダ!!」
バッとその手を伸ばす僕。
僕はアユミちゃんの腰回りに手を回し。
飛んでいこうとするアユミちゃんのお尻に顔を埋めた際、その姿勢を下向きに変えた。
「あっ……」
と漏れる呼気。そんな変な所に。
下向きに姿勢が変わったアユミちゃんの胴体は、前の席の上部に、その柔らかな豊胸がググッ……プルンと当り掠め、その衝撃をいくらか和らげた。
そのまま2人は、席と席の相中に入っていった。大変変わった姿勢で。

――そのままスクールバスは真空管トンネルを走っていき、急カープを曲がり切れず正面突破した際、壁を破壊し、宙を飛んだ。
車内にひと時の浮遊感が訪れる。
そして、ドドーンと旧高速道路に落ちていくのだった。


TO BE CONTIUND……

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