1‐3
「嬢ちゃん、坊ちゃん、入学本当におめでとう。
これ、毎年特待の子に渡すように手作りしてんだ。特待の子は国の宝だからな。
そういえば、ふたりは他の特待の奴らに会ったかい?」
お守りを渡しながら訪ねる店主の言葉にふたりが顔を合わせ首を傾げていると、店主はニヤニヤと笑った。
「あいつら変わってっけど、すげぇ面白いし、いい奴らだぜ。
ぜひあいつ等とまた遊びに来てくれよな」
店を離れ学院に向かっていると、人とすれ違うたびに声を掛けられ、頭を下げられていることにふたりは目を丸くしていると、トウヤに勢いづいてぶつかる小さな影があった。
「いってぇ!!何突っ立ってんだよ!!」
ふたりが振り返ると学院のボトムズ、ブレザーの代わりに私服のパーカーを着込み、頭に白い狗面をかけた10歳ほどの少年が、立ち止まっていたトウヤにぶつかり、その衝撃で転んでしまったらしく悪態をついていた。
「僕、大丈夫…?」
「うっさ…ん?おねぇちゃん、なんかいいにおいがするね」
少年が空中をクンクンと嗅ぐ仕草をしているところに、トウヤはそっと手を差し伸べる。
「あ、ごめんな」
少年は、差し伸べられた手を払い立ち上がった。
「うっせぇ!こんなんで怪我しねぇし!」
「態度も口も悪いな!?まぁ無事ならいいけどさ」
今一度少年の服装を見てみると、学生服の面影はあまりないが、パーカーのネック部に特待生バッチをつけている。