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第1話 始まりは突然に…

「ほ、本当にいいのかな…」

真新しいワンピースとボレロ、そして学院指定のマントを着込み、鏡の前に立つ少女が1人。

その手には金色に輝くスペードのエンブレムと、トキハと少女の名が彫られたバッチが握られていた。

今日は全国に3校ある王立魔法学院のうちの1校である、王立魔法学院マトリア校の入学式なのだが、先日制服と共に学院の金バッチがトキハの元に届いたのだ。

これは毎年各学年2名ずつ、入学試験の結果をもとに選ばれた特待生に贈られる伝統のバッチといわれている。

(特待生に選ばれれば、無償で魔法学院に通えるようになったり、商業街であるマトリアでの物品購入が割引されるようになるから、お金のない私たちには助かるけど…)

ユキハが気が引ける理由はひとつあった。

国の代表である魔法学院生となるとみんなある程度、領域展開を使いこなし、魔法を使いこなすものだ。

それに対して、トキハは幼い頃から『師匠に』武術は使っていたものの、魔法はからきしで...

領域展開ができないどころか、自分にあう属性すらわからないからだ。

(こんな落ちこぼれが、魔法学院の生徒……しかも特待生でいいのだろうか…)

そんなことを考えながら身繕いをしていると、ドンドンと古びた扉が叩かれる音が響いた。

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