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未来からの手紙

「う~ん、良い朝」

 小鳥のさえずりと窓から入ってくる朝日で自然と目が覚めた。

 う~んと背伸びをしてベッドから起き上がり窓を開けた。

「気持ちの良い風、誕生日の朝に相応しいわ」

 今日、私メリアナ・ローカスは8歳になる。

「夜は誕生日パーティーを開いてくれる、と言うし……特別な日になりそうね♪」

 朝からワクワクが止まらなかった。

 8歳は貴族令嬢にとっては特別な物だ。

 社交界デビューや婚約者の内定等将来を決めるビッグイベントが目白押しなのだ。

「私も晴れて貴族令嬢の仲間入り、公爵家の一員として恥をかかないように頑張らないとっ!」

 よしっ、と気合いを入れて部屋を見るとふと鏡台に見慣れない物があった。

「あら? 手紙なんてあったかしら。しかも、何処と無く古い感じが……」

 私は折りたたまれた手紙を開いた。

『拝啓、メリアナ・ローカス様、8歳の誕生日おめでとうございます。いきなりで信じられないと思いますが私は10年後の貴女です』

(10年後っ!?)

『何故、この手紙を書いているのか、それは貴女にこれから起こるであろうトラブルを回避してほしいからです。私は回避出来ず現在は人里離れた場所で暮らしております』

(えぇっ!? トラブルっ!?)

 私はトラブルと言う言葉に動揺が隠せなかった。

『貴女は今日の誕生日パーティーで王太子と出会い婚約者となります。これが思えば私の人生が狂い始めたきっかけでした。婚約者になった次の日から王妃教育を受ける為にお城へ通う日々が始まるのですがそれは8歳の私にとっては辛く厳しい物でした』

 確かに今日は王族の方が来るし王太子であるリチャード様もやって来る、て言うか私リチャード様の事が好きだし。

『これでリチャード様とも仲良く出来れば良かったんですがあの方は最悪です。私は10年間見下され続け労いの言葉もかけられなかったのです』

 ……私の淡い恋心が今粉々に壊れました。

『ある日のデート中には池に落とされ溺れる私を指を指して笑っていたのです。おかげで私は水恐怖症になってプールにも入れなくなりました』

 うん、最悪だ、あの王太子。

『それでも頑張って来れたのは母親が優しい言葉かけてくれていたからでしょう。ですが、10歳の時に母は無くなります。病死となっていますが実際は違います。毒を盛られて死んだのです。毒を盛ったのは父です。父は私達以外に家族を持っていたのです』

(えっ!? お母様がっ!?)

 私の心はグサッとなった。

 お母様は確かに病弱でベッドからなかなか起きられない。

 お父様は忙しい方でなかなか家に帰って来る事はなかったけどまさかの浮気していたなんて……。

『お母様の死後、父のもう1つの家族、義母、義妹がやって来て我が物顔で我が家で暮らし私は肩身の狭い日々を過ごす事になります。そして貴族学院に入学するんですが事もあろうに王太子は義妹に心変わりをしてしまい卒業記念パーティーの時に婚約破棄を宣告され、更に義妹を苛めたとか冤罪を押し付けられ私は全てを失ってしまいました』

 壮絶な転落劇……、て言うかこれから私の身にこんな事が起こるの?

 私は目の前が真っ暗になった。

 明るい誕生日になると思ったら波乱万丈、転落への第一歩となる日だったのだ。

『何もかも失った私に残されていたのは破滅に追い込んだ彼等への復讐心だけでした。私には魔力があったのでそれを使いたった今復讐を果たしました』

 え? 復讐って何をやったの、私?

 血生臭い事はやって無いよね?

『今、魔力は残っておらず最後の力を振り絞ってこの手紙を過去に送ります。私の様な悲惨な人生を送らないように、この手紙が貴女に幸せな人生に導く様に祈っています……』

 そこで手紙は終わっている。

 ふと鏡を見ると顔面蒼白な私の顔が写っていた。



 

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