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気ままな何でも屋①

この世界は、幾つかの国に分かれている。

炎の国、水の国など、
各々の国で様々な特徴を持つ。

その中の一国『風の国』
穏やかな気候に恵まれ、風力を生活の一部に取り込んでいる。

そんな風の国には、何でも屋が存在し、二人の従業員が汗水流し、働いて……

「ひーまー!!」

……いないようだ。


「ひーまー、暇よ!!
ここ数日、何で依頼が来ないのよ!!」

声を荒げたまま、足をバタつかせ、
更に少女は頬を膨らませている。
どうやら、何でも屋は今
閑古鳥が鳴いているようだ。

そんな少女を見ながら、
少年は溜め息を吐き、少女に話しかける。

「知るかよ。
元々、平和な国なんだし、何も無い方が良いだろう」

少年はそう言うが、
少女は納得していないようだ。

「平和なのは良いんだけどさ。
もっとこう、探偵として、ワクワクするような出来事が欲しいのよ、私は!」

「ワクワクするような出来事って……。
ヒナ。お前、今まで受けて来た依頼内容、全部思い出してみろ」

そう言うと、先程まで騒いでいた少女、
ヒナはピタッと止まり、
ギギギ……っと、首を動かす。

まるで、錆び付いた機械のよう。

「えっと……、その…………、
ヨク……、分カンナイナァ…………」

何故か、片言で話すヒナ。

「最近のだけでも、店の手伝い、誰かへの届け物。一番新しいのだと、迷子の親捜しと子供のお世話だろう」

指を折り曲げながら数える少年に、
ヒナは言葉を詰まらせる。

「で?
これらの依頼で、ワクワクしましたかね?ヒナさん」

煽る少年に、ヒナは顔を真っ赤にさせ、近くにあったクッションを掴む。

「サクヤのバカー!!!!」

「ぶっ!?」

ヒナが投げたクッションは、
そのまま少年、サクヤの顔にクリーンヒット。


「お前……。何も投げてるんじゃねぇよ!」

「うるさい!バカ!!
そんなの、煽るサクヤが悪いんでしょ!?」

「はぁ、俺のせいかよ!?」

「そう!絶対そう!!」

二人の言い争う声は、段々と大きくなる。
その為、熱くなっている二人は、
来訪者が来た事を気付いていなかった。

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