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9時

屋上の方から、中庭に降りてきた10体のオーブイーター。傀儡師姿の人形の様なオーブイーターで、ぬいぐるみを指から出た糸で傀儡のように操っている。

ディアン「そらっっ!!」

俺は近くに居たぬいぐるみを攻撃した。

しかし────、

ディアン「あれ?直ぐに起き上がった!ダメージがないのか?」

フレイヤ「恐らく、上の傀儡師が本体!操っている下のぬいぐるみは実物で、幾らこっちを攻撃してもダメージにならないんだわ!」

ディアン「分かった!上の傀儡師を攻撃すればいいんだな!」

俺はフレイヤのアドバイスどおり、傀儡師の方を攻撃してみた。すると、フレイヤの言う通りダメージが入った。オーブイーターは遠くに飛ばされ消滅し、ぬいぐるみだけがその場に残った。

ディアン「よし!残り9体!」

フレイヤ「行くわよ!ハッ!」

フレイヤは杖から水の球体のような物を出現させた。水の球体は勢いよく、オーブイーターにぶつかった。

ディアン「すげぇ!それが魔法なのか!」

フレイヤ「まぁね。ディアン!ここは一気に決めるわよ!それっ!」

フレイヤはそう言って、杖から竜巻のような物を出現させた。残りのオーブイーターは身動きが取れないようで、竜巻に飲まれてグルグルと回転している。

フレイヤ「今よ!」

ディアン「まかせろ!」

俺は竜巻に向かって飛びこび、風に乗りながらとオーブイーターを一体一体攻撃した。オーブイーターの耐久力はほとんどないようで、全部消滅した。

竜巻が収まり、俺は地面に着地した。俺が着地したと同時に、空中からぬいぐるみがバラバラと落下してきた。

ディアン「ふぅ、なんとか全部倒せたな!」

フレイヤ「ま、私の魔法のおかげよねぇ~」

ディアン「うん!本当にありがとう!フレイヤ!」

俺は笑顔でフレイヤにお礼した。

フレイヤ「ま、まぁ、アンタも結構頑張ったんじゃないの!」

すると、1度引いていたギャラリー達がゾロゾロと帰って来た。

ギャラリー1「すげぇ、全部倒したよ!」
ギャラリー2「流石は勇者!勇敢だ!」
ギャラリー3「二人ともかっこよかった!」

周りからは拍手と歓声が上がった。

ディアン「て、照れるな~」

俺は頬を搔いた。
しかし、フレイヤは少しボーッとして、何か考えている様子だった。

ディアン「どうしたのフレイヤ?」

フレイヤ「えっ…?いや、その…………。アンタがさっき言ってたこと、謝るわ……。確かに、私の理想像をアンタに押し付けてた…」

ディアン「分かってくれたのなら別にいいさ!何か理由があったのか?」

フレイヤ「もしかしたら、私焦ってたのかもしれない。今まで、自分は勇者の転生体だって教わって来た中、親の教育像とかけ離れたアンタを見て、今までの私の人生が否定された感じがしたの……。でも、アンタの言う通りね。アンタはアンタ、私は私。私は私のなりたい勇者になるわ…」

ディアン「うん。きっとそれがいいよ」

フレイヤ「でも、それにしてもアンタは常識に欠けてるわ。何か隠してることがあるんじゃない?」

ディアン「あー、え~っと~…」

俺はチラリと屋上を見た。そこには、サヤの姿は無かった。

『ジリリリリリリリリリリ!!』

学校のチャイムの音が校内中に鳴り響いた。

ディアン「あっ、ほら!授業始まるよ!急がなきゃ!」

フレイヤ「何か怪しいわね~」

俺は急いで中庭を出る扉に向かって走った。

フレイヤ「次こっちよ」

フレイヤは俺の行く反対方向の扉を指した。

ディアン「あ、あれ?そうなの?」

俺は方向転換して、フレイヤの後を追った。

フレイヤ「────ったく、やれやれだわ…」


【エネミー・データ2】
『アンデッド・マリオネット』
危険度:★★

傀儡師姿の人形の様な外観をしたオーブイーター。人形やぬいぐるみを指から出た糸で傀儡のようにして操る。傀儡で操っている人形やぬいぐるみはダミーで、こちらに幾ら攻撃してもダメージは入らない。しかし、本体自体の耐久力は低いため、討伐は用意。操っている人形やぬいぐるみは本物で、本体がどこかから拾ってきたと言われている。もし、ぬいぐるみや人形を無くしたのなら、それはアンデッド・マリオネットのせいなのかもしれない。

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