第25階層ヌシとのマジバトル
「ったく、おまえアル中のオヤジかよ。無理なもんは無理なんだからしょーがねーじゃん」
ディアーナがなおも駄々をこねているのでヒカルはエレナに助けを求めた。
「な? エレナ、オマエからも言ってやれよ」
「ええ……諦めるなどできませんよ。大丈夫、ワタシがやるのデス!」
しかし、助けを求めた相手が間違いだった。
――
25階層に到達するとエレナは有無を言わさず、
――17/30
「ちょっと待てーい!」
「いいえ待ちません。一気にねじ伏せるのデス!」
――
――
――
「あ、あの~エレナ氏、ちょっと待っていただけますか……酒、おごりますんで」
「本当デスか?」
「はい~」
ディアーナの呪文と違い、エレナの呪文では服が燃え尽きることはなかった。しかし、体の回復に少し時間がかかる。それはまたイフリートも同じだった。双方が回復するのを待ってヒカルは恐る恐る声をかけた。
「あ、あの~う、イ、イーフリートさん。お話できますか?」
「なんだというのだ! 突然襲い掛かってきおいて!!!!!」
イフリートは、3メートルはあろうかという真っ赤な巨体を震わせて吠えた。
「う、うわぁああああ。ム、ムリだあ~。こえーよ~しょんべんチビリそーだよ~」
「なんだというのだ!」
イフリートが吠えるたび、25階層フロア全体の空気が震えている。
「あ、は、はい! そ、その……まことに、調子のいい話なのですが……ここを通していただくワケには……まいりません……よね? そーですよね。無理ですよね。あははは」
「良いぞ」
「は? い?」
「はなから小ボスであるワシは中ボスであるキサマに従うべきと考えておった。将たる者、ルールには従うべきと考えておるからな」
「え? ほ、本当ですか!」
「だがしかし……いざ、戦いとなれば話は別。売られた喧嘩、負けるわけにはいかん」
「うわわわわゎあああ~なんだよ~エレナ!
「フンッ そーとなれば、どちらかが倒れるまでやりつくすまでデス。 いざ!」
「待てーい! 話を最後まで聞くのだ」
まったく動じることのなかったエレナに対して、イフリートはさらに声を上げて怒鳴った。
「あ、はい。エレナも待てよ。とんだせっかちちゃんだなオマエも」
「このままでは互いに消耗するだけ。そこで提案がある」
「は、はい。なんでしょう。なんなりとおっしゃってください」
「うむ。その小娘。黒き小娘を差し出せ。そうすれば他の2名は不問としよう」
「なっ」
その場の空気が、一瞬固まる……ひまもなく。
「どーぞどーぞ~もう煮るなり焼くなり、凌辱の限りをつくすなりお好きになさってくださ~い」
ディアーナが手もみしながら口をひらいた。
「お、おい、ディアーナ。そんな言い方はないだろう。りょ、凌辱の限りだなんんて……ひとつお手やらかにお願いします! だろーが! 人として」
「な……ヒカル氏まで……そんなことを言うのデスね……。わ、わかりました。もとをただせばワタシの責任デス」
エレナは観念したように、うなだれてしまった。
「うむ。よろしい。それでは行くがよい」
「はい~それでは、そーいうことで……エレナ~がんばってねー」
ヒカルとディアーナはエレナを残し、イフリートの横を通り抜けていった。
「って、んなワケに行くかよ! 来い! エレナ!」
「え?」
「いいから来るんだよ! こうなりゃイチかバチかだ!」
ヒカルは
「ともに戦うぞ。ディアーナも来い!」
「ち、しょーがないわねえ」
ディアーナとエレナがヒカルに抱きつくと、
「あ、あん……ちょっとコレ……なんなの! な、なんだか、キ、キモチイイィィィ」
「イ、イキマス! イキマス! イキマスゥウウ!」
二人をすっかり飲み込み、その魔力を吸い取った
「よ、よし、三人がかりなら、オマエなど敵ではない! 死ね!」
ヒカルは
「な、なんだと――――ッ」
体に合わせ巨大化した
――フゴゴゴゴゴォォォオオオオ
「やる気か? やる気だというのだな! 小僧!」
斬撃からのイフリートの復活は早かった。
「ああ、やってやるってんだよ! オマエの魂切れが早いか、こっちの魂切れが早いか、勝負だ!」
ヒカルはイフリートが復活するたびに切った。もちろん、自分も呪いによりライフが切れる。それよりはやくイフリートを倒すことに賭けたのだった。しかし……
――13/30
――12/30
――11/30
――10/30
その残数になったとき……ヒカルは30階層に強制転移されてしまった。