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赤いタオル

 3日遅れて検査部長から過去5年間の睡眠口座の支店分の報告書が添付ファイルで送られてきた。退職願については何も触れられていない。その代り部長のコメントが付いていた。
「この支店だけ睡眠口座の残高が増えていない。15年に遡って調べると減っているくらいだった」
と異常を知らせている。これは調査した経験だが睡眠口座に1000万を超える残高のものもよくあるのだ。死亡した年配者の場合もあるし、裏口座の場合もある。これを引き出しても騒がれることは少ない。
 今日は次長の調査のついでに報告書に載っていた大口の睡眠口座解約の解約書類を調べてみた。まずすべて現金処理だ。通常現金処理は避けるように指導している。それにサインや押印が微妙に違うように見える。担当は経理主任⇒次長か代理⇒支店長となっている。5人のカウンターの誰の印もない。
「難しそうな顔してるね?」
「ああ」
 声をかけられて顔を上げる。いつの間にか先程までいた作業着の2人は帰っている。目の前のガラスコップにはポールウインナーがまだ2本残ったままだ。腕時計に目をやるが、まだ11時にもなっていない。
「もうクローズするのか?」
 そう言う目の前に幻の赤いタオルが乗っている。
「早すぎるけど、リエの話聞いたらたら堪んなくなったわ。タオルをこの機に及んで投げたら殺すからね」
 初めてぽろんのベットに泊まることとなった。

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