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同級生

 内偵の報告は検査部長に直接送るのでマンションに帰ってからの作業になる。5人の疑わしい部分を書きこんで調査の進捗報告をする。5人は支店長、次長、代理、経理主任、経理担当だ。ほとんどの幹部が関わっているように思える。それほど核心に迫っていないと言える。
「久しぶりね?」
 5日ぶりにドアを開ける。今日は小雨が降っているがそれほど寒くない。傘を壺に入れると細い鋭い目に出会う。
「3日空振りの石田君よ」
 彼は作業服を着ていて焼きそばを食べている。やはりビールの小瓶をがぶ飲みしている。
「こいつはなあ。クラス一番の不良女と付き合っていた。それで喧嘩を吹っかけてやった」
「それはあんたの片思いや?」
 ぽろんに笑われて急に石田はにやけた顔になる。
「ママのアルバム見せてくれって言ったらお預けくっている」
 さっと立ち上がってアルバムを開く。
「長い髪に長いスカート、スケ番のスタイルや。俺は1年の時憧れていた。それで声をかけたら暴走族のヘッドにぼこぼこにされた」
「ただ路地で寝てただけでしょう。大げさなんだから」
 新しい2人連れの客が入ってくる。
「赤いカーネンションは?」
「お世話になった」
「そうか。次は赤いタオルや。俺はそこまでに1年と半かかった。それから結婚を申し込んだが、あっさりと断られた。男性不信なんだってさ」

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