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第7話~休息の時~

 アルモが召喚した光のエルフ(リョースアルヴ)は、召喚主とその仲間には回復効果が、召喚主が対峙している相手に対しては光の彼方へと消し飛ばしてしまう、光の審判(ポースジャッジメント)という魔法を放った。

 魔法の効果で、俺が受けたダメージはほぼ無傷の状態にまで回復し、俺たちと対峙していたパジラは、影も形もなく消し飛んでいた。

「リョースアルヴ…ありがとう………」

 アルモが、自ら召喚した精霊に礼の言葉を言い、自分と精霊の額をつけると、その瞬間リョースアルヴは光の粒となって消えた。

“フラッ…”

“ザザッ”

 そして、精霊を召喚するのに大量の魔力を使ったのだろう。その後のアルモの展開を察知した俺は、瞬時に立ち上がり彼女を抱きかかえた。

「アルモ…ありがとう!」

「…君が無事で、良かった…」

「…それにしても、いつからあんな強力な精霊を召喚できるようになったんだ!?」

「…頭の中から、ご先祖様の…クレスの声がしたの。リョースアルヴを召喚しろって…」

“ポッ”

 アルモの頬が瞬時に紅潮する。

「ところで……私はもう大丈夫だから、おろしてもらえるかな…」

 どうやら、俺に抱きかかえられているのが、急に恥ずかしくなったらしい。

「…俺は、このままでも構わないけど!?」

「本当に、いつから君はそんなに意地悪になったのかしらね!」

 俺はアルモの要求に応えるように彼女をそっと地面におろした。

 そして、シュー・サリット・レイスが戦っている方向を見る。

「…手を振っているわ!向こうの戦闘も終わっているみたいね」

「そうだな。敵の気配もない。もう大丈夫だろう!」

 シュー達に向かって手を振りながら、俺とアルモはその場を後にした。


***


“パチパチパチパチ…”

 皆で囲む焚き火から聞こえる小さな爆跳が、何だかとても心地良い。

 ワイギヤの2将軍との戦いに勝利を収めた頃、あたりはすっかり西日となっていた。そこで俺たちは、野宿ができる場所を探し当て、休息をとることにした。

「…アコード達も大変だったんだな…」

「シュー達こそ、あの将軍をよく仕留めたわね」

「私とシューだけだったら、恐らく…いや、確実に殺されていたわね。勝てたのは、レイスの作戦と適切な指示のお陰よ」

「…私の作戦など、それを実行する者の力量が伴わなければ、絵に描いた餅に過ぎない。二人は、十分な強さを備えていると感じさせられたよ」

「良かったな!二人とも!!」

 途中から合流したレイスだったが、すっかりシュー、サリットと馴染んでいて、その姿を見た俺とアルモは笑みを浮かべた。

「…どうした二人とも?私たちの顔に、何かついているか?」

 レイスがキョトンとした表情で俺たちに問う。

「いや…何でもない!」

「ねぇ、レイス…聞いても良いかしら?」

「何だアルモ。改まって…」

「その…私たちと別れた後、あなたは確かガイーラさんの消息を追っていたわよね…」

「「ガイーラって!?」」

 シューとサリットが同時に質問をしてきたので、俺が簡単にガイーラの概要を説明する。

「…つまり、俺たち3人で倒したラジマって将軍が、ガイーラって人に成り代わっていて、ガイーラって人自身は教団に囚われているかも知れないってことなんだな」

「ああ。私は、アコードとアルモと別れた後、教団兵に変装して教軍内部に侵入し情報収集をした。その結果、主の情報を得ることは出来なかったが、三日月同盟本部が襲撃され、教団にとって都合の悪い存在…アルモ達が、封印が解かれた魔道船に向かったことを知った。そこで、再び行動を共にし、一緒に教団を追い詰めていった方が、主への手掛かりにつながると考え、合流したという訳だ」

「なるほどな」

「でも、それって…」

「ええ。私たちの消息は、常に教団に監視されていると思った方がいい、ということになるかしらね」

「アルモ…これからどうする?」

「教団に監視されているのは、私にとっては今に始まったことじゃないわ。何せ私は、教団の指名手配犯だもの」

「なら、教団の襲撃に備えつつも、これまでの目標は変わらない、ということだな」

「そうね!この先にあるという魔道船の格納庫に向かって魔道船を手に入れ…」

「同盟の支部を巡り、聖遺物(アーティファクト)を集める!」

「そういうことだな」

「レイスがいてくれれば百人力ね。改めて、よろしくね!」

「私も同盟員の端くれ。同盟の創始者の子孫に協力させて欲しい。そして、できれば…」

「分かっているわ。ガイーラさんを、教団の魔の手から必ず救出しましょう」

「よし。それじゃ、交代で火の番をするとして、体を十分に休めるとしよう」

 こうして夜は更けていき、翌朝を迎えた。

 そして俺たちは、魔道船が隠されているという、三日月同盟の旧施設に到着したのだった。

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