新天地へ行きます
王都を出て僕がやって来たのは港町の『ビュンヘン』。
何故、この町にやって来たかというと此処から出る船に乗りこの大陸とは違う別大陸に向かう事にしたからだ。
別大陸に行けば僕の事を知らないだろうし人生をリセット出来る良いチャンスだ。
「しかし・・・・・・、出るのは週に一回かぁ。次に出るのは明日・・・・・・、今日は一泊だな。」
仕方がないのでビュンヘンで一泊していく事にした。
「さて、問題は何処の宿に泊まるかだけど・・・・・・、目立ちたくは無いんだよなぁ。」
家を出る時に国から貰った報償金の一部は持ってきた。
だから、宿と船に乗る為の資金はある。
ビュンヘンは別大陸との貿易もあるから比較的良い宿はあるけど、身元確認が必要だから足がついてしまう。
なので安宿に泊まる事にした。
誰も勇者パーティーの一員だった奴がこんな安い宿に泊まるとは思うまい。
宿に入ってお金を払って部屋に入った。
あるのはベッドと椅子と机、という必要最低限の物だけ。
僕はベッドに横たわった。
「今頃はきっとお祭り騒ぎだろうなぁ、僕の事なんて忘れているだろうし・・・・・・。」
まぁ、それでも良いか、と思ってしまう僕の心は相当傷ついているんだろうなぁ。
そんな事を思いながら僕は自然と眠りについた。
翌朝、目が覚めて宿を出た。
すぐに船着き場へと向かいチケットを買って船に乗り込んだ。
コレでこの国ともおさらばだ。
余韻なんて何もないし未練もない。
嫌な思い出しかないから仕方がない。
船から見下ろすと見送りをする人達が手を振っている。
「そういえば、旅立つ時は見送る人達もいたよなぁ。」
勇者パーティーとして旅立つ時は多くの国民達が見送りに来てくれたし魔王を倒して凱旋した時は迎えられた。
国王から褒められ報償金を与えられ地位も名誉も手にいれたはずだった。
でも、その直後に王太子様の結婚が発表されて一気に奈落の底に落ちたけどね。
船が汽笛をあげて港から離れていく。
「よし、もう全て忘れて新天地で新たな生活を始めよう!」