恋人を奪われました
『ユクアドル王国』の王都はお祭り騒ぎになっていた。
理由は二つあってまず魔王が倒された事、もう一つはこの国の王太子である『サビス・ユクアドル』とその婚約者である『ジャメニ・ネイラ』公爵令嬢の結婚式が行われる事。
しかし、僕『ユージア・エクドル』の心はからっぽだった。
何故ならジャミニの婚約者は本来は僕だったからだ。
僕は元々魔術使いの家に生まれた。
小さい頃から僕は両親から『国の為にその力を使いなさい。』と教育されて魔術師の英才教育を受けてきた。
ジャミニは小さい頃からの幼馴染で家とは家族ぐるみでお付き合いをしている。
なので『いずれは結婚させよう』、と親達が約束して僕達は恋人となった。
それに関しては僕は何も思わなかったけど成長するにつれてジャミニは綺麗になって行った。
僕はそれが自分の様に嬉しくて誇らしかった。
しかし、運命が変わったのは3年前、僕が15歳の時だ。
突然、勇者パーティーの一員に選ばれてしまったのだ。
本当は名誉あるべき事なんだけど僕はジャミニと離れるのが嫌だった。
出発前日、二人きりであった僕は『僕が魔王を倒して無事に帰ってきたら結婚しよう!』と告白した。
ジャミニは『うん、私待ってるから!』と返事してくれた。
そして、勇者と共に旅立った。
旅は過酷な物だった。
正直、勇者達との関係はあまり良くない。
勇者パーティーは勇者『ケイン・ユクアドル』(国王の息子、第2王子)、戦士『マイツ・ターナー』(騎士団一の実力者)、賢者『ミリア・エネクト』(公爵令嬢)、僕のメンバーで成り立っているんだけどまずケイン王子とミリアは恋人関係にあって終始イチャイチャしているし、マイツは大の女好きで訪れる村や町でナンパしては『お持ち帰り』している。
世界を救う勇者パーティーがそれでいいのか、と疑問を持ったんだけど僕は男爵家なので文句を言えず……。
それでも、無事に魔王を倒し国に帰って来たんだけどその耳に飛び込んできたのはサビス王太子とジャミニの結婚だった。
呆然としてしまったよ……。
どうも、王太子がジャミニに一目ぼれしたらしい。
それを国王から告げられた時は目の前が真っ白になった。
実家に帰ってきてからは何にもやる気が出なくてボーッと過ごしていた。
そして、結婚式当日。
僕は人ごみに紛れて結婚式の様子を見ていた。
教会から出て来て幸せそうな顔をしているジャミニ。
その顔を見ていると胸が苦しくなる。
隣にいるのは僕の筈だったのに……。
もう、全てがどうでもよくなった。
僕はこっそりと人ごみを出てそのまま王都を後にした。
本当は結婚式への招待状が来たんだけどあえてドタキャンした。
両親には置手紙を残してある。
僕は、今日この国を出る事にした。
もう、この国にいる理由は何もない。
褒美として『宮廷魔術師』をもらったけど、そんな物何も意味が無い。
今日を限りにこの国との縁を切らせてもらう。