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03

ポックリは、街の人全ての墓を作った。
好きだった人、嫌いだった人。
でも、死んでしまえばみんな同じ。
残るのは思い出のみ。
平等に作った。
ただひとりだけはつ恋の人。
リサの墓だけには花の首飾りを添えた。
リサが好きだった花。
ヒヤシンスで作った首飾り。

「君のように上手には作れなかったけど。
 でも、君に捧げたい」

ポックリは小さくそういうと空を見上げた。
あれから何度目の星空だろう?
ポックリは星空が朝日に変わるまでその場から動かなかった。

「なんだ?この街は!」

旅人がゲタの街に入ってくる。

「あ、もうこの街に人はいないよ」

ポックルがそういうと旅人のひとり。
きつい目に赤髪が特徴の少年が言葉を放つ。

「女は?飯は?」

「ごめん。ないよ」

その言葉に赤髪の少年がため息をつく。

「残念……だったなジル」

黒髪に箒頭の少年がいう。

「うっさいジャキ」

赤髪の少年と箒頭の少年がそういって喧嘩を始める。

「あの……君たちは?」

すると透き通るように白い肌に美しい顔の少女が自己紹介をした。

「あたしの名前はベル・ベラ・ベロ。
 この箒頭が、ジャキ・ジャッキン。そして赤い髪がジル・ジルベルト。
 傭兵集団・ダークグラムの団員さ」

ポックリは身構える。
ダークグラム?傭兵集団?聞き慣れない単語。

「まぁ、そう構えるなって!
 性欲を満たせる女と食欲を満たせる飯があれば危害は加えない」

ジルがそういうと刀を構える。
そうその両方がない現状。
つまりそれは殺されるということだ。

でも黙って殺されるつもりはない。
もうなにも失わない。
だったら自分も戦うのみ。

ポックリはスコップを構える。

「おいおいコイツやるつもりか?」

ジャキが片手銃を両手に召喚して小さく笑う。

「いいじゃないのー
 私に勝ったら好きなことを好きなだけしていいよ!
 まぁ、勝てないだろうけどね!」

ベルは鞭を召喚して構える。

「さてさて残虐ショーのはじまりだ!」

ジルがそういって刀をポックリの方に向けて投げた。
ポックリは驚いたもののなんとか避けることが出来た。

「サンダーボルト!」

ジルが大声でそういった。
その瞬間、1本の稲妻が刀目掛けて落ちてきた。
ポックリは大きく飛び上がり地面を這う稲妻を避けることが出来た。

「なかなかやるじゃないか!」

ベルがそういって鞭を伸ばしジルの刀を回収する。

「でも、これで撃てば終わりじゃね?」

ジャキがそういってポックルの方に銃弾を浴びせる。
1発。2発。3発。
ポックリは、銃口から銃弾の位置を予測し攻撃を避けた。
攻撃される一方。
ポックリは反撃の手段を持たない。
スコップは先程のジルの稲妻により破壊された。

どうすればいい?
どうすれば勝てる?
いや、勝てなくてもいい。
どうすれば生き残れる?

ポックルは考える。

彼らに勝っているモノなどひとつもない。

特に戦闘訓練なんて受けていないポックルに置いて扱える武器はおろか魔法のひとつも覚えてない。

「僕は死にたくない。
 ここでは死ぬわけにはいかないんだ!
 魔王を倒すまで!」

ポックリがそういうとジルたちが笑う。

「倒すって?お前が魔王をか?
 そんなの無理に決まっているだろ?
 俺らにすら勝てないのに!」

ジルがそういって刀を構える。

「炎王!」

ジルの刀に炎が包み込む。
そしてジルは素早くポックリの懐に詰め寄った。

「そこまでですよ」

そういって現れたのは巨大な赤いトマト。
赤いトマトはジルの刀を弾きジルの身体を風の魔法で吹き飛ばした。

「ああん?なんだテメェは!」

「僕の名前はリトルサマーキッス」

「……名前なんか聞いていない!」

ジルがそういうとリトルサマーキッスはなにもなかったかのように言葉を流す。

「趣味は自分探しです。
 多分、この人といるとしあわせが訪れる。
 そんな気がするんです」

リトルサマーキッスがそう言ってポックリの方に指をさす。

「ならねぇえよ!
 お前なんか焼きトマトにしてやる!」

ジルがそういって呪文の詠唱を始めた。

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