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物好き現る!

「急にそんなたちの悪い冗談を言うのはやめない?」

「冗談なんかでこんな事言えるか、俺は本気だ。 セラ、俺と結婚してくれ!」

 真顔で言うタシム。 女の子から言われたら嬉しいかもしれないが、男から言われても嬉しくもなんともない。

「私はあなたを恋愛対象として、見た事も考えた事も無いわ。 悪いけど、他の人を探してくれない?」

「頼む! 俺の傍に居てくれ」

 その場を去ろうとしたセラを後ろから抱きしめるタシム、ここまで積極的な態度に出たのは初めてだ。

「力加減が難しいんだから、今すぐ離れなさいよ!」

「嫌だ、お前が俺の嫁になってくれると言うまで離さない!」

『タシム! 誰を嫁にするまで離さないですって?』

「げっ! リリアにリィナ!?」

 洗礼の時間が迫っているのに未だに来ないセラを探して、リリアとリィナがやってきた。



 最強のボディーガード(彼女)達の登場に、タシムはセラから離れて逃げ出す隙をうかがう。

 だが、それを許す彼女達では無かった。

「逃がすものですか、リィナやっておしまい!」

「かしこまりました、喰らえフラッシュレイ!!」

(ちょっと! それ人に向けて、撃って良いものじゃないわよ)

 手加減されていたとはいえ、リィナの魔力は常人以上となっている。 その攻撃を受けてタシムは、瀕死一歩手前に追い込まれた。

「セラに2度と近づかないと約束してくれるのなら、回復してさしあげてよろしくてよ?」

 リリアがタシムに鬼の様な事を言っている、だが彼はこの程度でへこたれなかった。

「お、俺は何度でも立ち上がりセラに求婚するんだ!」

「あらそう? でもそのセリフ、あと何回言えるかしら?」

 その後リリアはタシムを6度回復しリィナが6回攻撃したが、タシムが諦めなかったのでそのまま放置する事にした。 リサの洗礼に間に合わなくなるからだ。

「タシムなんか放っておいて、セラ早く行きましょ」

「え、ええ」

 悪びれる様子の無い2人を見たセラは、さすがに少しだけ引いてしまった。



 今年の収穫祭は洗礼の儀式を執り行う前から、大いに賑わっている。 そしてニナリスが連れてきた8人のシスター達にもこの5年の間に変化が有った。 リィナを除く全員が既に成人しており、それぞれが村の若者の家へ嫁ぎ聖職者の立場を捨てた。

 来年はセラ・リリア・リィナの3人が成人するので、誰が3人の心を射止めるのか早くも噂となっていた。 タシムのプロポーズも、そんな中で焦った結果だったのかもしれない。

「さてリサ、祭壇に登り祈りを込めながら水晶玉に触れなさい」

 この5年で変わった事がもう1つ有った。 洗礼の儀式を執り行うのが、トマス神父から奥さんのニナリスさんに変わったのだ。 奥さんの方が聖職者としての位が高いかららしいが、少し影が薄くなった感がする。

 リサは緊張した様子で祭壇にゆっくりと登る、そして静かに触れると水晶玉はリリアの時と同じ様に虹色に輝くと光の柱が降りてくる。


 リサは 【献身】 に目覚めた。


 お~! と教会内に歓声が湧く、妹が無事スキルを覚えた事にセラは安堵した。 ここから、セラの予想外の事が起きる。


 リサは 【偏愛】 に目覚めた。


 リサは【肉食女子】に目覚めた。


(偏愛、肉食女子!?)

 出席者たちの視線が一斉にセラに向けられた、また何かやらかしたのか? と疑われているのだ。

「し、知らない、知らないわよ! 私は何もしてないわよ」

「セ、セラ……。 俺はあきらめないぞ」

 必死になって誤解を解こうとしていると、ボロボロのタシムが教会まで来てしまった。 ここまで執念深いと逆に天晴れと言いたくなってしまう。



「あの人も懲りない御仁ですわね」

「そうですね、もう1度お仕置きしますか」

 リリアとリィナが席を立とうとした時、祭壇の上に居たリサが駆け下りてタシムに近寄った。

「タシム様!」

(さま!?)

 これには流石のセラも面食らってしまう、タシムはタシムで十分で様付けする必要など無いからだ。

「タシム様、この怪我は一体……。 さては、あの3人組にやられたのですね?」

 リサの目がセラ・リリア・リィナの3人に向けられる。 今回の場合、セラが被害者の側かもしれないのに。

「あ、あのねリサ。 タシムの奴が私にプロポーズなんてしてくるから、リリア達が怒って……」

 大勢の前でバラしてしまった所為で、村人の興味はこのプロポーズが成功するかどうかに移ってしまった。 だが、ここから事態は少しややこしくなってしまった。

「かわいそうなタシム様、あんな姉に惑わされてしまうなんて。 あんな女よりも、わたしの方がずっとタシム様のことをお慕いしておりますのに」

(あんな女って、お姉ちゃんに対してリサひどい!)

 妹にボロクソに言われてショックを受けるセラを尻目に、リサはかいがいしくタシムに付き添っていた。

「さあ、タシム様。 わたしが傍で看病いたしますから、お家へ行きましょう。 泥が付いた身体も拭きませんと」

「お、おい、待ってくれ! 俺はセラに話が!?」

「わたしだってあと6年もすれば、あの女と似た容姿になりますわ。 ですから、ご安心くださいな」

 嫌がるタシムを引きずる様に、リサは教会を後にした。 残された面々は何が起きたのか理解出来なかったが、村長の

「どうやら、タシムが嫁を迎えるのは6年後らしい」

 この一言で無理やり納得するしか他なかった。 そしてヨハンとヒルダは、セラと別の意味でお騒がせな娘に頭を抱える事となった。

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