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秘密特訓の開始

 セラとリリアは1時間ほどお昼寝すると、着替えて今度は訓練場へ向かう事にした。 そして訓練場の中に入るとそこは断崖絶壁が背になっており、まるで追い込まれた状況に今まさに立っているかの様に思えた。

「こっちはね、訓練場になっていて色んな状況の戦闘を想定して実戦練習をする事が出来るの。 とりあえず村の近くに似ている草原を出してみるから、ちょっと待ってね」

 リモコンを取り出したセラが操作を始めると空間が歪みながら、岩山や海岸の景色が次々と流れていく。 そして空間の歪みが収まると目の前には広大な草原が広がっていた。

「ほへ~! 何だか、もうどうでも良くなってくるね。 これが有ればセラは村の中で、何時でも冒険者で生きていく為の訓練が出来るのだから」

「そうだよ、それにいざとなったらこの中に逃げ込めば良いからね」

「ためしにセラがどんな訓練をしているのか、見せてもらっても良い?」

「良いよ、でもリリアに見られていると思うと何だか緊張しちゃうな」

「そんな事無いでしょ、スキルを覚えた途端にいきなり冒険者崩れを追い払った村のヒーローが謙遜しすぎ」

 リリアの期待に応える様に、セラは準備運動代わりのゴブリン100匹を出した。

「ちょっ! 何よこれゴブリンが一杯居る、一体何匹出したの!?」

「う~んと100匹かな?」

「100匹って、セラ無理だよ危ないよ」

「大丈夫、私にはこれが有るから」

そう言って左腕を上げると、いつのまにかセラの左腕に白く輝く小楯が装着されていた。



「セラ、何それ?」

「これはガトリングバックラーと言って、こう使うんだよ。 でも私にしか使えないから参考にならないかも」

 目の前のまだ襲い掛かってこないゴブリンに怯えているリリアの前で、セラは小楯をコツンと叩いてガトリンガンを出した。 そして準備が出来た所で実戦練習を開始する。

「それじゃ始めるからリリアは少しだけ離れていてね」

 戦闘の開始と同時に一斉に向かってくるゴブリン。 セラは落ち着いてガトリングガンの照準を合わせると、無慈悲な攻撃を開始した。

 ドルルルルルルルルル……!!

 次々と肉の塊からミンチへと姿を変えるゴブリン達。 突然の出来事と大きな音に、リリアは耳を塞ぎながら唖然とした様子で見ていた。

 ドルルルル……! カラララララララ……。

 魔力を使い果たして残弾が無くなった様で、銃身は空回りを始めるとやがて完全に停止した。

「はぁ、やっぱりまだ魔力が低いから長時間の連射は厳しいな。 でも、これを続けていればきっと上限まで上げられる筈だから頑張らないと!」

 地面に座り込みながらも両手でガッツポーズするセラ、鳥のモンスターを創るだけでも凄かったのにコレはそれすら霞んで見えてしまう。 リリアは父がなんで急にセラを様付けで呼ぶようになったのか感覚で理解した。 更にはこのままセラに置いていかれる焦燥感にまで襲われた。

「セラ、私も頑張るから! 私も一杯練習して、セラの隣にずっと居るから」

 それからセラとリリアはよくこの訓練場に来ては、お互いの魔力を上げる秘密の特訓をする様になった。 しかし2人の異常な魔力の上昇は、すぐに村人の間に知れ渡ってしまった。 村長とセラの称号の事を知る者達はある夜、皆が寝静まった頃を見計らって集まり対応を話し合った。

「これは…セラが原因でほぼ間違い無いだろう。 最近2人の姿が村からよく消えておる、我らの想像の及ばない場所で魔力を上げる練習でもしているのではないだろうか?」

「実は昔うちの娘が1度だけ聞いた話なのですが、セラはどうやら冒険者を目指しているようなのです」

「冒険者とな!? なるほど、そう考えればこれ位の練習をしておかねば生きてゆけないかも知れぬな」

「あの子の場合は、爆撃する鳥で脅迫すれば皆従うしかないのですけどね……」

 ハハハハ……と乾いた笑いが広がる、とりあえず村に危害を加える意思は無いのでこのまま様子を見るという事でこの日の話し合いは終わった。 この数日後、セラが村の経済を根底から覆す事を仕出かすとは気付かないまま。



 その日、セラとリリアは今日も秘密の特訓をしようと見つからない場所を探していると、村の広場で猟師の人が数人集まって話し合いをしているのを見つけた。

「こんにちわ~! 一体、何を話し合いしているの?」

「ああ、セラちゃんか。 実は村の南の森にゴブリンとオークがエサを求めて住処を移動してきたらしくてね、どうやって追い払おうか相談していた所なんだよ。 鹿や兎の狩場がその森を抜けた先に在るからどうしても通らないといけなくてね」

「それなら、私がゴブリン達が潜んでいる森を今から爆撃します。 そうすれば、拓けた場所に住み続けようとは流石のゴブリン達もしないでしょうから」

 セラは止めようとする村人の声も聞かずに、爆撃鳥を新たに10羽創り出した。 だが新たに産み出された鳥は、最初に創ったのよりも二回りほど大きなカラスの姿をしていた。

「あれ? もしかして、この爆撃鳥って私の魔力とフンの爆弾の威力が連動してるのかな?」

(おいおい、まさか冗談だろ?)

 最初冗談かと思っていた猟師達だったが、たった10羽の鳥のフンで森があっという間に更地と化すのを見て、セラが女の子の姿をした魔王に見えた。


 セラはゴブリンの【怪物創造】が可能となった。

 セラはオークの【怪物創造】が可能になった。

 セラはワームの【怪物創造】が可能になった。


「あっ!今の爆撃でゴブリンとオークも何匹か倒していたみたい。 私だけのオリジナルゴブリンやオリジナルオークが創れる様になったよ」

 オリジナルのゴブリンやオークって一体…。

「そういえばワームって糸を吐くモンスターだったよね、おじちゃん?」

「ああ、そうだな。 糸で身動きが取れない様にして襲いかかる怖いモンスターだよ」

 セラが急に顎に指を当てて考え込み始める、また何かやらかすかもしれないと不安を覚えたリリアは何を創ろうとしているのか聞いてみた。

「ねえ、セラ。 今度はどんなモンスターを創ろうとしているの?」

「いや折角だから、ミスリルで出来た糸を吐くワームでも創ろうと思って」

(ミスリルで出来た糸?)

 ミスリルは聞いた事は有る、非常に希少な金属で物凄く高価でもあると。 でも金属が糸になった話など聞いた事も無い。

「我が願いに応え出でよ、【ミスリル繊維蚕(ミスリルファイバーワーム)】

 この瞬間、体内でミスリルを生成し繊維状に変えてから口から糸として吐き出すありえないモンスターが誕生した。 だがこれは教会をも巻き込んだ【ミスリル価格暴落事件】のほんの始まりに過ぎなかった…。

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