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「これは砂糖菓子を細かくしたやつが入っていて、他のよりも甘い。パンにチョコレートをつけたものは比較的甘さが抑えられている」
 と、説明しながらお菓子を配っている。
 よし。評判はいいようだ。
 テーブルに並べてあるチョコレート菓子にも次々と手が伸びている。
「どうぞなのよ」
 キリカちゃんもブライスくんとカーツ君を真似して小さなかごにお菓子を入れて会場を回り始めた。
 会場は、奥に近づくほど位の高い貴族、私たちがいる一番手前辺りは、庶民ばかりのようだ。これならば気が楽だ。
 そして、貴族サイドでは、東屋……ガゼボには、シャルム様とローファスさんが残り、リリアンヌ様はテーブルでチョコレートを手に取り貴族にすすめ始めている。
 さすがに、ホストであり、自分よりも位が高いリリアンヌ様がすすめれば、黒くて怪しい食べ物といえども口にしないわけにいかないようだ。
 ひきつった笑顔を見せながら、すすめられた貴族のお嬢様奥様方がチョコレートを口にしている。
 いや、口に入れた瞬間、笑顔が驚愕に代わる。
「さすがですわ、リリアンヌ様がおすすめになるくらいですもの。とてもおいしゅうございますわ」
「ああ、私、結婚には興味はございませんでしたが、パーティーに来てよかったですわ。こんなに素晴らしいものがいただけるなんて」
「あまりにたくさん食べすぎてははしたないかしら?でも、もっといただきたいですわ」
「これは、ぜひどこで手に入れたのかリリアンヌ様にお伺いしなければ」
「お父様に頼んで買ってもらわないと」
 ふふふ。貴族サイドから聞こえてくる声も、期待通りのもの。
 おっと、こうしてはいられない。私も仕事を全うしましょう。
 花が飾られた籐籠に小皿の乗ったいくつかのチョコレートを入れて、会場を回る。
 テーブルから離れて様子をうかがっているだけの母娘を見つけて声をかける。
「ようこそいらっしゃいました。お菓子をどうぞ」
「あ、あの……」
 この世界の人は男女とも背が高い。目の前の女の子も、顔を見れば15歳くらいに見えるけれど、身長は私より高く、165センチはありそうだ。
「か、母さん……」
 不安げに隣に並ぶ母親に視線を向ける。
「母さんじゃなくて、お母様と呼ばないと」
「あ」
 ん?
「すいまs……いえ、申し訳ございません。あの、夫が商売で成功していますが、その、私たちはマナーなど何も……その……」
「ごめんなさいお母様、私が一度、公爵様のお屋敷を見てみたいなんて言ったから……」
 そうか。私と一緒。
 こんなにたくさん貴族が集まる場所に来て、緊張しているんだ。
 何か失礼があってはいけないと。
 何もマナーを知らないからと食べるのを遠慮しているんだよね。
「大丈夫ですよ。今回は、このチョコレートのおいしさを皆様に知ってほしいと公爵夫人のリリアンヌ様が主催したパーティーです。おいしくチョコレートを食べて、周りに人にチョコレートのおいしさを広めてもらえればリリアンヌ様も喜ばれます」
 小皿を一つ持ち上げて母娘に進める。
「チョコレート?」
「そうです。外国のお菓子です。リリアンヌ様が大層気に入って、今後もその外国からお菓子を食べたいと思っているのですが、外国からの輸入ができるか分からないそうなんです。多くの方がチョコレートを食べたいと思ってくだされば、輸入できるようになるのではないかと考えたのですわ」
 女の子がうんとうなづいた。
「分かりました。私、リリアンヌ様のために、チョコレートのこと、パーティーに来られなかった友達にいっぱい教えます」
 と、女の子がチョコレートを手に取り口に入れた。
「あ……」
 口を押えて涙目になる女の子。
「大丈夫?」
 慌ててハンカチを取り出す母親。
「母さん、これ、すごい……。父さんがお土産で持ってきてくれたどんなお菓子よりも……おいしい……」
「奥様もどうぞ」
 と勧めれば、娘が涙を流すほどのお菓子がどんな味か気になったのか、すすめられるままにチョコバナナを口に入れた。
「甘い……甘いだけじゃなくて、ほんのりとした苦み、そしてなんとも言えない香りが……」
「母さん、美味しいね。チョコレート、美味しいね」
「ええ。とても……私も、帰ったらみんなに……いいえ、でも……」
 お母さんは、素直にみんなに言うのをためらっている?
「あ、あの、外国のお菓子、高いのでしょう?もし輸入ができるようになったとしても……庶民の私たちには……」
 そうか。
 その問題か……。
「輸入量が少ない間は、庶民の手は届かないかもしれませんが……。輸入量が増えれば、砂糖を買うお金があるなら、特別な日に楽しめるようになると思います」

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さて。
もしかして、早売りとかだと、そろそろ……

(´・ω・`)ドキドキ

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