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222 大物ううう

「特別な日?」
 女の子が首を傾げた。
 誕生日とかこの世界では祝ったりしないのかな?記念日って何があるんだろう?
「プロポーズされた日とか?」
 女の子の目がキラキラと輝く。
 でも、それだと一生に一度しか食べられないですよね。
「母さんはそれじゃあ、もう食べられる日がないわよ?」
 と、同じことを考えたのか母親が笑った。少し緊張がほぐれたらしい。
「私の故郷では、1年に一度、女の子から男の子に気持ちを伝えるためにチョコレートを贈る風習があるんです」
 バレンタインっていうんですけど。
「奥様方は、日ごろお世話になっている旦那様にチョコレートを贈るんですよ。あと、大切な子供たちに」
 そういえば、私……。主人へのバレンタインへの贈り物……どうしてたかな。手作りのチョコレートやチョコレートケーキなど毎年あげていたのは確かだけれど……。そのチョコレートに込める気持ち……。
 好きっていう気持ちを込めていたのはいつまでだろう。
 感謝の気持ちを込めていたのはいつまでだろう。
 最期にあげたバレンタインのチョコレートにはどんな気持ちを込めたのか……覚えていない。
「まぁそれは素敵な風習ですわね!」
「あれ?でも、贈ってしまったら、食べられないわ」
 あ、確かに?
「思いが通じれば、一緒に食べればいいんですよ?」
「あ、そうね!素敵!好きな人と両想いになれて、チョコレートも食べられるのね!もし、好きな人が受け取ってくれなかったら……失恋しちゃっても、チョコレートを食べたら元気が出そうだし!私、学校の友達みんなに教える!早く私たちもチョコレートが買えるようになるといいな!」
 ふふ。恋バナとか少女たちは好きだもんね。
 チョコレートに恋バナ絡んだら、噂話は超スピードで広がるかも?
「感謝の気持ち……確かに、感謝していてもそれを伝える特別な日があるといいわね。こんなおいしいもの、子供たちは一度食べたらまた買ってと絶対に言い出して切りがないでしょうから。特別な日の特別と教えるほうがみんなも助かるでしょう。私も、知り合いの奥さんたちにチョコレートのことを広めてみます」
 にこりとほほ笑んで小さく頷く。
「さぁ、まだチョコレートのお菓子はいろいろ種類がありますわ。どうぞいろいろ食べ比べて、どれが一番美味しいか教えてあげてくださいね」
 と、二人をテーブルへと案内する。
 それから、また同じように人を捕まえてはリリアンヌ様が意図することをさりげなく伝える。
 バレンタインの話もちょこちょこすると、非常に評判がよかった。どうやら、一年に一度の特別な日というところがポイントで、そういうお祭り気分になれるのがいいようだ。
 すいません。なんか、日本ではチョコレート会社の戦略だとかなんだとか言われますが……この世界で私、チョコレートの普及のためにそれこそバレンタインの大本の理由やらなにやら全部飛ばして、しかもちょっと改変して伝えてしまいました……。
「ユーリ様、リリアンヌ様がおよびです」
 侍女に声をかけられてリリアンヌ様の元に移動……したくないけど、だって、貴族ゾーンだよ……。仕方なく、移動する。
 と、よく見れば、ブライス君はすでに貴族ゾーンにいて、貴族のご令嬢たちが群がっている。
 はい。美少年、それだけで他に理由はいらない。
 あ、でも、親が叱りつけている人もいる。
「あなたは、そんな給仕をしている子などほっておきなさい。早くローファス様のところへ行ってお近づきになるのよっ!」
 ですって。
 うん。怖いです。
 ローファスさんなら、ブライス君をそんな子言うような親とはお近づきにならないと思うけど……。
「リリアンヌ様、およびでしょうか」
 即席マナーで習った少し頭を下げて話しかけるを実行。
「ユーリ、今から例のあれをお出ししようと思っているのよ。ちょうど、王妃様も到着しましたし」
 はぁ?
 王妃?王妃と言いましたか?王族は招待していなかったんじゃ……え?行きたいって言われた?
 あずまや……ガゼボを見れば、警備の人が増えてる。
 そして、一番の上座には、女性の姿が。綺麗な人だ。キラキラ。あれが王妃様?だよね?公爵であるシャルム様よりも上座なんだもん。
 ち、近づきたくない……。
「では、私は、調理場へ行って出来栄えの確認をしてまいりま……」
 逃げよう。
 うん。逃げようと思ったけれど。
「何を言っているの?もうすでにチョコレートのお菓子を食べて、皆さまチョコレートには興味津々なのよ。一番詳しいあなたにダメ押しを押してほしいのよ。いろいろチョコレートの話をしてほしいの」
 ひぃー。
 助けてください。
 あずまやに目を向けると、ローファスさんと目が合った。
 ローファスさん……助け……としては頼りないんですけど。知ってる人がいるだけましかな?でも、逆に知ってるからこそ……暴走しそうで……白目。

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だって、貴族とかみんな行くのに、私だけ仲間外れなんてずるいですぅ。
と、言ったかどうかは知らない。

……うん。正直に言えば……。

王族は招待してないって書いたのすっかり忘れてたの。ごめんちゃい。
そんな忘れん坊のとまとさん、
なんだか12月10日ってとても大切な日だったきがするの。

……なんだったかな、2,2,2、2……えーっと、2……

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