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213 突然変異

「さぁ?絵については詳しく聞かなかったから、その……妖精の絵だとしか教えてもらわなくて……」
 ブライス君が興味深そうに私の話を聞いている。
「絵に残っているということは、妖精は小さな女の子のような姿をしているということですか?だとしたら、人をさらおうと思えば相手の油断を誘えますね。特に子供をさらうなら、子供の姿で近づくのが一番だ。一緒に遊ぼうとでも言って手を引いて行けば簡単にさらえそうですね」
 あああ。
「ギルドに報告しておきましょうか。妖精は小さな女の子の姿で人をさらうと」
 だめ!
 それ地球の架空の妖精!
「あ、いえ、逆に小さな女の子以外に警戒心が薄くなるからだめだよ。妖精っていろんな姿の妖精がいるって故郷では言ってた。えっと、羽が生えた小さな人の姿とか、えっと、ゴブリンみたいなのとか?」
 友達が教えてくれたことがある。
 妖精といえば、ピクシー。ピクシーは、いたずら妖精のパックが語源。パックはボブゴブリンと同一だとされている。ゴブリンに関しての説明は古い資料によると「いたずら好きで醜い妖精」なんだそうで……。
「まさか、ゴブリンが?」
 またもやブライス君が驚きの顔をする。
 あ、もしかして……。
「ブライス君はゴブリンを見たことがあるの?]
 この世界には普通にいるとか?
「いいえ……でも、ユーリさんの故郷の話によると、妖精はいろいろな姿をしている……もしくはいろいろな姿に擬態できるということが分かりました。それだけでも十分な情報でしょう。今度ギルドに報告しておきます」
 え……ごめんなさい、こっちの世界の妖精の話じゃないんですっ。
「あ、あの、その、故郷の妖精は、ここで言うところの妖精とちょっとニュアンスというか、何か違うというか……」
 ブライス君がふっと笑う。
「小さな情報でも欲しいんですよ。ギルドは。今まで妖精にさらわれたといわれる子供たちは一人も戻ってこないんですから」
 ……正直、それ、誘拐されて、奴隷とかに売られてるとか殺されるとかじゃないのかな?……妖精って本当に子供をさらうの?
「なんの痕跡も残さず突然消える。時には、親の目の前で唐突に消える。分かっているのは、消える前に子供がふと何もない空間を見つめることくらいです」
 そうなの?
 ってことは、本当に妖精と呼ばれる存在にさらわれてる?日本なら神隠し?
「子供は親が見えない何かが見えて……にこっと嬉しそうに微笑んだ途端に消えるとか……。そういう話を聞くと、妖精は本当にキリカみたいにかわいい姿をしているのかもしれませんね」
 ブライス君がキリカちゃんの頭をなでる。
「あのね、キリカは子供をさらったりしないよ?」
「だよなー。妖精は子供を暗黒大陸に連れて行っちゃうんだろう?」
 暗黒大陸……。
「暗黒大陸ってよく出てくるね?」
 魔王のいるところだったっけ?妖精が子供をさらって連れていく場所。
 あれ?まさか、ドラゴンタートを転移させてるから、怒った魔王がその報復に子供をさらっていくとかじゃないよね?
「ふふ、分からないことはすべて暗黒大陸にしてしまってるんですよ」
 ブライス君が笑う。
「ああ、料理のアレが全部クラーケンのせいとかそういうのと同じ?」
 ぷっとブライス君が噴き出した。
「そうですね。便利でした。クラーケン。そうそう、あれからクラーケンの身はいくつかのブロックに分けられて各領地に送られていきました。冷凍保存されるはずです。それと並行してクラーケンの研究もおこなわれましたが、通常のクラーケンの身では効果がなかったため、もしかするとバジリスクを飲み込んだため突然変異が起きたのではないかと……」
「そっか。じゃぁ、あのおっきなクラーケンが特別なやつだったのね」
「残念だな。じゃぁ、最上級毒消し草の代わりにたくさん用意できないのか」
 ブライス君が頷く。
「ですが、研究材料としてクラーケンの身の一部とバジリスクの葉が王都の薬研究室にも送られましたから、研究の結果何か分かるかもしれません」
 そっか。分かるといいね。
「ねーねー、コカトリスの尻尾もぐもぐしたクラーケンは突然へーいしないの?」
 キリカちゃんの言葉にブライス君がまたもやはっと息をのむ。
「それ、もしそれが実現するのであれば、発情期以外にコカトリスを捕まえた者は、素材として尻尾をギルドに持ち込んで買取してもらうようになりますね?だとすると」
 何か考え始めた。
「よろしいでしょうか、ブライス様」
 使用人の一人が遠慮気味に手を上げた。
「薬研究所に勤めているお嬢様に今のお話をお伝えしてもよろしいでしょうか?もちろん、発案者としてキリカ様とブライス様、ご希望があればユーリ様とカーツ様の名前もお伝えいたしますので」
 お嬢様?

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うーん、思った以上にいっぱい書いてあって、終わらぬ。更新が終わらぬ。

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