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199 ミルク

 おいしさのあまり大鍋いっぱいのチョコレートを食べてしまったら危ない。
 チョコレートを食べすぎると鼻血が出るのは伝説じゃなくて、ちゃんと理由があったんだよね。なんか血流がよくなりすぎて毛細血管が切れるんだっけ?
 そもそもそれはチョコレートに入っているカフェインが原因とか。
 でもって、カフェインは過剰摂取すると死ぬこともあるくらい危険なんだよね。特に子供は……。そして、妊婦にカフェインは駄目なのです。授乳中はどうなんだろう?私、子供は預かって育てていたけれど……自分の子供じゃなかったから、授乳のことは調べたことなかった……。
「薬に使われるほどの効能はありませんが、薬に近いものになるので、一度に大量に接種すると危険なんです。特に小さな子供や妊婦さんには」
 リリアンヌ様ががっかりした顔をする。
「そ、そうなの、目の前にたくさんあっても……たくさん食べては駄目なのね……」
 どれくらいの量ならいいというのを、私は言えないけどどれくらいなら大丈夫かなぁ。板チョコ1枚、2枚くらいまでなら大丈夫?そうすると100gから200g?
 あ、でも100gや200gだけだったとしても……。
「チョコレートの味を楽しむには、ココアにしたりケーキにしたりいろいろな方法があります。そのまま食べてもおいしいですが、いろいろなお菓子に使うとまた違ったおいしさが味わえますし、他の材料と混ぜることでそのまま食べるよりもたくさん食べられますよ?」
「他のお菓子?」
 リリアンヌ様の目がきらーんと光った。
「どのようなもの?ココアって何かしら?ケーキって、平らなパンのことよね?」
 ケーキが平らなパン?あ、え?日本でいうところのケーキと違うの?
「ココアは、えーっと牛乳で溶かして飲む……あ、ホットチョコレートと言うことも?あれ?別だったかな?」
 リリアンヌ様が首を傾げる。
「牛乳?」
 あ、そうか。ないんだよ。お湯でもできたかな。ミルクココアのイメージが強すぎて……。
「その、角が2本あって、牛っていう動物のミルクです」
「ああ、ミルクのことね。角が2本ある動物を、ココでは山羊っていうのよ」
 そういえば、山羊のミルクはあるって言ってた。いや、でも山羊と牛は違うよ。
「ロッテンマイン、ミルクを持ってきて頂戴」
「かしこまりました」
 ロッテンマインさんが頭を下げて出ていきました。
「なー、ミルクって赤ちゃんの飲み物だろう?なんであるんだ?」
「今度、赤ちゃんが生まれるのよ。だから、山羊を飼っているのよ。それから、赤ちゃんだけじゃなくて、食事がとれないときに飲む薬代わりにも使うこともあるわよ」
 カーツ君の疑問にリリアンヌ様が答えた。
 そういえば、サーガさんが17番目が生まれるとか言っていたっけ?
「王都では山羊ミルクは普通に買えるんですか?」
 牛乳がなければ山羊ミルクでもいい!欲しい!
「どうかしら。赤ちゃんが生まれた家庭では、必要があるときは買うこともあると思いますが……」
 牛乳よりも山羊ミルクは母乳に成分が近くて昔は日本でも粉ミルクの代わりに赤ちゃんに飲ませていたという話も聞いたことがある。小屋の近くの町でも赤ちゃん優先って言ってたけど。
「食事がとれない時は、山羊ミルクよりもポーションを飼う人のほうが多いんじゃないかしら?」
「そうだな。あまりミルクは大人は飲まないな。保存もきかないし、浄化魔法をかけないとお腹を壊すこともあるからな……」
 お腹を壊す?加熱処理してないからかな?保存は……確かに冷蔵庫もないし。それに密閉瓶がないと、臭いうつりが早いとかも聞いたことがある。だから山羊ミルクは臭くて飲みにくいと思う人もいるとか。
「お待たせいたしました」
 侍女が大きな陶器の器にたっぷりのミルクを持ってきた。
「【浄化 解毒】それで、ユーリちゃん、このミルクをどうするの?」
 ああ、ミルクだ。牛乳じゃないけど、ミルク!
 火の魔法石をミルクに入れる。何度がいいのかな。ホットミルクは60度前後がおいしいから……。
「ミルクを60度に温め停止」
 チョコレートは体温で溶ける。40度もあれば溶けていく。器に手を当て、温まり具合を見ながら、ローファスさんの作ったチョコレートを入れる。
 ミルクがココア色に変わっていく。
 ふんわりチョコレートとミルクの匂いが立ち上る。
 器が熱く感じて来た。そろそろ60度になっただろうか。
 お玉のようなもので、カップに注いで、味見。
 うはー。まさにミルクココア!おいしい!懐かしい!体があったまる!幸せの味!甘くてまろやかで、心配していた山羊ミルクの臭みはない。新鮮で臭いうつりなどないよう細心の注意を払って持ってこられたのだろう。まぁ、貴族のお屋敷だし。何もかも一流なのは当然なのかも。
 味の確認が済んだので、人数分カップに注いでテーブルに置いていく。
「どうぞ、リリアンヌ様。ミルクココアです」


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待望のミルクです。あ、いつもありがとう。
そりゃ、公爵家なら山羊くらい飼えるよねぇ

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