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17話 遭遇と先制攻撃


辺り一面の砂景色、ここがどの位置か分からなくなる。
 
「さて兼次ちゃん。戦いの前に、フラグを立ててみようね」

今から世界の命運を掛けた戦いに行くのに、この緊張感のない麻衣の発言、まるでゲーム感覚である。

「一応聞いておこう、フラグとはなんだ?」
「ゲームとかで特定のイベントが、起こるための条件がそろうことを、フラグが立つと言います。この場合は、ある特定の発言をすると立ちますね」

なるほど、やっぱりゲーム関係か、現実世界ではありえないが乗っておこう。麻衣からの好感度を上げておけば、契約期間終了後も関係を保てるかもしれないしな。
では、どんな言葉を選ぶか・・・

「この戦いが終わったら、瑠偉に告白するんだ」
「それ死亡フラグだよ」

「麻衣、この戦いが終わったら、結婚しよう?」
「それも死亡フラグね、そして答えはノー」

あれ、俺死ぬのか?

「くだらない茶番はもういい、それでガイルアはどこに?」
「今さら聞くの? 場所知らないの? アフリカって広いよ?」

アフリカと言えばサハラ砂漠、それしか思い浮かばなかった。
俺はスマホを取り出し、ララちゃんを起動した。

「ガイルアの滞在場所を教えろ」
「今さら聞くのですか?」

お前もかララよ・・・

「そこから西へ30km移動していただいて、上空1000mの地点に居ます」
「わかった、地図に目標地点と、現在位置のマーキングを頼む」
「了解しました、ご健闘を」

俺はスマホを握りしめ飛び立つ「よし、飛ぶぞついて来い」
周辺の砂を巻き上げながら飛び立つ、後ろを見ると麻衣はしっかり付いてきている。
右手のスマホを見ると、いつの間にか地図アプリが起動して、目標地点と現在位置に線が引かれていた。

代り映えの無い景色を、砂を巻き上げながら飛び続けること十数分、地図の現在位置と目標地点が重なった。
上空に波打つ水面に、光が不規則に反射している様な、透明の物体が空にあった。停止して地上に降りる、改めて上を見上げた。

俺の横に降りてきた麻衣が、同じように上を見上げた「キラキラしているけど、液体なの?」
「さあな・・・エネルギーって言ってたし、液体でも気体でもないと思う」

 プルルルルル、プルルルルル・・・

持っているスマホが、振動と共に鳴り始めた、画面を見ると【着信 ララちゃん】と出ている。 

「なんだ?」
「忘れていると思いまして、ガイルアの特性を、まとめさせていただきます」
「・・・一応聞いておこう」

「活動していない時は、無色透明です。活動を始めると、可視光さえ吸収を始めますので、立体感の無い完全な黒色になります。本体の大きさは、東京ドーム2個分です。質量が存在しないため、重力の影響を受けません。

本体からの攻撃は、未知のエネルギーの打ち出しです、これは物理防御で防ぐことが可能です。ただし、本体が触れると物理防御ごと取り込まれます。

ダメージを与えられる可能性のある攻撃は、質量及びエネルギーが存在しない攻撃になります。ちなみに、そんな攻撃方法は存在しません。

中条さんより、北側100kmほど先に街があるので、そこを避けて戦ってください、とのことです。最後に、現時点での勝利予想は0%と出ました。では健闘を祈ります」

通話の終了を確認し、スマホをズボンのポケットに入れた。
勝率0%か・・・まぁ、ララは俺の力のすべてを知らないだろう。
空を見上げガイルアを見る、まだ無色透明だ。

活動していない状態、と言う事は初撃が大事だ。
しかし、どれを選択するかだ・・・まずは様子を見るか。

「よし麻衣、先陣を任せる。行け肉壁よ!」
「肉壁って・・・庇わないからね!」

麻衣は両手を上げガイルアに向ける、目を閉じ深い深呼吸をした。周辺の砂が巻き上がった、それは手の先に集まり回転を始めた。回転している砂は球状になると、球の中央付近が光り始め、それは全体に広がっていった。

なるほど、エネルギー波に砂を混ぜて、物理攻撃を含めることによって、威力を高めた様だな。意外と参考になったな、もっと単純な頭脳と思っていたが、学年2位の学力は飾りじゃないようだな。

「名付けて、ストーム・ハッコウ砲! いけぇー!」
砂発光? ネーミングセンスが悪い「いちいち、叫ぶんじゃねーよ」

その発光体は、麻衣の手から離れ、ガイルアに向かって速度を上げながら進んでいく。ガイルアと重なった発光体は、そのまますり抜け、更に上に向かって進んでいった。
ガイルアは何の反応もせず、まだ無色透明のままだ。

「あれ、すり抜けたの? 当たったの?」
「すり抜けたな・・・」

しばらく、すり抜けた発光体を見ていると、はるか後方で光が大きくなっていくのが見えた。
あの状態は何かに当たったようだ・・・

「麻衣、エネルギー弾だが何かやったのか? 広がったのが見えたのだが」
「何もやってないよ、何かに当たったんじゃないかなー」

飛行機が飛んでいるのは見えなかった、と言う事はそれより上にある物になる。

「たぶん、人工衛星に当たったかもねー」と軽く発現する麻衣、さらに「なんという悪運だ!」とか言っている。あくまで自分の責任ではないと言いたげだ。

「まぁいい、次は俺の番だ。防御シールドを展開しろ、反撃が来るかもしれない」
「おっけい」と麻衣は俺から少し離れた。

俺は右手を上げガイルアに向ける、サイコキネシスを展開し圧縮して潰してやろう。そして、力をガイルアに向けて込めた。

数秒経ったが反応が無い、何故だ?

「しかし、何も起きなかった・・・」
「ナレーションいらねーから!」

ガイルアを見上げていると、一部分が黒くなり、その黒い部分が徐々にゆっくりと広がっていった。どうやら、俺の力は吸収されたようだ。

「お目覚めの様だぞ・・・」

俺は防御シールドを展開し、これから起こる激戦に備えた。

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