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15話 伝説の食材 その2


 各自に並べられたトレーに、土鍋とおでんが乗っている。土鍋は沸騰状態で運ばれてきていてグツグツと音を立てていた。その隣には串刺しになっている卵と、こんにゃく、厚揚げに赤味噌が覆いかぶさっている<おでん>が置いてある。
 瑠偉達を見るが、初めて食べるのか微妙な表情をして、各々の感想を述べた。

「伝説の食材<赤味噌>が大量に・・・」と麻衣
「なんか塩分が多そうね・・・」と瑠偉
「火にかかってないのに沸騰しているぞ・・・」と美憂

 まず歴史は古いが伝説の食材ではない、その色から塩分が濃いと思われがちだがそんなことは無い、むしろ東京のが味が濃いと思う、特に蕎麦ツユとか結構醤油が濃いと思う、最後に美憂は土鍋を特性を知らないのか?

「まずは<おでん>から食べて見ろ、そうだな最初はコンニャクかな味噌の味が一番わかる」

 コンニャクの串を手に取り食べる、この味この旨味久しぶりだな。
 前を見ると麻衣と瑠偉は微妙な顔つきだが美憂はおいしそうに食べている、この辺は料理をする人間としない人間の差なのか?

「うん、味噌に砂糖を入れているのか、相対する味付けで旨味が引き立つというわけか・・・今後参考にさせてもらう」
「さすがだな美優、料理人は言う事が違う。あと、土鍋の方は蓋を受け皿にして冷ましてから食べるんだぞ、そのまま食べると火傷するからな」

「え? 受け皿は無いの?」
「瑠偉、これが味噌煮込みの本来の食べ方だ。ちなみに蓋に穴が開いてないのはこの為だ、これ豆知識な」

「ははっ、豆味噌だけに豆知識だね!」
「麻衣・・・ギャグじゃないし、さっさと食え」

 蓋の受け皿にうどんを取分けてすする、ズルズルと音を立てて口に入っていく、このうどんの弾力、そして旨味、最高だな。
 隣を見るとララが、4つに分かれた指から出ている管を、そこら中に刺している。

「ララ・・・味はどう?」
「初めての味ですね、データ不足です、しかし、必ず再現させて見せます」

「お前らはこの味に慣れておけよ、名古屋に住むんだし」
「兼次ちゃん、名古屋確定なの?」

「確定・・・だよ? なっララ?」
「はい、中条さんの言われていた学校は名古屋にあります。
 ちなみに、東京は立ち入り禁止区域で人は居ません」

 ララさんナイスフォローです、瑠偉がジト目で俺を見ているのが、気にせずそのまま食べ進め完食した。あとはララの分食べなければ、と思い横を見ると座ったままララは動かない、どうやら味見は終わったようだ。

 そのままララのトレーと俺のトレーを交換する、土鍋を見ると明らかに冷めている、何とか押し込むか・・・

 ふと前を見ると、3人とも食事を終えスマホを操作している、46年前の現代っ子が居た。

「なぁ、WiFiは繋がるのか?」
「先程から、繋がるようになりました」

 スマホの画面を見ながら瑠偉が答えた。

「麻衣、ゲームか?」
「ゲームアプリは無理だったよー、ネットしてるー」

 麻衣もスマホ画面を見ながら返答した。

「美憂は何を見ているんだ?」
「過去の陸上大会の結果を見てる」

 美憂もスマホの画面を見ながら答えた。

「なんか面白くないんだけど?」
「女子4人と食事出来るだけでも、幸せと思いますが?」

 瑠偉よララを女子に含むなよ。

「普通は会話しながら、楽しく食事をするもんじゃないかな?」
「昭和ですか?」

 確かに、スマホはおろか携帯電話すらなかった、昭和なら会話するのが普通だったな。

「せめて漫画喫茶で必要な事は、やり終えてほしかったな」
「兼次ちゃん、漫画喫茶では繋がらなかったんだよ」

「そうなのか・・・・」

 先程から繋がるようになった、と言う事は、もしや? ・・・とララを見と、変わらぬ姿勢で俺に言った。

「マスターがスマホが使えないと仰せでしたので、先ほど改良いたしました」

 なるほど、この先手必勝の過剰サービスは厄介だな、仕方ないから一人寂しく黙って食うか。いやまてよスマホを改造したのか、と言う事は俺のも当然やってくれてるはずだよな? これで俺のスマホがそのままだったら、キレてもいい出来事だ。

 スマホを取り出し電源をONにして画面を見る、そこには今まで一度も見たこの無かったアイコン<ララちゃん>と言う、見たことないアプリが追加されていた。

「ララ、俺のスマホの改造しているよな? 解説を頼む」

「マスターのスマホは地球に来る前に事前にアップデート済みです。
 内容は並列量子通信が、約毎秒6000ギガバイトで私と優先順位1位で繋がっており、通信範囲は宇宙全域です。

 次に、電池ですが超微量放射線電気変換器を採用し、25万年の連続使用が可能です。
 表示領域は、超高耐久型超極小LEDディスプレイを採用いたしました。
 CPUは65535コアの量子チップとなっており、処理速度は地球最速スパコンの約120倍の処理能力があります。

 次に<ララちゃん>アプリですが、私との会話及び命令ができるマスター専用アプリとなっております。

 では各種装備です。超小型原子時計、高度計、空気成分分析、温度計、湿度計、塩分濃度系、血圧計、血糖値計、体脂肪率計・・・・・」

 ララの説明を聞いていたがまだ続くみたいだ・・・長すぎて全く頭に入ってこない、しかし、なぜ体脂肪率計を入れるのだ? そこのところを詳しく聞いてみたい。

 なかなか終わらないようなので、あとは話は聞き流そう。それから、うどんをすすりながら、ララの説明を単なるBGMとして聞いていた。

「・・・・最後にセキュリティです。生体波長認証を採用しマスター以外電源を入れる事はできません。以上となります」

「うむ、ご苦労であった」
「もったいないお言葉です」

 結局説明を聞きながら全部食べ切ってしまったな、椅子の背もたれに背中を押し付け一息していると麻衣が俺を見ているのに気が付いた、いや正確には俺のスマホを見ていると言う事は・・・

「ララ、麻衣のスマホは、現状からの改造を禁止する」
「麻衣様のスマホ改造禁止、了解しました」

「ふぇぇ、兼次ちゃん酷い・・・まだ何も言ってないのに」

 スマホをしまうと同時に、瑠偉と美憂も同時に使用をやめた。

「帰りますか?」
「帰るか、そして狩りに出かけようか」

 俺達はそのまま会計を済ませ店を後にした。

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