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「お兄ちゃん、だいすき」
「愛?」
愛は、返事をしない。
咳もしない。
「眠ったの?」
「……」
「愛?」
愛の手が、だんだんと冷たくなっていく。
「愛、体が冷えるね」
わかっていたんだ……
本当は……
僕は、愛の体に布団をかけた。
「お前は、布団をきちんと被らないから風邪をひくんだ……」
でも、認めたくなかった。
「愛が16歳になって、俺が17歳になったら結婚しような……
男は、18歳にならなければ、結婚できないけど。
ひとつくらい、神さまもおまけしてくれるよ」
本当は、わかってるんだ。
愛の部屋の扉が、大きく開いた。
「愛!先生連れて来たよ!
救急車も、呼んだって……」
「瞳……
今、愛が眠ったところだよ」
「え?」
慌てて先生が、愛の手首に触れる。
そして、先生は、体を震わしながら……
その場で、声をあげて泣いた。