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「まだ、コイツとヤッてないのなら、俺がヤるように命令してやろうか?」

 気づいたとき。
 僕は、この生徒の顔を殴っていた。

「何しやがんだ!
 テメェ!!」

「黙れ!」

 僕は、何度も何度もそいつの顔面を殴った。

「止めなさい!
 何やっているの!」

 瞳の声で我に返った。
 我に返ったとき……
 水谷さんのすすり泣く声が聞こえて我に返った。

「覚えてろよ!糞が!」

 その生徒は、そう言うと逃げるように去って行った。
 そして、暫くの沈黙が流れる。

「私、奈々ちゃんを家に送って帰るから……
 アンタは、先に帰ってなさい!
 事情は、後でゆっくり聞くから……ね?」

 瞳の声が、とても冷たく感じる。
 でも、その声に優しさが残っていることで僕の心が少し癒やされる。
 でも、アイツを殴った拳が、とても痛かった。
 僕の拳からも、少し血が流れていた。

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