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29話 契約と休息


『地面下10メートルほど掘って頂ければ、お湯が沸き出てきます。それでは、何かありましたら何時でも聞いてください』

 銀色の球体が声を発するとまた俺の後方に追尾してきた。

 ゆっくり降りていきながら下を見ると木が生えていない岩肌のみの地面が見えた、所々から煙が上がっている、地球でよく見かける火山の風景である。
 適度な平坦な場所を見つけそこに降り立つ、麻衣もゆっくり地上に下した。

「見渡す限り岩山だな、ここで全裸になるのか」

 俺は麻衣の全身を特に胸のあたりを見ながら言った。

「やっぱりそれが目的なのね! 見せないから! 脱がないからね」

 麻衣は両腕で胸を隠すポーズをとっている。
 見るより大事なことがある、それ以上の行為だ。

「さっきの返事はどうする?」
「と、とりあえず体験させてくれる? それから結論を出すから」

 よし、と俺は言い麻衣に近づき彼女の額を人差し指で触ると【サイコキネシス限定版】を流し込む。

「あわわわ、頭から全身に温かい物が流れてくる」
「ではその温かい物を意識して動かしてみるんだ、そして右手の掌に集めろ。イメージが大切だぞ」

 俺は拳大の石を拾い麻衣の右手めがけて投げる、麻衣は慌ててその石をキャッチした。

「で、どうするの?」
「次は、その温かい物を石に流し込む、そして温かい物上に移動させる様な感じだ。
 言葉では表現し辛いな・・・」

 はわぁぁと要らない掛け声を出す麻衣、左手を右手の手首に添え体の前に突き出した。
 しばらくそんな状態が続いた、そして麻衣の手に乗っている石は掌から5㎝ほど浮かび上がる

「あがったぁーー!」
「へー、なかなか筋があるな、初めてでそこまで出来るとはな。
 ちなみに今与えた力はそれが限界だぞ、で与える予定の力は10tトラックが余裕で持ち上げられるし当然空も飛べるぞ」

 俺はそう言いながら麻衣の額に触り力を回収すると石は麻衣の掌に落ちた。

「落ちた・・・」と麻衣は力なくつぶやく。
「力は回収したぞ、さて決断の時間だ。
 チャンスは今1回きりだ2度目は聞かないからな、即断できない奴は戦場ですぐ死ぬからな」

「えっ戦場って? 私は誰かと戦うの?」
「いや、昔の話だ気にするな。今は平和だから戦いは無いはず、それに俺の与える力でほぼ無敵だから戦いにすらならない」

 麻衣は目を閉じ黙り始めた、右手をアゴに当て<うぅ~ん>と何度も唸り始める。
 しばらくして覚悟を決めたようで、目を開き俺からすこし目線を外す。

「に、2年の方で・・・」
「よし、よし、いい子だ、可愛がってやろう。それと同時に超能力も与えるからな」

 俺は麻衣の体を浮かせ・・・・
 ………
 ……
 …

 俺達は空中から地上に降り立った、麻衣を見ると若干涙ぐんでいる。

「ひ、ひどい・・・3回もするなんて。初めてなのに・・・しかも空中で」
「一般人は空中とか体験できないぞ? いい体験ができたはずだ、よかったな?
 よし温泉に入ってくつろぐぞ! 麻衣、さがってろ危ないぞ」

 俺は10mほど上昇する、手のひらを前に出しそこに空気を少し集め激しく振動させる、力を得た空気は温度を上げやがて限界を超えた。
 俺の手で直径10㎝ほどのプラズマが作り出される、俺はそれを地面めがけて高速で打ち出すと地面を貫通して穴が開く、空いた穴から水蒸気が噴き出しやが透明のお湯が出てきた。
 お湯が沸いている周辺の土とか岩とか掘り下げていく、直径約5mの露天風呂が出来上がった。

「よし入るぞ! ほれタオル」

 俺は地上に降りながら麻衣にタオルを投げる、何故持ってる! とか突っ込みが来たが準備がいいんだよと言っておく。

「え? え? 一緒に入るの?」

 麻衣は両腕で胸を隠すポーズを取りながら後ずさりする。

「いまさら何言ってるの、すでに全部見たからな?
 それに臭いで瑠偉や美憂に気づかれるからな、必ず入るれよ」

「ううううう・・・しかたないなぁ」

 麻衣はタオルで隠しながら脱ぎ始めた、俺も服を脱ぎ作り立ての露天風呂に入る、ちょうどいい温度だ癒される。

「隠してよ・・・見ちゃった」

 麻衣がタオルで隠しきれない物体を辛うじて隠しながら入ってきた、肩までつかるとフーと息を吐いて目を閉じて近くに岩に背を預ける。

「場所は覚えたから、次回からはテレポートで来るぞ、そのうち瑠偉と美憂もつれてこよう、エアーシャワーじゃ気分的によくないだろ」
「覗くつもりなんだ、そして次回もここでするんだ」

「こんな隠れる場所の無いところでは覗けないからな? その前に紳士は覗かないからな」

 ったく、覗く前提で話を進めるなよ。
 俺はお湯につかりながらワームホールの作成エネルギーをどうするか考え始める、ふと見上げると地球の太陽より大きい恒星が空に輝いているのが視界に入った。

「ふふふ、あれを頂くか」
「な、なに? 後ろはダメだよ!」

「ず、すいぶん想像力が豊かだな、残念だが後ろに興味はない。
 先に上がるぞワームホールの作成を試す」

 俺は温泉から出てタオルで水分をふき取り服を着て靴を履く、近くに麻衣が居るし安全のために空中で試そう。そのまま空を飛び20mほど上がった所で静止し全身の力を前に出した手に集中させる、空中浮遊と帰りのテレポートの余力を残し全ての力を注ぎこむ。
 テナに貰ったイメージ通りに力を動かしワームホールを作成を開始する。

 俺の手の上に直径1cm程度の黒い円状の物が出現した、それを横から見ると線上になり見えなくなる。どうやら成功したようだ、本当に穴が開いているように見える。しかし穴は少しずつ小さくなっていくのが解った。
 ほぼフルパワーで1cmなら恒星のエネルギーを貰えばいけるはず、問題はテナどうやって説得するかだな、恒星が無くなるかもしれないからな。
 俺は地面に戻ると麻衣はすでに服を着て待っていた。

「出来たの? 帰れるの?」
「出来た事は出来たが、直径1cmだったな。
 人間は通れない、でも方法を見つけたから大丈夫だ。・・・若干問題があるが」

「その問題が気になるけど」
「よし戻るぞ」

 俺は麻衣のアゴをつかみ部屋に戻るテレポートの準備をする。

「アゴはやめて! 恥ずかしいから」

 温泉で体温が上がっているのか? 純粋に照れているのか麻衣の頬は若干赤くなっていた。
 その姿勢のまま俺と麻衣はテレポートで部屋に戻る。

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