20話 男の娘は、かわいいね
俺は腕組をして難しい表情をしながら彼女達を見ている。
「さて、どうする?」
「私達に聞かれても困りますが・・・
てっきり心と心で会話ができるものと思ってましたよ」
瑠偉は呆れて表情で言い返す。
「言語理解のスキル持ってなかったの?」
と麻衣と言ったが、スルーして瑠偉の返答に続けた。
「会話系を使える能力者が相手なら会話できるんだがな・・・
普通の人間の考えていることは解らないな、詳しく言えば脳の電気信号は複雑だから理解不能で解読できないんだよ」
「都合のいい時だけ、現実的ですね」
と瑠偉はため息交じりに言った。
「だから安心しろ瑠偉、お前のエッチな妄想は読み取れないからな。
だから、遠慮なく妄想しくれていいぞ」
「し・て・ま・せ・ん・からぁー」
瑠偉は俺に殴りかかってきそうな姿勢で右拳をプルプルさせ睨みでいる、それを見て俺はすぐさま目線を逸らした。
「しかたない、美憂! 頼めるか?」
突然振られ何か嫌な予感がしたのか顔が引きつっている美憂
「な、なに?」
「気合のジェスチャーで会話を頼む、何なら赤いタオルも付けよう首から掛けると力が出るぞ・・・・たぶんな」
美憂は「うっ」と聞こえそうな表情を見せしばらく考え始めた、そんな美憂を俺は真剣な目で頼みこむ。
「分かった、任せろ!」
美憂はそう言うと右手の拳を胸に当てた、<頼もしいな、脳筋って思っててゴメンな>と心の中で美憂に謝るのであった。
「よかったですねー、私達がいて」
瑠偉は見下すような目線で俺を見ている、まぁ実際役に立ったな俺一人だったらこの惑星の住人に会ったら何をしていいか分からずパニックになっていたかもな。
「なんかゴメンな・・・きちんとお礼はするから、な?」
「はーい、麻衣はロメオちゃんの限定フィギアが欲しいです!」
お礼と言葉を聞いて即座に反応した麻衣は手を挙げて俺に要求してきた。
「却下だ麻衣、君は役に立ってないからな」
「えぇぇぇぇぇ、ひどい、ひどすぎる」
と麻衣は頬を膨らましている。
「よし、じゃあ、徐々に高度を下げて侵入だぁ!」
俺はこれ以上お礼の話をしているとあり得ない要求がきそうな気配がしたので、強引に話題を変更した。
自由放置していた飛行機を力で制御し下向きして移動を開始させる。
眼下に広がる円状の地平線の輪はだんだん大きくなっていった。
……
…
制御室と呼ばれる一室で、椅子に座っている女性は動かずひたすら待っていた。
『お知らせしますマスター・テナ=シエル、対象物の高度が下がり地上に接近しています』
静かだった部屋に突然に機械音声が流れた、椅子に座っている女性はしばらく考え込んだ、そのまま無表情で答える。
「ここに迎え入れ、友好的に接します。
リヴァララ、偵察機を向かわせてください。・・・そうね人型がいいわ」
『了解しました、人型偵察機を向かわせます』
「リヴァララ、情報共有モードにしてください」
『情報共有モードに移行します、マスター・テナ=シエル』
「それでは、偵察機の視野映像を出してください」
その言葉と同時に部屋中央に巨大な半透明の白いスクリーンが出現した。
「それでは対象物の座標を特定して、直接空間移動してください」
『了解です。・・・3・・・2・・1・・・
対象物から10メートルの位置に到着しました』
女性はスクリーンに映った飛行機の映像を丹念に観察している
「円筒状の物に翼がついていますね、これは宇宙船ではないですね。
もっと近くまで接近してください」
映像は徐々に拡大していき人影らしき者が窓から覗いているのが確認できた。
「では、接触し格納庫に空間移動させてください、あとは私が対応します」
『了解しました。ご武運をマスター・テナ=シエル』
女性はすぐに立ち上がり、部屋から出て廊下を歩いていった。
…
……
「ちょっと、見てくれ。外に人がいるぞ」
と美憂が目を輝かせながら外を見っている。
美憂の言葉を聞き俺も外を見る、そこには身長が150cmほどで肩までの長さをした青い髪に青い瞳の少年っぽい体つきをした人間らしき者が浮かんでいた。
「ずいぶん人間ぽいですね、髪の色以外は・・・」
瑠偉は口を開けてその少年を見ている。
「男の娘きたーー! かわいいよーー! 抱きしめたいよー!」
と麻衣が言っている。
「麻衣、その男の子は
「そうだよ、男の娘は可愛んだよ! 一生このまま見ていたいよー」
麻衣はそう言いながら両手を合わせモミモミしている。
3人は男の娘と呼ばれる物体を、男性アイドルを見るような態度と目で見ている。
最近は、男の娘がモテるのか? まったく理解できんな・・・
外に浮かんでいる少年は飛行機の機体に近づき、俺達のいるすぐ外までやってきた。
「近くで見ると、さらにカワイイィィー」
麻衣はさらに窓枠に顔を押し付けて男の娘を見ている。
するとその少年は右手出して機体に触れた、と同時に飛行機が小刻みに上下振動を始める。
おい、おい、まさか、いきなり攻撃してくるのかよ。
危険な感じがした俺は即座に立ち上がり、窓際から中央通路に移動した。
「おい、お前ら窓際から離れろ! こっちに来い防御するぞ!
・・・・って聞いてねぇーーーーー」
俺の声は彼女達には届かず、そのまま外の男の娘を見ながらニヤニヤしていた。
「ったく、見捨てるぞ」
呆れた俺は彼女達に聞こえるギリギリの小声で言ってみた。
「「「ええぇっ?」」」
彼女たち一斉に振り向いた、その時俺の体に妙な感覚が流れ込んできた。
「この感覚は・・・・テレポートか?」
俺達の乗った小型飛行機は青髪の少年とともに姿を消した。