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――屋敷
それは、セロ12歳の誕生日。
セロの父親は貿易の仕事をしており成功者と言われていた。
セロの父親が子供のころ憧れた仕事……
それは、ヒーローだった。
しかし、セロの父親にはメロディを奏でる能力がなかった。
それ故、能力に目覚めたセロに父親は大喜びだった。
「今日は特別な誕生日だ。
君には、特別な誕生日プレゼントをあげよう」
そういってセロの両親と妹はデパートに向かった。
「特別なプレゼントってなにかな?」
セロは、オトナに尋ねる。
「さぁ、なんでしょうね?」
オトナは、楽しそうに笑う。
「オトナ、なにか知っているの?」
セロがそういうとオトネがいう。
「そんなこと姉さまが言えるはずなかろう?」
オトネが、そういって胸を張る。
「こら、オトネ!
ご主人さまに向かってその口のききかたはやめなさい!」
「てへ。怒られちゃった!」
オトネが舌を出して笑う。
「……ん?」
セロが首を傾げる。
「どうかなされました?」
オトナがセロに尋ねる。
「なんか今地震があったような」
セロが首を傾げる。
「地震?んなもんあるかよ」
オトネがケラケラと笑う。
「オトネ!」
「いいよ、別に。
今どき主人とメイドなんてエロゲーだけの世界だし」
セロがそういうとオトナがいう。
「そういうのどこで調べたのですか?」
「セロのベッドの下の沢山のエロゲーとAVがあるぜ?」
「オトネは、どこでそういうのを調べたのですか?」
「……ひ・み・つ」
オトネがケラケラと笑う。
すると執事が部屋に入ってくる。
「あら?セバスチャン?どうかなされました?」
「お逃げくださいませ」
執事のセバスチャンがそういってセロの方を見る。
「ん?」
セロが首を傾げる。
「お逃げください。
先程、ご主人さまが亡くなったとの情報が入ってきました」
「え?亡くなった?」
セロにはなにが起きているかわからない。
「ヒーローの暴動に巻き込まれ、ご主人さまと御婦人。
そして、みさきさまが亡くなられました。
瓦礫の下敷きになり即死だそうです」
「貴方はどうしてそれを知っているのですか?」
オトナがセロの前に立つ。
「それは……それ――は――あ?」
セバスチャンの身体がガクンっと崩れる。
「きゃは!この玩具。
あっというまに壊れたわね。
老体に鞭を打ったからかしら?」
だみ声で綺麗な容姿の少女が現れる。
「貴方は、アインのクレイジー・クレイジー!」
「アインって言うな。テオスよ」
クレイジー・クレイジーが笑う。
「さぁ。今回の招待客。
穴あけヒーローのジャム・ジャッキンの登場よ」
ジャムが、ゆっくりと現れる。
「や……め……ろ……」
ジャムが抵抗を示すがクレイジー・クレイジーの糸からは逃れれない。
「やめろ……親父」
幼きジャキが、そういってジャムの前に立つ。
「ジャキ……逃げてくれ!」
ジャムがそういって手を大きく振りかざす。
オトナがジャキの身体を持ち上げると大きく後退した。
「クソが。
俺はヒーローだぞ?」
ジャムがクレイジー・クレイジーを睨む。
「だからなに?今は私のお人形さんでしょ?
ここのメイドきれいな子が多かったから……
遊びがいがあるわ」
クレイジー・クレイジーが嬉しそうに笑った。
「お前に操られるくらいなら!!」
ジャムが、ジャキの方を見る。
「親父?」
「あとは任せた!ジャキ!」
ジャムは、自分の胸に手を当てると能力を発動させ自害した。
「あら……つまんない」
クレイジー・クレイジーがそういうとため息を吐いた。
「てめぇ!」
ジャキが怒鳴る。
「やめなさい」
オトナが、そういってジャキを静止させる。
「あ、ちなみに貴女と貴女」
クレイジー・クレイジーが、オトネとオトナのほうに指を向ける。
「これプレゼントよ」
「プレゼント?」
すると丸いボールがふたつあしもとに転がる。
ころころころころ。
そして、オトネは言葉を失う。
なぜならそのボールは、ボールではなく。
ふたりの父と母の頭だったからだ。