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「この力は、授かりもの。
穴あけのメロディの力だ」
ジャキが答える。
メロディの力は、複数人で聞いた場合。
稀に複数人に能力が授かることがある。
人々はそれを共鳴と呼んだ。
「ジャキくんは、僕のことを知っているのかい?」
「ああ、お前の親を殺したのは俺の父親だ」
「そっか」
セロはため息を吐く。
ジャキに当たっても仕方がない。
そう思っていた。
「俺はお前に謝らなければならない」
「君と父親のことは関係ないだろう?」
セロは、自分にもそう言い聞かせた。
「違う。
俺はお前の記憶に穴を開けた」
「記憶に穴?」
「穴あけのメロディは記憶も操作する。
いわゆる思い込みの力なんだ」
「んー、よくわからないな。
暗示の力で胸に穴が開くの?」
「俺は複数の能力を持っている。
記憶操作のメロディと穴あけのメロディ」
「複数の能力者か、それも珍しいね」
「ああ。だが……」
ジャキがジルの方を見る。
ジルが唸りながら起き上がる。
「え?胸に穴が空いているのに?」
セロが驚く。
「とりあえず俺が死ぬ前に記憶を返す」
ジャキがそういってセロの胸を触った。
「あ……」
セロの頭にいろんな記憶が甦る。
そして、全てを思い出した。