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046 チッタの町にて

チッタの町にて

反乱を起こした騎士隊員たちを全て捕縛し 隊長と副隊長に引き渡した後、ミキたち一行は、何事もなく次の町である『チッタ・センザノーミ』へ到着したのである。

「そういえば、この町には 凄腕の鍛冶職人がいるそうですぜ」
「あぁ、おいらも それ聞いたことあるな」

「えっ、ほんとうですか」

「若、興味がおありですか?」

「興味があるって言うか その…ですね。あるものを 作って貰いたいんですよ」

「ほぉ~」「へぇ~」

「なんか変なこと考えてませんか?これです。これ」
そういうとミキは 懐から扇を取り出して 二人に見せた。

「これは 僕の愛用の品なんですが皇都にいる間は、結局鍛冶職人さんを探すとか そう言うのできませんでしたし…。で これって 普通の金属で出来ているんですよね。あまり打ち合いとかで使ってしまうとちょっと。なので 新しいのをひとつ・・・」

「ちょっと持たせていただいても?」

「えぇ、いいですよ」とヒサに扇を手渡す。

「!」
「なんちゅう重さ、若が あまりにも軽やかに振ってるもんだから もっと軽いものかと思ってやしたが…。タケに渡しても?」とミキに確認を取り、タケにも渡す。

「!」
「うへぇ。ダンナ、ダンナ。以前、扇を手に ごろつき共と戦ったことがありやしたが あのときもこれをお使いで?」

「えぇ、そうですね。基本、僕が使うのは、魔法とこの扇です。たまにショートソードでしょうか」
「なので さっきの話し。く・わ・し・く。詳しく教えてください」

「あぁ、あっしもそんなに詳しいってほどじゃ ねぇんですがね。あっしが 傭兵をやってたころに もしずっと続けるんならそろそろ 武器を鍛え直すか、新しくしようかって…そういやタケもそのとき 同じ事考えていたんだよな」

「そうだったなぁ」

「で、そんときに 小耳にはさんだのが、この『チッタ・センザノーミ』の町に住む鍛冶職人の確か…シュミットって名前だったよな」

「で、そのシュミットさんは 今は 何処におられるのでしょう?」

「えぇ、それがですね。居場所を聞かずじまいだったんですよ。結局、おれたちゃ 皇都の方に行っちまって…まぁ その結果として若の護衛役として勤めるようになりやしたからね。武器の方も 新調してもらいやしたし」

「そうだなぁ、おれも アニキと同じで居場所を聞くところまでは…」

「そう…ですか」ちょっとしょぼくれたミキが 可愛く見えるのはここだけの話しである。

「まぁまぁ、この町に住んでいるのは 確かですからさちょっとあたってみましょう」とヒサ。

「そうっすよ、ダンナ」

「ですね。でも それよりも先に…今日の宿を探さなくちゃですね」

「この町で、馬車預かり所のある宿は五件ほど」

「まぁ いままでが 良い宿にあたりましたからねぇ。ここでも そうなるといいですね」

「おぉ、あそこなんて どうでやしょう?」とタケが 指し示した方向をみると…コスプレでしょうかね、肌色部分の多いコスチュームを身につけたお姉さんが 客引きをやってるようです。

「おっ、その反対側にも宿屋が あるようですぜ」

「うーん、じゃ どっちもなしで」

「えぇ~、な・な・なぜでやしょう」

「出来れば 静かな方がいいじゃないですか、きっとどっちの宿を選んでも 喧噪が絶えないって思いますよ。なんとなくですが あっちの客引きやってる宿の方は、宿もそこそこ、料理もそこそこ、サービスもそこそこ。全部そこそこなんですよ。」

「いや、それは ないんじゃないかな」とタケが言うも…

「そういや 昔っからタケ、おめぇが 選んだ宿って受付のねぇちゃんは いや 受付のねぇちゃんだけ別嬪で あとは 女将にしたって 料理にしたって 全部そこそこの宿が多かったよな。なかには サービス最悪の、料理最悪の宿もあったよな」

「もしかして…おめぇ」

「そうっすよ、受付のお姉さんとか 外向きのお姉さんに目がくらんで 選んだことがわりとあったっすよ」

「やっぱりか」

「まぁ それはいいや」

「で、若 どうされやす?」

「ちょこっと町の人に聞いてみるってのもありじゃないかと」

「うっし、ちょっと聞いてみやしょう」

「そうですね、今回は 僕も聞いてみますね」


しばらくして…
「あっしが 聞いてきたのは ここから 少し西へ向ったところにある『シュタインベルガー』って宿でやす」
「おっ、それ おれも聞いてきたぜ」

「そこは、僕も教えて貰ってきました。なんでもすっごく美味しい料理が食べられるそうですよね」

「「うめぇ酒が飲める」」

「って、あれ。お酒ですか」
「「料理ですか」」

「酒も料理もいいんじゃ そこしかないですよね」
「「だな」」


というわけで、到着しました。
街人十人に聞いてみました、『チッタの町』で うまい酒とうまい飯を食わせる宿といえば 
『シュタインベルガー』しかないということでしたが…はたして。

「すみませーん、宿泊をお願いしたいのですが」

「ようこそいらっしゃいました、ご宿泊でよろしいんですね。夕飯、それから朝食は どうされますか?」

「どちらもお願いします、それと 一人部屋一室と二人部屋一室で お願いします」

「あと、ちょっとお尋ねしたいのですが」

「はい、なんでございましょう」

「このチッタの町にいるっていうシュミットさんって鍛冶職人さんに お願いしたいことが ございまして」

「シュミット…シュミット・マニスカルコ様のことでございましょうか。それでしたら 当宿でも小物類は 全てシュミット様のところへお願いしておりますので ご紹介できると存じますが」

「ほんとうでしょうか、是非お願い申し上げたいです」

「はい、では 明日の朝食時に当宿からの紹介状をお渡ししますので…それと こちらが お一人部屋一〇六号室の鍵でございます。こちらは お二人部屋一〇七号室にございます。上の階は ほとんど埋まっておりまして護衛の方とお部屋が近い方が宜しいかと存じましたので」

「はい、お気遣いどうもありがとうございます」

「では、案内のものを呼びますので しばらくお待ちください。誰か…」


「ここの宿もなかなかよさげですな」

「そうですね。とてもシックな感じがして。あとあの支配人さんでしょうか?良くできたお方のようです」

「あぁぁ。」とひとりつまらなそうな雰囲気を醸し出しているのは タケである。

「タケ、いい加減諦めろよ。いやね タケの奴、この宿に 年頃の綺麗なお姉さんがいないとわかって…さっきからああなんですよ」

「タケさん、タケさん。今夜は ヒサさんとタケさんにエールをたっぷりとごちそうしますので」

「なんですと、エール飲み放題!」

「いえ、そこまで言ってませんが」

「若、よろしいんですか?」

「まぁ、今回は 道中のこともいろいろありましたしね、お酒でも飲んで ゆっくりしてくださいまし」

「「ありがてぇ」」


さて、『チッタ・センザノーミ』でようやく宿を見つけたご一行。ミキは、鍛冶職人の『シュミット・マニスカルコ』に無事あうことが出来るのか、そして扇を新調することが出来るのか…ということでしょうか。


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