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020 なんでこうなった!!

「「皇帝陛下~!!!」」

「やっぱり」


「落ち着きましたか?」

「落ち着くとか 落ち着かないとかじゃねぇ」
「そうだよ、ミキちゃん」
「って いや 待て、待て、待て・エリステル陛下が お母様だと?!」

「はい」と邪気のない笑顔で微笑むミキ。

「じゃぁ、なにかい。こないだのお披露目式で 紹介されたっていう…」
「おい、アニキ。そういや あの御子さまの名前もミキって言うんだったんじゃ?」
「「もしかして」」

「あぁ~、そうなりますよね」
「でも、でも、僕は あくまでただのミキですよ」

「ですよね?母さま」

(言えない、全然言える雰囲気じゃない、将来、わたしの後を継いでこの国と帝国全般の代表になってなんて…)
「う・うん~ そうだよね。ミキは ミキだもんね~」

「なぁ、いま陛下が ビクってしてなかったか?」
「うん、なんかビクってしてたような」
「この方が あの陛下なのか」「なんだか ただの…」

「ただの?」

「「あぁ、ただの親ば…って 陛下」」

「うん、言いたいことは 解るから いいですよ。実は 宰相のガストールや侍女のクラリッサたちからもよく言われてるんですよね」

「でもね、ほんっとにこの子が、この子のことが 大切なのよ。()くしたくないの。親バカって言われてもね。」
「だけど約束しちゃったのよ。次の武道大会で 前回の大会優勝者に 勝てたら ミキの、あなたのひとり歩きを許可しますって」
「それがね、あっさり勝っちゃったの。ったく 不甲斐ないったらありゃしない。何がこの国最強よ!近衛騎士団長なんて ご大層な肩書きもらっちゃって」

「母さま、母さま!殺気・殺気。押さえて」

「あらら、ごめんなさいね」と何事もなかったかのように微笑むエリステル陛下である。

「いや、まぁ」(ビビッタぜ、さすが竜皇国、そしてリンドブルム帝国皇帝だよ)
「うん、ビビッタ」

「そんなこと言って」(さすがね、2000の領兵をものともしないだけのことはある。ひょっとするとうちの近衛騎士団長より強いかもね。しかも実戦に強い傭兵。さて そうなると ミキのためにも護衛役、引き受けてもらわなくちゃね)

「それで ミキから聞いているとは思うのだけれど?」

「護衛の件でございますでしょうか」

「いいわよ、そんな堅苦しい言葉遣い」

「ですが…」

「いいのよ、ここにいるわたしは ただの親バカのルージュよ」
「ミキもね、そんな堅苦しいのは、苦手なのよ」

「「はっ!」」
「それでは…」
「実のところ、陛下とお会いして話してみるまでは おいおい こんな皇城に連れてきてくれちゃって。どうすりゃいいのよ?などと思っておりましたが」

「…ましたが?」

「はい、じょう・もとい ミキちゃんのお母様ってのが まぁ そのなんと申しましょうか。そのへんの何処にでもいる母親と変わらない、ただただ自分の娘…」

そのとき一瞬 絶対零度の領域が生まれたかのような気がした。のだが すぐさま それは 収まった。

「ただただ自分の子が 可愛い母親の願いであったと。そして その母の願いを子が叶えようとしているって判りやしたんで。なっ?タケ」
「「護衛の件、承ります」」

「「ほんと?」」
「ほんとに、ほんとです?」

「もちろんだ」

「よかったぁ」
「よかったわね」と、きゃいきゃいしてる二人はまるで母と娘のような絵姿であったと後にヒサは、語っている。

「ところで ねぇ、あなたたち、ミキから聞いていないの?」

「何をです?」

「ミキ?あなた まだ話していないの?」

「あれ?話して……ませんね」

「だからなのね、あなた さっき一瞬だけど この領域を絶対零度にしかかったのよ」

「そうみたいですね」

「「?」」

何の話かおよそ見当もつかない二人はおいてけぼり状態である。

「あのね、ミキって とってもとっても可愛いでしょう?美人でしょ?美少じ「言わせないよ」」

「えぇ、その通りでさ、なんで そんな方が 俺たちのような強面の傭兵とこんなに自然に話してくれてるってのが不思議で…」

「あのね、ミキって 実は 男の娘」
「ジロっ!」
「男の子なのよ」

「ぶっ!」「いやいや」
「陛下、いえ エリステルさま そりゃ、今日一番のジョークでさぁ」
「あっしたちの緊張をほぐしてくださろうって お心遣い感謝ですが」

「違うのよ、ほんとの、ほんっとうに、男の子なの」
「わたしも 他のみんなもね、時折間違いそうになるのだけど」

「母さま!あとで その話じっくり聞かせてもらいますよ」

「ほんとなん?ミキちゃん」

「はぁ、恥ずかしながら」

「「うそだぁ」」

「だって、だってその衣装もそうだし」
「はっ!もしや そっちの趣味が?」

「馬鹿なこと言ってないで、僕は ノーマルだぁ~~~!」
最後は、ミキの切ない訴えで この場は 収まったようですね。


「では、改めまして。護衛の件、よろしくお願いしますね」

「「おぅ、任せろ」」「「でございます」」

「いや、無理しなくていいですから」

「うーん、でも彼らには 今後のことも考えて 多少の振る舞い方は 覚えていただいた方がいいかもしれないわね」

「そう、なんですか」

「ミキには、今後 他の王国とかにもわたしの名代として行ってもらうこともあるかもしれないでしょ?」

「そうですね」
「だとすれば、お二人にも 少し面倒をおかけするかもしれませんが…」

「えぇ、そうね。宮中、皇城内での振る舞いを覚えていただく必要があるわね」
「あと とっても嫌なことだけれど 他の国、この国ですら いまだに身分至上主義な官が残ってもいますからね」

「そういうことですか」

「うん?身分が どうしたって?」

「「こうしましょう」」


「「なんでこうなった!!」」
「いや だからなんで こんなことになるんだよ」

その日、「竜皇国」城内、謁見の間にて 略式ではあるが 二人の子爵が誕生しようとしていた。

「では、ここに ヒサ・ヴェルナール・フォン・ブラウン子爵とタケ・マクシミリアン・フォン・メルバーン子爵の誕生を宣言する」

「お二方、陛下の御前へ」宰相のガストール言葉に従い おそるおそる足を踏み出すヒサとタケである。

「「はっ!」」
宰相のガストール言葉に従い おそるおそる足を踏み出すヒサとタケである。

「両名とも 今日より以降、この国の子爵として ミキをよろしく頼む」

「「はっ!」」


「とんでもないことになっちまったな」
「あぁ、昨日と今日で、いや 朝と夕で おもいっきりかわっちまったな」

「逃げるか」とヒサ。
「それもいいけど…」とタケ。
「あぁ、それよりも いまの方がずっと面白い」
「だな」
「あぁ、おれたちに出来ること、まだまだあるみたいだぜ」

「けどよう、あの嬢ちゃんじゃなかった。ミキちゃんって 近衛騎士団長を瞬殺出来るって話だろう。護衛なんているんか?」

「おまっ!そこが 親心ってやつじゃねぇか。それに…おそらくだが」

「うん」

「あの嬢ちゃん・でない ミキちゃんな…きっと おもしれぇこと考えてんだ。おれたちの想像の斜め上行くようなな」

「そっか」

「あぁ」

ようやく、純粋なひとり歩きではないものの、ミキの思いが一歩前へ進む環境が整ったのでした。
次回からは いよいよ皇城を出て 活躍すると……いいなぁ


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