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019 開けてビックリ

開けてビックリ

「もうすぐ着くと思います」

「なぁ?」

「あぁ」

「「いやな予感しかしねぇ」」

「なぁ、ミキちゃんよぉ」

「なんでしょう?ヒサさん」

「このまま行くと、皇城に着いちまうような気がするんだけど」

「そうですね、たぶん合ってますよ」

「もしかしなくても ミキちゃんの親御さん?お母上さまって お城に勤めていたりするのでございますでしょうか?」

「変な言葉遣いになってますよ、そんなに緊張しなくても大丈夫です」

「あぁ、そっか。うん そうだな。で、お城に勤めてるのかな」

「どうなんでしょう、お城に…勤めては いないって思うのですけど」

「ひょっとして お父上が お城に勤められていて その奥方さまもご一緒に?」

「いえいえ、僕には 母さまだけですが…」

「いや、わりぃ。つまんねぇこと 聞いちまったな」
(やべ、父親は いないのかもしんねぇ。くぅ~ 健気だね)

「いえいえ、大丈夫ですって。」(竜の生態なんて、まして 古竜の生態なんてほとんど知られてないだろうからね~)

「あっ!到着ですよ~」

なんやかやと 話しているうちに 皇城へ着いていたようです。

「こちらで ちょっと待っていてくださいね~。通れるように話してきますので」

「門番さ~ん、門番さ~ん」

「うん、どうされた?」

「はい、えっと(あれ 顔見知りの門番さんじゃないよ、困ったなぁ !そうだ)宰相のガストールさまにお目通り願いたいのですが」

「うむ、して何か 紹介状のようなものを お持ちですかな」

「あ~、それは 持っていないのですが ガストールさまに ミキがお会いしたいとお伝えしていただければと存じます」

「ふむ、この時間帯だと ガストールさまは…」

「いまの時間ですと ガストールさまは 離宮の方へおられるかと…」

「ふむ、しばし待たれよ、すまぬが お主、離宮の方へガストールさまの不在を確かめてきてもらえぬか。その間 わたしは こちらの者に 訊ねることがあるでな」

「よかろう、離宮だな、行って参る」

(朝、慌てて出てしまったから 何も持たずに出てしまったよ。裏門から 入っても良かったけれど それは 何か違う気がするのですよね、お二人に 母さまと会ってもらう。それなのに 裏門からというのはね)

「して、ミキ殿と仰ったかな、ガストールさまへは 如何様な理由で?」

(理由…理由…そうだ)
「はい、こちらに仕立て上がっております服を、お城のガストールさまへお渡しするようにと 皇都の『服屋』さまより預かって参りました」

「ほぉ、中を確認しても?」

「はい、どうぞお改めくださいまし」

「うむ、確かに服であるな。もうよろしいですぞ」
(しかし、このものの顔 どこかで見たことあるのだが…思い出せぬのぉ)

(でも さすがですね うちの門番さんたちは よくある物語のように身分や身なりなどで 決めつけたりするのでなく きちんと相手の話を聞きながら また言葉遣いも丁寧です。それとも たまたま?今日の門番さんだけ…まさかですね)

「そろそろですな、っと これは…宰相さま」
(いきなり宰相ガストールさまが 現れてしまったぞ、いや あちらには 陛下直轄のクラリッサさまに…あのかたは もしや…)

「ミキ殿、あなたという方は…みな はらはらしておりましたぞ」
現れたのは 宰相ガストール、クラリッサ、そして エリステル陛下 その方である。さすがに陛下は こっそりと隠れていらっしゃるようだが。

「(小声で)ただいま~、そして ごめんなさい」と頭を下げるミキである。

「はぁ、かないませんな、ミキ殿には。して あちらに おられる方々が、陛下と本日お会いになるという?」

「はい、『雷鳴の響鬼』のお二方です、(小声で)母さまに 会っていただこうと思いまして お連れしました」

「ええ、陛下より伺っております」
「あちらに、陛下がおられますが…あまり この場で 長話してしまいますと 待ちきれなくなられた陛下が 飛び出してきそうですので…どうぞ あちらの方々を お連れください」

そのころ 宰相に 確認を取りに行った門番くんと ミキと話していた門番くんは
「宰相殿をお連れしてまいった…って 何が起きてる?」

「それが 拙者には 何がどうなっているのやら解らぬ、解らぬが…あのミキという御仁」

「「何者であろうな」」
確かに 門番くんたちが 解らないのも無理もなく ミキはこの三年の間、皇城と離宮から ほとんど出ることもなく また出かけるときも護衛を連れ しかも乗り物の中に 隠れてしまっており その姿を見た者はおらず、先だってのお披露目式があるまでは ずっと秘匿されてきたようなものであったのである。

ただお披露目式にて ミキの姿を見た者が そろって言ったことは「陛下のご尊顔に よく似ていらっしゃる」とそう 言っていたそうな。

ただし門番くんなどは はっきり陛下を目にする機会もなく さきほどの「どこかで見たこと…」のようになってしまうのでした。

……
「では お二人を 呼びにいってきますね」

「お願いします」


「ガストール、我は 離宮の方にて 待っておるぞ」

「まったく、あなたという方は…表の護衛を連れずにお出かけになったものだから とはいえ こればかりは、陛下にお慣れになっていただくしか…まぁ 今後はあのものたちに任せられれば その心配も多少はまぎれると今のところは信じておきましょう」

「これは、皇城内のものたちにももう少し ミキさまのことを知らしめねばなりませんかのぉ」
(お披露目式が 終わったといっても そのお姿を見られたのは 上位の官達と各国のもの来賓者、たしかに魔道具も用いて 城内の様子を映しだしはしたものの肝心のミキさまのお顔までははっきりとせず)

「勘弁してください、ガストールさん」

(もしやあの映像の不備…ミキさまが関わっておられるのか)
「いえいえ、今後のこともありますからな」

「あはは、そんな必要は…」

「ミキさま~、ミキさま~」と叫びながら近づく薄紫の物体ひとつ、クラリッサである。

「はい、ミキですよ、って うぉっと」いきなり飛び込まれてびっくりのミキである

「なぁ、おい」「うむ」
「「拙者達、このままここにいても 問題ないのか」」
「あとで、こっそり…」「あぁ」と首に手をやり 暗殺されるのポーズをとる門番くんたち
それは、そうである。陛下直下の侍女であるクラリッサが どこの誰とも知らぬとびきりの美少女に?アタックしているのである。

「お主たち、ご苦労であった。いましがた 目にしたことは 内密にな」

「「はっ、かしこまりまして」」

「それでは こちらのミキ殿とこの『雷鳴の響鬼』三名、入場しても」

「「もちろんで ございます」」


「ミキちゃんさぁ、どこへ行くのかな?」

「はい、このままお二人には 離宮の方へ行っていただきます。そちらで 母さまが待っているはずなので」

「離宮って、離宮って」
「どうしたタケ」

「離宮って たしか皇室やら皇室やらのお偉いさんたちの離れみたいなもんだろ」
「うん?そうだったのか」
「そうだったのかじゃねぇよ」

「あっ、着きましたよ~」
「ちょと待っていてくださいね」
「母さま~、ただいま戻りました」と扉を開けると…

そこで ヒサとタケの二人が目にしたのは…

「ミキ~、ミキ、ミキ。寂しかったぞ」と案内してきた美少女?に 思いっきり飛びつき抱きしめるひとりの…こちらは 美少女ではないが とびきりの美女である。美女と美少女?の共演。眼福である。

「なぁ」「うん」
「あれって もしかしてミキちゃんのいう母さま?なのか」

「母さま、母さま!」

「うむ、すまぬ」

「「あっははっは」」
「ミキちゃん、あまり親御さんに心配かけちゃだめだよ」
「まぁ なんだ。初めまして、傭兵『雷鳴の響鬼』がひとり、ヒサと申します」
「同じく、タケと申します」

「わたしはミキの母でルージュ・エリステルといいます。このたびは、うちのミキが大変お世話になりました。一度お会いして、お礼を言いたかったのよ」

「ルージュ、エ・リ・ス・テ・ル…さま」
「なぁ」「うん」
「「もしかして」」
「「皇帝陛下~!!!」」

さすがに、この展開は 幾千の敵をものともせず戦い、勝ち抜いてきた歴戦の傭兵といえど思いもよらなかったようである。

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