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012 なかなか進みません

「あと五分くらいで 着くっていうのに…」

人の通りがちょうど途切れた辺りで、おもむろに振り返り 後を付けていたであろう男たちに 声をかけてみる。他の人を巻き込んじゃ大変だものね。

「何かご用でしょうか?」

突然声を かけられ慌てる男たち。見るからにガラが悪そうなのが 四人ばかり。みなさん、強面だし身なりも冒険者風?って この世界に冒険者っているのかね、後で聞いてみよっと。などと暢気なことを考えているミキである。リコッタの方といえば、何故か わくわくしている様子でいったい何を考えていることやら…。
(これは、見るからに小悪党って感じですね。この皇都に、ショコラ・ド・コンティニューの関係者に狼藉を働くものは、全くとはいわないけど 居ないはず。それに あの格好、どこか別のところから来てまだ日も経っていない感じ。傭兵くずれ?それとも…)などと案外、まともなことを考えていましたね。
「はぁ、ここで この男たちに襲われているわたしたちを 颯爽と助けに現れるかっこいい人、あらわれないかなぁ~」
って、やっぱり脳天気なことを 考えて居るではないか。

「リコッタさん、リコッタさん 心の声がだだ漏れです」

「おぅおぅ、ねぇちゃんたち。オレたちゃ、きょうこの皇都に来たばっかでよう、この土地にあんま詳しくないんだわ。」
「そうなんだよ、でな」
「出来ればでいいんだが この皇都を ちょっとばかし 案内して欲しいんだがな」
「んだ、んだ」

「いえ、かなり前から 着いてきてましたよね?」

少しも悪びれることなく、
「気付いてたのかい?わりと そっとついてきたはずなんだけどなぁ」
「俺たちや、見ての通り 格好もほら 旅の傭兵くずれみたいな感じだしよ、ねぇちゃんたちゃ見たところただの町娘ってかんじじゃないしな」
「あぁ、あのおっきな城から出てきた感じだったし」
「んだ、んだ」

「えっと、ほんとに案内して欲しかっただけ?なのでしょうか」

「「「「うんうん」」」」

あ、そこは みんな同じ返事なんだ。
「なら、もっと早くに 声をかければ いいのでは?」

「いやな」
「それがよう」
「俺たち見ての通り、強面なツラしてるだろ、でな 声をかけた瞬間、みんなに 逃げられちゃってよぉ。」
「んだ、んだ」

「はぁ、そぉいうわけですか」
「ほんっとぉ~に それだけなのかな、かな~」
ずいって、身体をのりだし リーダーっぽい男の顔を じっと見つめるリコッタ。
その眼力?に 男もタジタジになって

「きっついなぁ、こっちのねぇちゃんは。そりゃな、見た感じべっぴんさんな二人に案内してもらって…」

「してもらって?」

「できたら…できたらな」

「できたら」

「しょ・食事とかもいっしょにお願いできたら 皇都までやってきた甲斐があるってもんだろう」

「「それだけ!」」

「うん?あぁ そんだけだよ。他に 何があるってんだ」

「あぁ、はいはい わかりました」
「そうね~」

「なぁ、悪いけど 頼めないか」

「ごめんなさい」

「ごめんなさいって、そりゃないぜ セニョ「言わせないよ」やっぱ、顔か 強面なのがいかんのか」

「いや、そうじゃなくてですね」
「わたしは、ともかく こっちの()も、皇都に不案内で、わたしが 今日その案内をするってことになってるんだ~」

「うん?嬢ちゃんも 不案内って」

「えぇ、こっちにきて三年、今日初めて 一人歩きが出来るって思ってたんですけどね。まぁ いろいろあって、今日のところは こちらのリコッタさんに 案内してもらうことになったんです」

「ね、ね。こうしない あんたたち 顔は 強面だけど話してみると 悪いやつじゃないっぽいし~、なんでさ あんたたちも、この娘といっしょに ついて来なよ。で、まずは そこで そのぼろっちぃ格好を着替えなさいな」

「「「ぼろっちぃって」」」
「んだ、んだ」

「そこは、認めちゃうんだ」

「この皇都で 食事おごれるくらいのお金は、持ってるんでしょ?だったら服買いなさいな~」

「おい、どうする?」
「まぁ、服は…なぁ」
「ぼろっちぃと やっぱダメかな」
「ボロは、着てても…」
四人のおとこたちは、互いの顔を見合わせながら

「「「「おねがいしゃぁ~っす」」」」
とリコッタに頭を下げるのであった。

「ごめんね~、ミキちゃん」

「いいですよ、で 彼ら服屋さんへ?」

「いえ、彼らの服は うちの店に置いてある古着を買ってもらうわ」

「えっと、確か これから行くのは…レストラン」

「えぇ そうよ。うちのお店には やんごとなきご身分のかたが たま~にお忍びで来ることがあるのよ。んで、中で お食事をとったあとに こっそり服を着替えて 町中にくりだそうって方々もいらっしゃるの。そういった方たちのために古着を用意してるのよ。中には 古着なんてって方も居るけどね~。で 彼らには、その古着に着替えてもらって…もちろん古着っていったって 物はとってもいいものなのよ」

「なら わたしも それ「ダメよ」」

「あなたには、ちゃんとしたお洋服を着てもらいます~」

「うぅ~、なんで~」

「さぁさぁ、そうときまれば お店まで ゴー」

「「「「あいさ~」」」」


ひょんなことから ショコラの店まで同道することになった四人だが、話をすれば 強面な容貌とは、うらはらに、なかなか気分のいい男たちのようで それぞれ

「いちおう、リーダーやってる『ヒサ』っていう。歳は、26だ」
「おれは、『タケ』。サブリーダ的な感じだな。27になる。」
「…『マサ』、26になるだ」
「おいらは、『ヒデ』、こんなかじゃ一番若いけど24になる」

「「えぇ~!!」」

「うそ、もっとおっさんかと思ってた~」

「ごめん、わたしも」

と四人の自己紹介に対して失礼な感想をもってしまったのも関わらず

「「しゃぁねぇなぁ」」
「そんなもんだよな」
「んだんだ」
「「「「ははは」」」」
上からヒサ・タケ、ヒデ、マサである
と、自分たちでも妙に納得している様子。荒くれ者っぽい感じはするものの、実に 気のいい男たちのようだ。

出会い方は、まぁ なんだったけど…

「着いたわよ~」
とリコッタの言葉に、建物をみて あんぐりと口を開けて固まってしまった四人。そして 「ここですか」と平然としているミキである。

「ねね~、ミキちゃん?何か言うことないの」

「すごいですね」

「はぁ~、さっすがミキちゃん。平然としてるわぁ」

「いえ、素晴らしい建物です。そして 清潔感あふれるデザイン。」

「うーん、なんか思ってる反応と違うけど~、ミキちゃんだしね、それはともかく」
「ようこそ、レストラン『ショコラ・ド・コンティニュー』皇都支店へ」

「さて、四人は ここで 待っててね。すぐに 迎えをよこすから」

「「「「あいさ~」」」」
実に 乗りのいい四人である。

「ミキちゃんは、こっち。さぁ 中に入るわよ」
と、ミキの手を引くリコッタである。

さて、皇都でも名高いレストラン。その中に いま一歩足を進めるミキ。中で持ち構えているのは?いったい何が 待ち受けているのやら。

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