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011 すったもんだ

すったもんだ

「さて、僕もこれから お出かけだ」

とは言ったものの、改めて自分の格好を見てみれば、あきらかに お城で 仕えているような人たちと 同じような格好をしてる。このままじゃ、護衛引連れて ぞろぞろ歩いてるのとかわんない。どちらかと言えば、護衛の人たちが いないから却って悪目立ちしそう。ここは、皇都、陛下のお膝元だから 変な人たちは いないと思う。いないと思うけど…ねぇ。もし 変な人たちがいたら 僕なんていいカモにされてしまうのは、間違いない。さて どうしたものか。そうだ、困ったときのショコラさんだ。この時間なら、まだ大丈夫でしょ。さっきの いまだけど……。

「ショコラさ~ん、ショコラさん」

「おや、なんだい。忘れ物でもしたのかい?」

「いえ、忘れ物じゃなくてですね、ちょこっとご相談したいことがありまして」

「おや、最近じゃ珍しいね。以前は、よく相談事をあたしにしてたけど。」

「あ・ははぁ~」ちょっと照れてしまうミキである。

「で、相談事ってのはなんだい?」

「はい、ちょっと皇都周辺の散策に出かけようと思ったのですけど、僕の格好だといかにもお城仕えの人っぽくって」

「あぁ、そうだねぇ。むしろ いまの格好でさえ あたしにや 変わってるって思うのだけど…」

「えっ?僕の格好、どこか変ですか」

「いや、まぁ あんたが それでいいってなら、いいんだろうけどね。ふむ、わかった!こういう こったね。」「城から出て 皇都周辺の町とかに出かけようと思うのに 今のままの格好では 勘違いしたやろうどもに 何されるかわからない、トラブルを避けるために ちょいと格好を変えたいってこったね」

「おぉ~、さすが、ショコラさんです。」

「あたしに まかせときな」
「ちょいと、ここ 任せたよ。それと リコッタ!一緒に来とくれ」

「はいは~い、おまかせです~。話は すべて小耳にはさんでおります」
それって、盗み聞きしてたんじゃ?なんて ツッコミはいらないよ。

「さぁ、こっちに おいでな」
と、ミキを連れて 控え室の方へ向かっていくショコラさんとリコッタである。

「さてと、リコッタ どんな格好がいいと思うかい?」

「そうですね~、いまの格好とは 真逆ってのもありかもですけど…」
「うんうん、それもありなんだけど…そうだなぁ いざってときに 何か口実がある方が いいと思うんだわ。もし 万が一 トラブルに巻き込まれたときでも 誰かに頼れるようにね。まぁ、この近辺の店や、ギルドならあたしの名前をだしゃぁ ぞんざいな扱いを受けることは ないだろうよ」

「ですね~、ということは」
「そう、うちの関係者にしてしまえばいいんだよ」

「いやいやいや、それじゃ お城の関係者だって解っちゃうじゃないですかぁ」

「おや、あんたには 話したことなかったかねぇ。お城の食堂は 皇都にあるレストラン『ショコラ・ド・コンティニュー』の出店()なんだよ、で、あんたにゃ そこの従業員の格好をしてもらおうってわけさ。うちの従業員たちの格好なら、皇都を歩いてても不思議じゃないし、ちょっとした買い物にそのまま出かけることもあるしね」

「な・なるほど、ありがとうございます」…レストランの従業員さんの格好って 白衣に、コック帽?それとも ウェイターのような格好かなぁ、などと考えているミキである。

一方、ショコラにリコッタと言えば
「「ふふ、ミキ(ちゃん)に うちのウエイトレスの格好、ふふふ きっと似合う」」などとそれこそ 真逆なことを考えているのである。

「ぶるっ!」何かいま すごい寒気を感じたのだけどと ミキ。

さて、ここで 思い出していただきたい。初めて陛下や他の皆々が ミキのことを少年だとは思ってもいなかったってことを。そして、ショコラとリコッタには、一度も 男だとなのっていないミキである。…はてさて、これが どういう結果をもたらすことになることやら。

「じゃぁ、こっちに 着替えを用意したから リコッタ、手伝っておやり」
「じゃぁ ミキちゃ~ん こっちへ」と、控え室の奥の間に ミキを案内するリコッタ。まぁ 食堂の従業員たちのお着替え部屋である。

「ちょっ!なんですかこれは…」「はいはい~、観念してたまには 女の子らしい格好をしてみなさ~ぃ」「いや、だから僕は…ちがっ」「はいはい、僕っ娘なのもかわいいけど、もったいないでしょう」「だ・か・ら、違うんですってば~!!!」聞こえてくる、ミキの悲痛な叫び、暖簾に腕押し、柳に風、いっこうに取り合わないリコッタに ミキは なすすべもなく…。

数分後…

「もう、お婿にいけない、うぅ~」

「うんうん、とっても似合ってんよ」
「ほんとに、どこに出しても恥ずかしくないうちのウェイトレスさんです~」
「「かわいい(よ)」」
「いや、どちらかっていうと「美人さん」だ」

さて、通常なら 女性と間違われたミキの場合、極寒の魔女、否、絶対零度の冥府の女皇…(おい、作者!)となるはずのところ、今回の場合、頼み事をしたのが自分であり そのときに 自分の性別を名乗らなかった、そして 少なからず食堂のショコラさんという人柄を信頼していること等からいつものように怒るということが 出来なかったのである。(語り手のこともう少し信頼してほしい(ボソ))

「ショコラさん、僕、僕っ娘じゃなくて ほんとに男なんですってば」

「いや、まぁ 知らなかったとはいえ、すまないねぇ」
「わたしも、ごめんね~、ミキちゃん」

「はぁ、まあ いいです。今日のところは、このまま出かけます。」

「そうだ、こういっちゃなんだけど まず最初にうちのレストランにおいきよ、そこで男ものの服に着替えるといい。リコッタ、ついていっておやり。ちょっとまってな。支配人に 手紙を書いておくよ。で、そこで 着替えた後に、服屋に行くといいよ。そのままの格好じゃ また勘違いされてしまうかもだしね。」

「まぁ いろいろあったけど…ありがとうございます、ショコラさん」
「リコッタさん、では お願いしますね」

「は~い、そんじゃ ミキちゃん。行きましょうか」

「気をつけて行くんだよ~」
だいじょうぶかね、うちのレストランまでならそう離れていないだろうけど それでも…ねぇ、あの子は 美人過ぎる。「あら、もしかして 陛下の御子さまのお名前もミキだったわね……まさかね」と口調が素に戻ってしまっているショコラである。


「皇都のレストラン、でしたか。ここからだと どのくらいの時間がかかるんです?」

「そうね~、十分くらいだったと思うよ~」

「たしか お店の名前、『ショコラ・ド・コンティニュー』でしたっけ、って ショコラ!、もしかしなくても ショコラさんって そこのオーナーさんだったり?」

「そぉ~よ~、皇城に 食堂を開いて欲しいって話があったときに オーナー自ら、じゃぁ わたしが 行こうかって言い出しちゃってね~。もともとオーナーのショコラさんと陛下って 知り合いだったらしいの~。そういえば 皇城の医術師さん…リョージュンさまとも知り合いだそうよ」

「(母さま…)いったい何が きっかけで お知り合いになったのでしょうね」

「わたしも~、そこまで詳しく聞いたことはないの~」

さて、城の裏門を出てからもうまもなく皇都のメインストリートへと差し掛かる頃
「リコッタさん、振り向かないでくださいね」と小声でささやくミキ、「はい~、なんだかわからないけどそうする~」

「どうやら、後ろから付けられているみたいなんです」

「もう少し行ったところで、立ち止まって牽制してみます」

「あと五分くらいで 着くっていうのに…」

どうやら 初めての一人歩きは、波乱に満ちたものとなってしまったようですね。えっ?リコッタさんがいる時点で 一人歩きじゃないって。それは 言わないお約束



※実際には、お城の食堂の方が本店です

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