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30

 ――10年前

「ねぇ。遊ぼうよ」

 子どもがひとり同じ歳くらいの子どもに声を掛ける。
 しかし、誰も近づかない。
 それどころか逃げ去っていく。
 なぜならその子どもには兵器を売っている父親がいるからだ。
 父親の名前は、馬神 森夜。
 馬神コーポレーションの社長だ。
 子どもは涙をぐっと堪える。
 泣いたら負けだと森夜に教えられたからだ。
 するとひとりの女の子が焔に声を掛ける。

「泣いたらいいのに」

 女の子がそういって笑う。

「泣くかよ。
 泣いたら負けなんだ」

「じゃ、笑おう」

 女の子がそういってケラケラ笑う。

「なんで笑うんだよ」

「泣くの反対は笑うでしょ?」

「お、おう」

「じゃ、負けるの反対は勝つだよ!
 泣くの反対をしたら勝てるんだよ?
 だったら笑おうよ」

「なんでそうなるんだよ」

「じゃ、泣く?」

「泣かない」

「泣いてもいいんだよ?」

「なんでだよ?」

「だってさ、泣かずにうまれてきた人なんていないんだから」

 男の子の目から涙が溢れる。
 人に話しかけられて会話している。
 それだけで嬉しい。
 嬉しいはずなのに涙が溢れる。

 女の子は男の子の頭をポンポンと撫でた。
 男の子は涙をボロボロと流した。
 そして、決めた。
 もう泣かないと。
 勝つとか負けるとか関係ない。
 つらいときは笑おう。
 そう決めた。

 男の子は最後の一呼吸を入れ。
 豪快に笑った。

「くくくくくくく」

「え?」

「がははっ!
 ははははははは!」

 男の子には目に涙はない。
 あるのは希望に溢れた笑みだけだ。

「うん!いい笑顔だ!」

 女の子も笑う。

「なぁ、アンタ。
 名前は?」

 男の子が尋ねる。

「シエラ・シエル。
 貴方は?」

「馬神 焔……」

「そっか」

 男の子は、名前を名乗ったことに後悔した。
 何故なら自分が兵器を作っている会社の社長の息子だからだ。

「うん」

「よろしくね!」

 シエラが笑う。

「え?」

 男の子は驚く。

「ん?なにか変なこといったかな?」

「だって、俺は馬神だぞ?
 兵器を作っている会社の社長の息子だぞ?」

「そんなの知ってるよ?」

「え?」

「君、有名人だよ?
 知らない訳ないじゃない」

「だったらどうして話しかけてくれたんだ?」

「え?普通にお友だちになりたかったからかなー」

「変わってるな?」

「よくいわれるー」

 女の子が嬉しそうに笑う。
 男の子も笑う。

 これは、焔にはじめて友だちができた瞬間の話だ。
 そして、焔にとって大事な大事な思い出のひとつだった。


 ――時は現在に戻る。

「思い出を奪うとか酷いやつだ」

 焔は、そう呟くと自分のドールを発進させる。
 向かった先は馬神コーポレーション。
 自分に力をつけるため。
 新たな兵器を手に入れるため父親に頼みに向かうのだ。

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