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 決意してから数日後、私はある作戦を実行した。それは…蓮くんと休日咲祭の準備をすること!…すこしでもアピールしたいな。
 同じ係りだということもあり、簡単に約束できてしまった。二人だけだと話しづらいから、茜と、蓮くんの友達を呼んで四人で作業することになった。女子二人と男子二人だから、ちょうどいい比率になって良かったな。今は作業の場所である蓮くんの家に、茜と向かっているところだ。
「まさか、佐倉がここまで頑張るなんてねぇ、しかも篠宮くんの家なんて」
「私もこんなことになるなんて…だって咲祭に使う道具とか、書類とか、ほとんど蓮…篠宮くんの家にあるんだもん」
「私の前では蓮くんでいいよ~そう呼びたいんだよね~?」
 私はこれから先こんな風にいじられまくるのか。まぁ、すこしでも気持ちが軽い方が緊張しなくて済むから、結果オーライだよね。
 そうして話しているあいだに蓮くんの家の前に来ていた。手が少し震えたが、勇気を出して家のチャイムを鳴らしてみた。そうして、少しして出てきたのは寝起きで、パジャマ姿の蓮くんだった。これは…とても良い!じゃなかった。
「お、おはよう蓮…篠宮くん、眠そうだね」
 あ、危なかった。うっかり下の名前で呼びそうになってしまった。そういうのはもう少し仲良くなってからじゃないと…。
「あ、おはよう白石さん…と紺野さん。こんな格好でごめん。昨日本読んでたら夜更かししちゃって。とりあえず俺の部屋入って、まだ俺の友達も来てないから、あと着替えとかしたいし」
 いろいろとドキドキしてしまうな、初めての友達の男の子の家に遊びに来て、それも好きな人なんて。
「「おじゃましまーす」」
 蓮くんのご両親は仕事でいなかった。蓮くんの家は一軒家で、隣に家が並んでいた。ご両親がいないからといって騒いだりできないな…まぁもともと騒げるほど気は楽じゃないけど。
 蓮くんの部屋はいたって普通だったが、蓮くんの部屋だと思うと特別な感じがした。
「篠宮くんの部屋ってなんかいい香りがするね」
「そ、そうだね!…あ!これじゃない?ライラックのアロマオイル」
 蓮くん、花とか好きなのかな?よしっ、帰ったらライラックについて調べてみよう。共通の話題があればきっともっと話せるよね!
「お待たせ、二人とも、作業始めようか」
 蓮くんが部屋に戻ってきてから、会計の仕事や、咲祭に使う看板のデザインの意見を出しあったりしていた。作業をして少したった頃、蓮くんの友達がやってきた。
「遅いぞ、二人とも紹介するよ、俺の友達の染咲葵」
「ごめん!来る途中で忘れ物に気がついて…あ、二人ともよろしくね!」
 そんなこんなで作業を再開した。少し騒がしくなってしまったが、順調に作業は進んでいった。
 二、三時間が経った頃、私は集中しすぎて本来の目的である、蓮くんにアピールする!というのを忘れてしまっていた。というか…アピールって何すればいいんだっけ!?普通は料理とか、女子力をアピールすらばいいんだろうけど…料理できないし、そのまえに咲祭の準備でどうやって女子力をアピールすれば!?そんなことを考えていたら、気がついたらもう帰る時間となっていた。
「あ、もうこんな時間…二人とも、もうすぐ暗くなるから、そろそろ終わりにしようか、あと葵も早く帰れよ〜」
 そうして、私たちは解散した。染咲くんは蓮くんの家と近いからもう少し長く作業していくそうだ…いいな。
「佐倉…次からはもっとアピールしてね」
「…はい」
 こうして、私の立てた計画は失敗に終わってしまった。それでも、色々と蓮くんのことが知れた気がするから、それはそれで良かったな。

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