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 ――ウブス港

 朝になり9時が来ようとしているのにもかかわらず辺りは霧に満ちていた。

「おい!そっちに行ったぞ」

 霧の中に更に濃い霧を警官のひとりが追いかける。

「深追いはするな!」

 そういったのは座来栖だった。
 しかし、警官たちは座来栖の忠告を無視して銃を放つ。

「愚かなり弱き者よ」

 霧一箇所に集まりそれは、爪の形になり警官の身体を切り裂く。

「……え?」

 警官にはなにが起きたのかわからない。
 あるのは身体の痛み。
 激痛、失われる血の感触。
 そして途切れる意識。

「くそ!そこか!」

 別の警官がその霧に向かって銃弾を放つ。

「愚か」

 霧はそういって爪でその警官を斬りつける。
 その警官も意識を失い倒れた。

「くそが!」

 また別の警官が銃口を向けてその霧を撃ち抜こうとする。

「やめておけ。
 そいつに普通の銃弾は効かない」

 座来栖の言葉にその警官は銃をおろした。

「は、はい」

 霧は、一箇所に集まるとそれは獣のような姿へと形を変えた。

「……愚かなり」

 獣はそういうと二足歩行で駆ける。

「ゲルンガ、お前は今日ここで仕留める!」

「……銀弾の座来栖か」

「わかるのか?俺のことが……」

 座来栖に一瞬の気の緩みが出る。

「隙きだらけだ」

 ゲルンガは、爪で座来栖の身体に一撃与えた。

「く……ぁ……」

 痛みが座来栖の身体全体に走る。

「う、うわぁぁぁっぁっぁぁ」

 その場にいた警官が銃を乱射する。

「死にたくなければその場で腰を抜かしていればいいものを……」

 ゲルンガは、そういってその場を離れた。
 警官は、一瞬助かったと思った。
 しかし、ゲルンガの霧を吸い込んでしまった。
 霧が晴れる。
 そこには複数の警官たちが地面に倒れていた。
 意識を失っているもの。
 命を失ったもの。
 そこは、まさに地獄絵図だった。
 意識があるものは、毒により苦しむ。
 それを遠くで見ていたモノがいた。

 13である。

「アルカディア。
 みんなを癒やして」

 13はそういって左手を輝かせる。
 すると毒で苦しんでいる警官たちの毒が癒える。
 そして座来栖の傷も癒えた。

「13、すまない。
 朝早くだから迷っていたのだが。
 君を連れてきてよかったよ」

 座来栖が、申し訳なさそうに13にいった。

「朝早くとかは気にしなくていいよ。
 それよりあの獣ってゲルンガ?
 噂以上に強くない?」

「ああ、アイツは強いよ。
 油断した俺が悪い」

「多分、僕は見逃されたんだろうね」

 13が、そういうと座来栖がため息まじりに行った。

「ああ……
 ゲルンガは悪人か敵意を見せているヤツとしか戦わない」

「悪人ね……」

 13がそういって空を見上げる。

「ん?どうかしたか?」

「うんん。
 それよりお腹すいた。
 仕事手伝ったんだし何か奢ってよ」

 13がそういうと座来栖が笑う。

「ああ、しかし給料日前なんだ。
 手加減してくれよ」

「朝ごはんにそんなに高いものは望まないよ?」

「そっか、そうだな」

 座来栖がうなずくと13が見る空を見上げた。

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