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第十七話

大悟家の食事は基本、桃羅が準備しており、大悟はリビングでゆっくりしているというのが日常であるが、今日は少々様子が違う。キッチンからは煙が立っている。火を通す材料からだけでなく、調理している桃羅からの方がはるかにモウモウと上がっている。煙の行き先はリビングである。
リビングでは楡浬が純白のワンピースに着替えている。これが部屋着らしい。
大悟はメイド服を着て、楡浬の横でアイスクリームを出していた。

『あ~ん。』というお約束ワードを帯同させて、スプーンでアイスクリームを楡浬の口まで運ぶ大悟。

「ちょっとアイスクリームの量が多いわ。アタシは上品に食べるんだから、気をつけなさいよ。」
文句を言いつつも、ほっぺたが落ちそうな楡浬。
キッチンからはリビングの様子は丸見えであり、桃羅は大きな声を出した。

「ちょっと、オヨメちゃん。そんなクソ神の言うことなんか、聞く必要ないよ。モモ所有のオヨメちゃん萌え対策用戦闘コスチュームのメイド服着て、あまっさえ、そんなにかしづくなんて。ソッコーで拒否るべきだよ。」

「オレもそうしたいんだが、この楡浬様に言われると、どうしてもからだが言う通りになってしまうんだ。」

「なにそれ?それにクソ神に様付けなんて、もったいないお化けがでちゃうよ。」

「それもずっと前からそんな風に呼んでいたみたいに、ごく自然に出てしまうんだよ。オレはオレ自身のことがわからなくなってきたんだ。このメイド服を着るのもまったく抵抗感ないし。」

「オ、オヨメちゃん。そんなにモモの残り香をテイスティに思うなんて、意外な一面を見ちゃったよ。街で百万円拾った気分だね。」
「百万円拾ったら、ぜったいに警察に届けろよ!いや、十円でもだぞ。」

「あああ。オヨメちゃんがモモのメイド服に包まれて、愛の虜になっている。」
桃羅はだらしなく口を開いて、メイド服の魔力にとらわれたままであった。

「馬嫁。ぼさっとしてないで、アタシの肩、揉みなさいよ。初めて学校に行って疲れてるんだから。」
大悟はわずかに頷いて、肩揉みを開始した。

「う~ん。馬嫁にしてはウマいわねえ。ダジャレじゃないんだからねっ。全身の血液のめぐりがよくなってるのを実感するわ。」
目を閉じてうっとりする楡浬は、至福の新境地を開いたようである。
ちなみに大悟家はマッサージ家元である。大悟の手は『ドットブレイカー』と異名を取っていた。

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