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第十三話

「お兄ちゃん!会いたかったよ!10分ぶりなんだけど、ビッグバンでも起こったような不思議な気分だよ!」
 抱き着こうとする桃羅を制止して、両肩を掴む大悟。背中や腰にも手を回して、生命体であることを確認していた。
「桃羅なのか。本当に桃羅なのか。い、生きててよかった!ハグ、ハグ、ハグ!」

「ちょっと、お兄ちゃん。今日はどうしたんだよ。それは『先手モモ、後手は一切なし』なのに、積極的過ぎるよ。そうか。ついに、モモと同じ苗字になることを決意したんだね。あっ、苗字は最初から同じだったね。じゃあ、すぐに結婚式をあげようよ。」

「ちがう!でも本当によかった。よかった。神頼みが初めてかなえられたぞ!」
 大悟は命を奪われたという自分の立場をすっかり忘れていた。
 
 翌日、いつもの通り、大悟と桃羅は傍目からは、いちゃついた状態で登校した。
教師桃羅が教室に入ってきた。般若の面を被っている。これは不機嫌のサインである。不快そうな表情を神に見せては不謹慎であるという神への遠慮があって、このようなことをしているのである。

「今日は転校生を紹介するよ。みんな仲良くしなくてもいいからね。転校生も自己紹介したければ勝手にやってね。」

金色ツインテールで小柄な美少女。白を基調とした、黒の縦ストライプの入ったブレザー服姿の彼女は、白いリボンを後ろに付けた長い髪を太陽光で輝かせながら、胸をそり上げて男子を睨みつけている。黄金色目の視線も強烈だが、それ以上に巨乳サイズには目を見張るものがある。

その転校生を見てクスクス笑う三人寒女。金色ツインテ女子はその様子を見てイラついた表情を見せた。

「あれ?どこかで見たような?でも知らない女子だよな。」
大悟は不思議な感覚にとらわれて、頬を叩いた。

「アタシは剣徒楡浬よ。神セブンなのよ。人間界では七福神とか呼んでるらしいけど、正式には神セブンで、すごく偉いんだから、ご尊顔を拝することができるなんて、超感謝しなさいよね。あっ、神セブンと言っても見習いなんだから、さらにすごいと認識しなさいよね。」

数秒間、クラスの空気が南極の氷河と化した。
楡浬はめんどくさそうな目つきで教室を睥睨した。
「あんたが馬なの?」

楡浬の視線は最後列の大悟へ突き刺さった。

門番風紀委員に捕まった遅刻寸前の生徒のように、慌てふためいて、他の生徒を指差した教師桃羅。

「ち、違うよ。ほら、この生徒だよ。後光が差してるし、超大穴確実な馬だよ。ウソじゃないから試しに馬券を買ってみてよ!」

「見え透いた表現で、スケスケパンツじゃのう。」
桃羅の指先は寿老人であった。言うまでもなく、クラスで馬になっていない人間生徒は大悟だけである。

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