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魔王は召喚せし、勇者のお供

「ミントぉぉ……会いたかったぁ……」

「……デレすぎですって! 恥ずかしいです!」

「いいじゃんもう照れ屋さんなんだからぁ……」

どんだけ私のこと好きなの。
嬉しいけど。
対応に困るから。

「……っと。メイク・ラブは少し後になりそうデス」

ミアリが腰に掛けてある巾着を取り出す。

「……ん」

よく目を凝らして見ると──

「……何だよあれ。こっち来るじゃん」
目の前からは、無数の棍棒を持って毛皮のコートを着てこちらに攻め込んでくる。

「もう来たか……」

ミントがそんなことをボソリとこぼす。ので、

「ん、何か知ってるの?」

「まぁ、一応。あなたのすぐ側の人ですし」

「……?」

少し意味が分からないが、そういうことらしい。
俺が原因でこうなってしまったらしいでーす。

「ワタシと結羅でやるデス。ミス、ミント。下がって」

「ひ、はい」

ミントはおどおどしながら俺たちの所から下がる。しかし、俺が渡して置いた適当に作ったナイフだけは、強く握りしめている。

「行きますかッ」

「うい」

俺とミアリは、太刀とライターを取り出し、構える。

「ぬん」

と言ってミアリがライターの火をつけると──




凄まじい爆発音と共に、何人かの棍棒の人が吹っ飛び、何人かの棍棒の人が燃える。何ですか。メラガイアーですか。やめて下さい。主人公としての俺が目立たなくなる。
いや、俺ってそんなに目立ってなくないか?
あるぇ?

「……ここがチャンス」

そう思い、俺は太刀を構え、棍棒の人チームの中に飛び込んでいく──

棍棒を振る時に、必ずと言っていいほど隙が出来る。そこを狙う。
ほんの一瞬でもいい。そこを狙うんだ。

「……ここ!」

棍棒を振り上げた瞬間に、太刀を横一文字に斬る。
なんとか当たったみたいで、その棍棒さんは倒れる。

次! 来る!

「今!」

また振り上げてくる棍棒さんの振り下ろした棍棒を太刀の刃の部分で転がすように受け流し、太刀を片手で持ち、首を吹っ飛ばす。

人を斬っている生々しい感覚がするのだが、思い出すと吐気がするので、目の前のことだけに集中してみる。
<ネジ食べたい>と書いてある黒いTシャツには返り血がいくつもついている。

「……鉄の匂い」

かなり立ち込める血の匂いを無視し、どんどんと斬っていく。

が。

「ぬ……んん……」

まぁ人の油やら血やらが着いてるからそうなるだろう。斬れなくなった。グスッと棍棒さんの腹の真ん中当たりまで斬れたものの、そこで刃が止まった。
1度太刀を抜き、その太刀を右手で持って、左手の形状変化で刃を元通りにするために刃をなぞるように手で吹く。
すると、見た感じ斬れ味がよくなった……気がした。

「まだまだ……!」

と、自分で自分を鼓舞した──その時であった。

「よっ……こらしょ」

「え」

囲まれていたのだが、そのうちの1人が俺の足を滑り込むように触る。
と思いきや、そのままお姫様抱っこしてしまうのだ。

「にんむかんりょー。きとー。」

「「「おおー」」」

無気力な合図とともに、俺をお姫様抱っこしながらどこかへ掛けて行く。

「ちょっ! 降ろせ!」

俺が太刀で俺を持っている人を刺そうとするも、その太刀は他の棍棒さんに奪い取られてしまう。



「くっ……やむを得ないデス。撃ちます」

ミアリがライターを構えた──その瞬間であった。

「おやめ下さい」



毛皮のコートを着ている棍棒さんの中でも、メガネを掛けてスラリとした長身イケメンの棍棒さんがミアリを止めた。

「これは、<魔王>エグゼリカ様──いや、セリカ様による<選別>です。帰ってきます」

「せ、選別……?」

そう聞くミントの顔には、見るからに不安の色がにじみ出ている。


「選別……もしかしたら、結羅、あの魔王ばワタシ達のパーティメンバーに。インポッシブルではないデス」















「すみません。マジすみません」

目が覚めると。
よくわかんないけど棍棒さんに土下座されていた。
土下座するべきは棍棒さんの同胞を殺していた俺なのだが。

「こんな手段であなたをここまで運んでしまったこと、深くお詫びします。あなたのお連れ様には事情を説明し、慰謝料を払ったので、ご安心を」

「い、いえ! ……俺も、同胞を殺してしまい、申し訳ない」

「あれは、仕方の無いことです。私達も、これは初めてなもので

メガネを掛けてスラリとした長身イケメンの棍棒さんがそう言って起き上がった。

「私達が案内出来るのはここまでです。地下3階に<魔王>様がいるので、よろしくお願い申し上げます」











ま、
魔王!?
え、何!? この物語終わり!? スタッフロール!?
ウッソだろ。
魔王の城、みたいなところの壁はレンガになっており、等間隔で松明が掛けられている。床は石である。
そんな変なことを考えながら、棍棒さんに返してもらった太刀を常に左手に持ち、前へ進んでいく──












「ここが、地下3階への階段かねぇ……」

宝箱はミミックの恐れがあるので、太刀でツンツンしてから開けたのだが、中に入っているのは下剤やら胃腸薬やら漢方薬やらの医療品が全てである。
良心的な魔王だ。

そう思いつつ、地下3階への階段を下っていく。

コツコツ、と自分の足音が地下3階の中に響いているのが分かる。階段を降り終えると──

少し奥に一枚の障子が。

あの奥に、魔王が。
あれを倒れば、そもそもの争い、的なアレが無くなるのだ。
俺が終わらせる。
このふざけた戦いを──

その障子には、1人の小さな人影が見える。
と、思うと。

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ僧侶ちゃぁん! ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ……ふぅ」





あっきらかに。
女性の、しかも幼い声。
そして、よろしく無いセリフ。

「あのぉ……派遣された勇者的なアレなんですけどぉ、お取り込み中ですか?」

「あ、よくきたな勇者よ」

今気づいたらしく、障子をパーンと勢いよく開ける。
金髪の艶やかな髪をこめかみの辺りで小さく三つ編みにし、その三つ編みを後頭部にまとめた感じのポニーテールである。
目は赤。そして完全なロリっ子である。ロリ最高。

「私の名前は魔王エグゼリカ! 私の戦闘力は53万です!」

……えぇ?
特徴的すぎる魔王、ていうか雰囲気ぶち壊し魔王である。

「ロトよ! なにゆえ もがき いきるのだ !」

「やめなさい! この小説が二次創作になるわよ!」

やめてくれ。本当にやめてくれ。頼むからやめてくれ。

「……ふぅ。お遊びはここまでだよ」

その魔王は手を勢いよく合わせる。すると、上からは俺の身長の10倍はあろうかというどでかい剣が落ちてきた。

「私はメタル系よりも硬く、全形態を合わせたデスピサロよりも体力が高い」

オワコンじゃねーか!
勝てるわけねーよ!

「さぁ来い! 我が名をそなたらのみゅくろに永遠にきざみこんでやろう!」

あ、噛んだ。

「テイクツー!」

「ありがとう勇者君!」

褒められた。なんだか嬉しい。

「さぁ来い!我が名をそなたらの骸に永遠にきじゃみこんでやろう!」

「テイクスリー!」

「さぁ来い! 我が名をそにゃたらの骸に永遠に刻み込んでやろう!」









「……もう言えないわ。諦める」

「そうしてくれ」

「あ、麦茶しかないけど、何が飲む? 一応茶菓子もあるけど」

「あ、いただきます」







「……美味い」

そのエグゼリカが作ったであろうおはぎである。甘さ控えめの粒あんと素材本来の甘さを出した餅米が見事な口の中のでのダンスを繰り広げている。

「でしょでしょ! 私の自信作なんだ! それで、お兄ちゃんのお話、もっと聞かせてよ!」

俺と魔王エグゼリカは同じコタツで、おはぎを食べながらぬくぬくしている。
こんな幼女、討伐できないじゃないか。

「んまぁ、その勇者がさぁ……」







「つまり、あなたに付いていけば、私が直接、ゆーしゃを殺すこともできるってこと?」

「まぁ、そういう事なんだが……」

来て欲しくない。
俺の仲間に万が一の事があったら、という事だ。

「じゃあ、結羅君! わたし、あなたについていくね!」

実に屈託のない笑みでそう言われると。

「断れないじゃねぇぁぁぁぁぁぁぁ!!」

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