バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

06-[初めての技能検定]

 時間は少し遡り、ウィルは総合技能検定所に来ていた。ラスから教えてもらったとおり総合技能検定所では低いレベルなら王国の奨励金により無料で受けることができたため、ウィルは早速レベル2のディガー検定の受験を受け、今はその合否の発表を待っていた。ディガー検定に関して言えばそのレベルは1~10まであり、10が最も高いものとなっている。レベル10の資格を持っていれば未踏の遺跡での探索や未解明のオーパーツの所持、研究など様々なことが認められる。一方今回ウィルが受験したレベル2の資格によって認められることは、遺跡の探索に関して言えばほとんど調査が完了してある程度安全が確保されているものに限られ、オーパーツに関して言えばその効果が完全に機能が解明され、かつ一般的に安全であることが確認されたものに関してのみ所持及び使用が認められているといったものだった。人がディガーになる目的は、大金を稼ぐことや古代文明の探求、名声の獲得など様々ではあるが、一般的に遺跡やオーパーツに興味があるものの大半は未知の遺跡に足を踏み入れオーパーツを入手してその力を解き明かすことを目的としている。そういったことに比べると今回のレベル2という資格は非常に多くの制限があるため大したことはできないが、実質無料で受験できることを考えればかなり有益な資格であると言える。また、ウィルにとっては今まで門番がいたため入ることのできなかった遺跡を調査出来るようになっただけでも意味があった。
 ウィルはこの街に来るまではいろいろな街を旅しつつ、旅の途中にあった門番のいない遺跡にこっそりと潜ってはオーパーツを発掘するといった行為を繰り返していたが、そのような遺跡は価値が無いと見なされた遺跡であるためほとんどオーパーツを入手することができなかった。また、たまに手に入ってもほとんどがゴミみたいなものばかりで無駄に終わることが多かった。それでもたまに非常に有益なオーパーツが手に入ることもあるにはあるが。ちなみにこれらの行為は全て違法行為であり、発覚した場合はそれなりの罪に問われる。
 さて、話はディガー検定に戻るがレベル2のディガー検定の内容については幅広い遺跡やオーパーツの知識が求められるものの、必要とする知識は大半の専門の学校や参考書などで習得可能な程度で、記憶が得意なウィルにとっては余裕であった。そのため、今この合否を待っている時間は緊張しながらその結果を待つというよりもただ資格の証明書の発行を待つためのものであった。
 やがて合否の発表及び合格者に対する証明書の交付が始まり、喜びと落胆の声で空間がそれまでの静けさから一転して賑やかになる中、ウィルはしっかりとその手にレベル2のディガーの証明書を受け取りその喜びを噛み締めていた。ただウィルの場合、その喜びは苦労した努力が報われて合格したことによる感動といった類のものでは一切なく、これで仕事ができる、お腹を空かせなくてすむ、ついでに遺跡に潜ることができるという、なんというか今までの辛さから解放される希望からくるものであった。
 
「はぁ~、これでひもじかった日々から解放される・・・」

 当たり前のはずの幸せをようやく掴み取ったウィルは思わず思っていたことがそのまま口から溢れてしまった。

「さてと、これで仕事は見つかるようになるかな。とりあえず教えてくれたラスさんにお礼にだけでも言いに行くか」

 先程口から溢れてしまった延長で普段は独り言を発しないはずなのにまた思ったことを口に出してしまっていた。このままでは危ない人に見える、気を付けようと自分を戒めながらウィルは総合技能検定所を後にしてラスにお礼を言いに行くためにシャムロックへ向かうことにした。

しおり