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14歳ブーム

今、14歳がブームである。

なぜブームなのかは分からない。ブームというのは大抵そんなものだ。

流行っているから流行っているのであり、人気があるから人気が出る。





因果関係は相互に作用しあい、複雑に強化されたエネルギーによって、さらにその勢いを増していくのである。





と、何やら堅苦しいことを語ってみたが、理由は分からずとも、きっかけを話すことはできる。





14歳ブームの事の発端を説明してみよう。

数年前の、とある科学者の発表が全ての始まりだ。





要約すれば、

14歳では「子供ながらの直感の鋭さ」と「大人としての論理力」が奇跡的に両立し、世の中の行く末を最も確率高く予見できる時期である。

という内容。





今となってはその根拠は眉唾物らしいが、とにかくこの発表がきっかけで14歳のポテンシャルに注目が集まった。





同時に、「彼らの精神状態が最も人間として健全で、感受性が高く幸福度の総量が最大化されている」というデータが世に出回る。もちろん真偽は確かめられていない。





結果、14歳はあらゆるものが無料となり、あらゆるものが優先され、あらゆる場所での発言力が高まった。



「14歳の時に何をするかで一生の方向性が決まる」なんてことが囁かれ



「最も効率的な14歳の過ごし方」

「14歳の時に行きたい100の場所。」

「いつやるの?14(いよ)でしょ!」

「敢えて13歳を見つめる」

「逆に41歳とかどう?」



という書籍が続々と出版されたのだ。





14歳になる前の子供たちは「14歳」という黄金の時代をひたすらに待ち焦がれ、「14歳」を過ぎてかの人々は懐かしいあの頃の思い出に浸りながら「余生」を過ごす。







選挙でも14歳にだけ選挙権が与えられ、その1票は一般票の10票分として計算されだした。



14歳たちは国の中枢機構にまで決定力を持ち始めていったのである。









そしてついに、キングオブ14歳の少女が生まれた。

最もカリスマ性があり、最も賢明と言われていた14歳だ。





彼女の言葉には有無を言わせぬ説得力があり、誰も彼女の言葉を信じて疑わないようになる。

そもそも14歳というだけで正義なのだ。











ある日、彼女は重大な話があるとテレビの前に現れた。



視聴率は限りなく100%に近づき、国民はまるで女神の言葉を待つ信者のように、固唾を飲んでその時を待った。









可憐で聡明な少女はテレビの前で語りだす。







「14歳が主体となり、この世界は急速に、そしてとても良い方向へと変わって行きました。これはひとえに皆さんの日頃の努力の賜物でしょう。私は皆さんを誇りに思います。」



後に実施された調査によると、その言葉によって国民の実に8割が涙を浮かべたというのだから驚きである。









「ただし急激な変化は、我々「14歳」が持つ感受性や成長過程にも多大な変化をもたらしました。つまり、これからの14歳は「14歳である由縁の力」を発揮できない可能性があります。」

人々は不安そうな顔をする。これからはどの世代を頼りにすれば良いのだと困惑した。









しかしそれを予想していたかのように、少女は次の言葉を語り始める。





「でも安心してください。この事実は「絶対的な世代がいなくなる」ことを意味しません。14歳の代わりの新しい世代は既に見つかっています。」









そして微笑を浮かべた。















「これからは「15歳」が皆さんを導くこととなるでしょう。」

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