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第6話 復讐心のアゼル

《ティアの街 冒険者ギルド》

 シェリルが去った後の、冒険者ギルド。

 ここでは、勇者パーティーの面々がシェリルに対しての文句を言い続けていた。

「クソがあぁ!! シェリルの奴。勝手にこのパーティーから抜けやがって、リースをやっと追い出せたと思ったら、なんなんだ! ちくしょう! 魔王討伐が終われば、世界中から救世主として崇められるのによう」

「本当よね? 身体がエッチな馬鹿な女だったわ」

「全くだぜ。あの身体付き、いつも俺を誘ってる様にしか見えなかったのによう」

「あ?! おい、待って! アル。シェリルの身体は俺の物だぞ。誰が抱かせると言った?」

「あん? なんだと? あのエロ女にも全然相手にされてなかった奴が無いってんだ? あの弱虫雑務リースより、魅力の無い勇者様の分際でよう」

「……てめぇ、さっきから俺に対しての態度が悪いぞ。嘗めてんのか?」

「ちょ、ちょっと。止めなさいよ! ギルドの連中が、皆こっち見てるのよ!」

「あ? やんのか? ハリボテ勇者様よう。いつも、俺やリリルを盾にして戦ってる弱虫野郎がよう」

「……てめぇ、アル……ふざけんじゃねぇぞ!! ごらぁぁ!!」

「本性見せやがったな。ハリボテ勇者!!」

 勇者アゼルは剣闘士のアルの顔面を殴りかかろうとしたが、本物の実力を持つアルに殴りかかった拳を受け止められ。逆に殴り返された。

「ごばぁがぁ?!」

 顔面をアルに殴られたアゼルは、床へと弱々しく倒れ込んだ。

「ちょっと! アル。アンタなにしてんのよ!」

「相変わらず軽い拳だな……リリル。こんな奴見捨てて、俺と来ないか? 実は東の国にあるAランク冒険者パーティーから、スカウトされてんだ」

「はぁ? アル、アンタ。いきなり何を言ってんのよ?」

「………勇者パーティーが機能しなくなるのを恐れて言っていなかったが、アゼルの奴、俺達に精神干渉の魔法を使ってるだぜ」

「ごぁ?! なんでお前がそれを知って……がぁ?!」

「はぁー? 精神干渉の魔法? 嘘よ。そんなの使われてたら、魔法使いの私が分からない分けないじゃない」

「闇の魔道具だ。なんで、それを俺が知っているのかは、アゼルが居る前じゃ言えないけどな。1つ正しく言えることは、コイツは裏じゃあ俺達を精神的に裏で操ってたんだよ。精神干渉が効かないリースとシェリル以外をな」

「……嘘? 嘘でしょう? アゼル」

「……………」

「なんで黙ってるのよ。ちゃんと応えなさいよ。アゼル!」

「……………」

「この沈黙が答えだな。一緒に来い! リリル、こんな見せかけだけの勇者と居たら腐っちまう。新しいパーティーで一緒にやり直すぞ」

 剣闘士のアルは、魔法使いのリリルの右手を掴むと、冒険者ギルドの出口へと歩き出した。

「ちょっと待って!……アゼル。本当にそれで良いわけ? このままじゃあ、アンタの勇者パーティーが解散になるわよ」

「………勝手に行けブス魔法使い」

「……はぁ? ブス魔法使い? アンタ。ふざけんじゃないわ……」

「うるせぇ!! どいつもコイツもさっさと居なくなれば良いだろうが。解散上等だ。お前達旧勇者パーティーよりも優《すぐ》れた奴等を集めて、今度は最高の勇者パーティーにしてやるよ! 実力不足で逃げた。お前等と違って優秀な奴等をな! ぎゃははは」

「……何コイツ? 本当にアゼルなの?」

「あれが。アイツの本性だ……俺もリースから、精神解除の薬を貰って飲んでいなければ気づかなかっただろうけどな」

「何? リースから何を貰ったのよ?」

「……この街を出たら詳しく話す。今は東の国に向かうぞ。馬車で迎えが来てる。行こう」

「ちょ、ちょっと! 話がいつも急すぎるわよ。アル、アンタは!!」

ギィィ……ガチャッ!

「おいおい。剣闘士のアルと魔法使いのリリルまで居なくなっちまったぞ。残ったのは、ハリボテ勇者様だけかよ」
「そもそも、いつもリースの奴に雑務を押し付けて好き勝手やってたんだ。アイツは俺に酒とかも奢ってくれる良い奴だったのに。追放しやがって、仲間に出ていかれて当然の報いだろう」
「これからどうするんだろうね。あの勇者さんは」

 冒険者ギルド中から奇異な目で見られる、ハリボテ勇者。

「ぎぎぃぃ……これも全部、弱虫リースが俺のシェリルを誑かしたせいだ。あの野郎。俺が新しい仲間を集め終わり、魔王を倒した後、絶対に復讐してやるからな。覚えてろよ。リース!!」

 勇者アゼルは、シェリルの心を射止められなかった逆恨みから、リースへの復讐心を燃やし始めたのだった。

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