彼女との幸せ
そんな矢先、ある事件が起こった。
隣国と今住んでいる自国が戦争状態に陥ったのである。
原因は国境付近の村が隣国によって襲撃され、村人たちが殺された事から始まったもので、
そこから徐々に両国の関係は悪化して行ったのだった。
そして、遂に隣国による宣戦布告を受けた事で、全面戦争が始まったのである。
俺は家族と共に戦火に揉まれつつも、リリアを守り抜いていた。
やがて、戦争は終結するとリリアとの結婚の事実を隠すことも出来ずに
発表せざるを得なくなってしまうのであった 国王は怒り狂って、
俺の首をはねるよう命令を下したようだが、それをリリアが止めてくれたのだそうだ。
しかし、その代わりに彼女が取った行動が、国王への直訴である。
それは、自分が身籠もった子供と俺の身柄の譲渡だった。
俺は、彼女によって隣国へ連れ去られるとそこで暮らすこととなった。
「ごめんね、私のせいでこんなことになっちゃって」
申し訳なさそうに言うリリアに対して、俺は笑顔で答えた。
「気にすんなって! 俺はお前と一緒ならどこでも行けるぜ!」
そう言うと彼女は嬉しそうな表情を浮かべた後、俺の唇を奪った。
突然のことに驚きつつも受け入れた俺は、そのまま彼女を抱きしめながら熱い口づけを交わしたのであった。
「ふふっ、可愛いですね」
と、微笑みながら頭を撫でてくれたリリアだったが、急に真剣な表情になるとこんなことを言ってきた。
「あのね、貴方に一つお願いがあるんだけどいいかな?」
そう聞かれ、俺は頷いた。
すると、リリアは少し照れ臭そうにしながら話してくれた。
どうやら俺に、リリアの父親である王の前でリリアの夫として挨拶して欲しいらしい。
もちろん断る理由もなく引き受ける事にしたのだった。
その後、俺たちは婚礼の儀式を行い、正式に夫婦となった。
そして、その夜、リリアはベッドの上で大胆に股を開くとこう言ってきた。
「今夜は寝かせないから覚悟しておいてね?」
その言葉を聞いた途端、俺の心臓は激しく鼓動し始めた。
しかし、それと同時に期待感も高まっていった。
やがて、彼女は俺に覆い被さるようにして抱きついてくると、耳元で囁いた。
「愛してるわ」
その一言だけで快感を迎えそうになるほどの破壊力だった。
その後はひたすら愛し合った。
翌朝、目が覚めると隣にはまだ眠っている彼女がいた。
昨夜の光景を思い出しつつ見つめていると自然と笑みが溢れてきた。
そんな彼女を見ていると、愛おしさが込み上げてきて、つい抱きしめてしまった。
そうすると、彼女も目を覚ましてしまったようで目が合った瞬間、互いに笑ってしまった。
それからしばらくした後、着替えを済ませると朝食を食べに向かったのだった。
食事を終えた後、王様に謁見するために王城へと向かうことになった。
「お待ちしておりましたぞ、お二人方」
そう言いながら出迎えてくれた王様に挨拶をすると、早速本題に入ったのだった。
まず最初に、結婚に至った経緯を説明したのだが、それを聞いた王様の反応はあまり良くはなかったようだった。
それも当然だろう、なにせ平民である俺が貴族の娘と結婚する事になったのだから納得できないのは当然であると思うし、
俺だって最初は信じられなかったくらいだからだ。
だが、リリアの強い希望もあって仕方なく認めたという事らしかった。
そして、次に俺が話したのは、この国において一夫多妻制が認められているのかどうかという問題である。
それに対して王様は何も答えなかった。
ただ、黙ったままじっとこちらを見てくるだけだったのだ。
その様子から察するにあまり歓迎されていないことは明らかであったが、
「それでも私は貴方と結婚したいのです!」
というリリアの言葉によって押し切られる形で許可を出してもらうことに成功したのだった。
その途端、周囲から一斉に拍手喝采が巻き起こったのだが、
その中に紛れ込んでいる大臣らしき人物を見つけると違和感を覚えずにはいられなかったのだ。
その後、俺たちだけ残して他の人達は退出していったのだが、
二人きりになった途端、それまで笑顔だったはずの王様の表情が一変したのである。
その目はまるでゴミを見るかのような冷ややかなものになっており、
その視線に晒されているだけで全身に鳥肌が立ちそうなほど強烈な殺気を放っていたのだ。
そんな状況の中、リリアは臆することなく話しかけたのである。
「お父様、どうか私たちのことを認めてくださいませんか?」
そんなリリアの言葉に耳を貸すことなく無言のまま立ち尽くしている姿は異様な光景ではあったが、
しばらくして口を開いたかと思えばとんでもないことを言い出したのだ。
その言葉を聞いた途端、背筋が凍るような感覚に襲われた。
なぜなら、彼が放った言葉はあまりにも信じられないものだったからである。
そして彼は、衝撃の事実を語り始めたのだ。
その言葉を聞き終えると同時に、俺は絶句していた。
何故なら彼の口から語られた内容が余りにも信じがたいものだったからだ。
というのも、この国の王妃は側室を含めても5人しかいない上に、
そのうちの2人は他国から嫁いできた人たちだからだ。
更に言うと、残りの3人も全員王族の血を引いており、
彼女たちもれっきとした王位継承権を持っているのだという。
つまりは、この王国には王家の血を引く人間が4人もいることになるのだというのだ。
それだけではない、なんとリリアの母親までもが王族の血を引いた存在だったというのであるのだ。
その事実を知った俺は愕然としたが、まだ続きがあったようだ。
なんでも王様の話によるとリリアとその母親は元々は奴隷だったらしいのだが、
偶然通りかかった当時の王様によって救われたことで命を救われて忠誠を誓ったということだったのだ。
それを聞いてますます混乱していくばかりだったが、ここで一つの疑問が浮かんだのである。
何故そのような重要な情報を今になって打ち明けるのかという点について考えていたところ、その理由はすぐに判明したのだ。