第21話 歴史の洞窟 cave of history
翌日
俺達は川を上流にさかのぼっていき
ある洞窟を見つけた。
入口に何か特殊な文字で彫られている。
「アーカム・リゾス
古代語で歴史のアーカイブって意味ね。
それと奥の間に立ち入るべからずだそうよ。」
「とりあえず入ってみましょう。
奥の間っていうのに入らなければいいだけでしょうし。」
「サトーはあたしの後ろだ。中に魔獣がいるはずだしな。」
「たしかに魔素<エレメント>が少し濃いような。」
俺達は洞窟を進んでいく。
俺のインドラを電灯代わりにしようと思ったが、ヴィヴに無駄遣いするなと電灯の魔具<ガイスト>を渡された。準備いいんだよな。
1時間ほど歩くと
「ここは。」
広い空間に出た、石造りの柱が何本の立ち並んでおり、明らかに人工的に作ったものだな。
それにありとあらゆる所に細かく文字が刻まれている。
凄いな。これが全部何かの記録なのか。
「あっちが奥の間ってやつじゃないかしら。」
「――こっちは 当たりだ。
こっちに最近の人の足跡があるぜ。
だが巨大な石扉か」
ヴィヴが見つけた足跡の方には巨大な石扉がそびえたっている。
「よーし壊すか。」
エルがこんこん扉を叩いて厚みを確かめているが
「いや無理でしょ。厚みが尋常じゃない。
それにコルプガイストの人に敵対的な行動を取らないほうがいいわ。」
「まぁ、そりゃそうか。」
「――これは謎解きですね。
ここに何か書いてある。」
「何なにー
汝 北の王の末裔か
ならば血を捧げよ
なければ同胞に裏から開けてもらえ。」
「ちっ
コルプガイストの奴らしか開けられねぇってことかよ。」
帝国の情報通りだ。
「試しにエルとヴィヴの血をあの盃に注いでみるとか。」
「はぁ。あたしがか?」
「そうね。北の王って数百年前の人だし、もしかしたら遠縁の子孫かもしれないものね。」
「しょうがねぇ。だめだったらサトーもやってみろよ。」
「もちろんです。」
俺は転生者だからありえないけどな。
エルが裁縫の針で指から血を出して盃に落とす。
だが扉に反応がない。
それもそうか、エルリーフは南の方に多いらしいからな。
だが
ドヴェルグの可能性はある。
北に住んでいる人が多いからな。遠縁の可能性は十分にあるだろう。
エルがヴィヴの指をぷっと針で刺して血を盃に落とす。
「―――だめか。
サトー お前も試しにやってみろ」
「はい。」
ゴゴゴゴゴゴッ!!!!!
石扉が開いていき、光が差し込む。
「おいおい
ってことはあたしが北の王の末裔なのかよ。」
「あなた達は!?」
光が差した方向から紫髪の少女が歩いてくる。
「コルプガイスト一族の子か?
あたしらはて」
「エルリーフ一族の者よ。あなた達に同盟を組みにきた。」
「どういうことだよ。」
「彼らが帝国に抱いている印象が分からない以上は国内の部族の方が無難でしょう。」
「それもそうか。」
「分かりました。ですが、協力者に北の王国の末裔の方がいるようですね。」
「あぁ あたしだ。」
「そうですか。」
ずらりと男女が防護服のようなものを着て俺達を取り囲む。
「いったん、身柄を預かっても?」
「えぇ。でも手荒な真似はやめてちょうだい。
彼女 ヴィヴはドヴェルグの代表でもなくて戦いになると色々面倒だから。」
「それでは、ヴィヴ様はこちらへ。」
「はぁ。こいつらに手荒な真似するなよ。
特にサトーに手を出したら何が起こるか分からないと思え。」
「はい。あくまで検査のみですから。」
ヴィヴは少女に連れられて街の方へと連れていかれ、
俺達は
「あなた達はこちらです。」
俺達は防護服を着た男女に連れられて別の洞窟へ入らされた。
「ここにも壁一面に文字が。」
「当然ですよ。ここは暦の洞窟
中世の歴史が刻まれています。」
「どういうことよ。
まずは検疫と、目的について嘘検査を受けてもらいます。」
「そういうことね。
それならしょうがない。
でもヴィヴは検疫放置していいの?
彼女は生で肉食べたり、結構危ういけれど。」
「彼女はあちらで検疫のみ受けていますよ。」
「なるほど 流石は50年間他と交流してなかっただけはありますね。」
「ふふっ そうでもないんですけど。確かに技術供与を避けてきたのは事実ですね。」
俺とエルは一通りの検疫として全身に消毒液のようなものをぶっかけられ。
服も全部預かられた。
凄い徹底ぶりだな。
さらにその後、個室で目的を聞かれ噓発見器らしいものを首に付けられてプロフィールについても根掘り葉掘り聞かれた。
「――それで君は転生者なんだね。」
「はい。」
「まぁ、我らが先祖に力をもたらしたのも転生者だからね。」
「!? この街にも転生者が」
確かに部屋の魔具<ガイスト>にどこか家電に似た雰囲気を感じる。
外観が白塗りだったり、回路がカバーで隠されていたり。
他の街とは違って元の世界に近い。
「話すと長くなるが、要約すると
珍しく力を持たない転生者が現れてね。
東洋人の女僧だったそうだ。
何やら80歳の寿命で死んだが第二の人生ということでね。
我々に異界の様々なことを教えてくれた
その情報が元となり、魔具<ガイスト>の前身を生み出した。」
女性の僧、まさかな。
だが
「――女僧はアマネという名前ではなかったですか?」
「? どうしてそれを知っている。」
まさかアマ姉が転生していたとはな。
別人の可能性はあるが、もう確かめようがない。
「元の世界で俺とその女性は知り合いの可能性があります。」
「バカな!!もう200年以上前の話だぞ。」
「・・・俺もいまだに信じられませんが
恐らく転生する時間は前後するのでしょう。
俺は彼女より40年前に死んで200年後に転生してます。」
「――もう分からなくなってきたな。
まぁ、ともかく君に悪意はないことは分かったよ。」
俺が話している間、噓発見器は一度も動作しなかったからな。
俺は石壁の個室から出され、エルと合流した。
「何かあったの?」
「少しね。俺の元の世界の知り合いがこっちの世界にも来てたらしくて。」
「知り合い それってサトーの恋人?」
エルの直感はやたら鋭いな。
「恋人じゃなくて、片思いだけどね。」
「そう。
それで何者だったの?」
「魔具<ガイスト>の開発のために元の世界の知識を与えたらしい。」
「――凄いことね。
つまりあなたの知り合いが魔具<ガイスト>を作り出すきっかけになったということでしょう。」
「あぁ。」
俺とエルはコルプガイスト一族の街を歩いていく。
文明のレベルが1段階上がったかのようにあちこちに冷暖房器具があり、
調理器具も全て火ではなく魔具<ガイスト>で直接熱を与える方式になっている。
「――凄い。グランテラでもここまで高度な魔具<ガイスト>はなかった。」
「元いた世界と似た感じがする。
それにこの紋章
アマ姉の寺の紋に似てる。」
「おいおい 2人でデートか」
ヴィヴがいつの間にか俺の後ろから首に手をかけてくる。
「ヴィヴ 無事だったのか。」
「無事も何も好待遇だったぜ。
肉もたんまり食わせてくれるってよ。」
「――それより同盟は結べそう?」
「聞くの忘れてたな。」
「はぁ。それが優先でしょう。」
「だが帝国の印象は悪くないみたいだ。
魔具<ガイスト>の開発した帝国の研究者と仲が良かったらしい。
どっかの学院のお偉いさんだったらしいが、気さくな変人だったらしいぜ。」
「そっちは何とかなりそうね。」
「ヴィヴ様 急に飛び出されては困ります。」
数人の男女がヴィヴを追いかけて来た。
「おー わりぃな。
こいつらを見かけてな。」
「お連れの方もどうぞ街長宅へ
同盟について話を伺いたい。」
「えぇ。」
コルプガイストの街 エルミシア 街長の家
石造りの巨大な建物に入る。
1階は客人用の応接室になっているらしく、
複数の部屋に別れていて他の客もいるらしい。
「おぉ 王の末裔があなたなのですね。」
白い髭をと白髪の老いた男性が別の応接室から出てきた。
「あぁ。あたしがあの石扉を開いたが、
話があるのはあたしじゃなくてこっちのエルだ。」
「おぉ そうでしたか
王の末裔のお連れの方とあらば何でもお申し付けください。」
「――なるほど
グランテラで混乱があることは使いの者から聞いておりましたが、
まさか国が乗っ取られるところまで事態が進んでいたとは。」
「それであたしらと同盟を組んで一緒に戦ってくれるのかどうか。
答えを聞かせてくれ。」
「こればかりは出来ませぬな。」
「何でだよ! 帝国との仲が悪いわけでもないし、エルリーフとの同盟も別に断る理由なんて。」
「――あなた達が100年前に交流を閉ざした原因に関係が?」
「はは 流石は転生者ですな。その通りです。」
俺を初見で転生者と見抜いたのか。
「詳しく聞かせてくれる?」
「面倒な経緯がありましてな。」
100年前 旧エルミシア市街地 街長の家
「完成した魔具<ガイスト>が戦争に利用された。」
「だが我らのおかげで帝国もアルテニアも人々の生活は豊かになった!
そうだろう!?」
「今回の戦いで10万の人が死に、その大半が魔具<ガイスト>によってもたらされた。
我々はもう耐えられない。」
「――っ!! 愚かな!!!」
ゴウゥッ!!!!
外で風が巻きあがる激しい音が鳴った。
「何者だ!!!
こちらは街のあり方を決める重要な会議を」
「鳳です!!!街に鳳が!」
「「!?」」
家に集まっていた多くの男達が一斉に外に飛び出す。
「――こ これは」
「まるで連邦の国旗にある」
(貴様らに告げる。)
「な 何だ頭の中に勝手に声が」
(汝らが授けた力は北方であまりに多くの命を奪いすぎた。)
「そ それが何だよ!!!
俺達はただ道具を作って、作り方を教えただけだ!!!」
(貴様らは人が成長するより早く進みすぎた。
転生した巫女の知恵を借り、あまりに性急に進みすぎたのだ。)
「そ そんなことは」
(貴様らには一切の外界との技術供与を止めてもらう。)
「――もし破れば?」
(しばしわずか100年ほどの我慢だ。もし破れば我が貴様らの街を消す。)
「脅しじゃねぇか!
おい お前等この害鳥を駆除する!!!
いいな!!!」
「「おぉぉ!!!!」」
(我と戦うのは構わんが、誓いは守れ。)
鳳が飛び上がる。
町は業炎に包まれた。
人々の悲鳴が夜空に響いた。
99年前 旧エルミシア市街地
「どうして!何で私達が」
「鳳よ!!どうか子供達だけはお救いください!」
市街地は廃墟となり、人々は炎と雷に包まれ逃げまどっていた。
(残念だ。貴様らは誓いを破り続けた。
貴様らの行いが転生者共を引き寄せたのだ。)
「そ そんな
この声は」
「1年前の鳳なの?
どうして! どうして助けてくれないの!!!」
(貴様らが魔具<ガイスト>の技術供与をやめていれば、転生者共がここを突き止めることはなかっただろう。貴様らの魔具<ガイスト>は転生者に届く牙になってしまった。)
「お前が転生者を殺してくれればいいだろ!!!」
(それは無理だ。我は星ノ獣 生命の大量壊滅<カタストロフ>に関わらぬ事象には干渉できぬ。)
「嘘だ!!! 東洋では鬼人が戦に手を貸したと」
(奴らは力を分散し、干渉を最小限に抑えている。
知恵なき者のホラにしてはよく出来ている。
貴様らだけは助けてやる。)
鳳の羽が生き残った人々に降り注ぐ。
「! お前等は」
「我らエルリーフとドヴェルグが加勢する。」
「汝に我らが爪と杖を授けよう。」
現代 コルプガイストの街 エルミシア 街長の家
俺達は村長から村の記録を教えられた。
「――それで、二度と外界との接触を断ったんですね。」
「あぁ。村に数人だけ外の世界との連絡係は置いてあるが。
あくまで連絡のみで接触はしない。
北の王国の末裔を除いてな。」
「――それでこの場所に。」
「北の王国 我らの先祖が築いたこの地から出られんのだ。」
俺達の交渉は決裂した。
翌朝
「――どうすんだ。
転生者と戦うのに力を借りるなら武器だけもらうって手もある。」
「そうね。長に文をとばすわ。
術式の構築にしばらく時間がかかるけれど。」
「まぁ、その鳳ってのをぶっ倒すのが一番手っ取り早いだろうけどな。」
「言葉が通じるみたいだし、説得が良さそうだけど
まずは場所を特定するところからね。」
「・・・俺はもう一度あの遺跡を巡ってみます。」
「じゃ、あたしはサトーについてくぜ。
あたしがいなきゃあの石扉があけられねぇだろ。」
「そうだったな。」
街の人から暦の遺跡と呼ばれていた遺跡に戻る。
「エルは真面目だからな。
こっちの扉に入るなって書いてあったら入らねえ。
だがサトーとあたしは違う!気が合うな。」
俺達は遺跡にあった広い場所まで戻り、禁じられている扉の仕組みを調べていた。
「俺は無理やり入ろうとは思ってませんが、
川を流れてきた黒い魔具<ガイスト>、あの正体が何かひっかかっていて。」
「――そういや忘れてたな。もしかしたらコルプガイストの説得のヒントになるかもしれねぇ。」
「そこまでは考えなかったですが、ただ黒い魔具<ガイスト>をこの街で見かけなかったのが気になってます。」
「こっちにも盃があるからあたしの血入れてみるか。」
「え そんなところに」
ゴゴゴッと石扉が開いていく。
俺とヴィヴが入る。
中には細かい黒い箱型の魔具<ガイスト>があちこちに広がっていた。
そしてカタカタと勝手に動いている。
「自立型の魔具<ガイスト>!?」
黒い箱型の魔具<ガイスト>が移動していき、奥の場所に入っていく。
そして洞窟の地面を削り、土を運んでいく。
「―――おいおい こいつは何なんだよ。」
ヴィヴが驚愕のあまり斧を構える。
「こいつらは敵じゃない。」
俺は魔具<ガイスト>達の行く先を追っていく。
「なぁ やめねぇか。
勝手に動いてるぜ。」
車とかの勝手に動くものを知っている元の世界の住人と違って、自動で道具が動く感覚になれていなんだろうな。
「ヴィヴは俺の後ろをついてくればいい。」
「お おぅ。別に怖いわけじゃないからな。」
「誰しも苦手なものはあるよ。」
「べ、別に あたしは怖がってなんか
ひゃっ!」
ヴィヴが伸びてきた手の形の魔具<ガイスト>に驚く。
「驚くヴィヴは可愛いな。」
「ふ ふざけんな!帰ったら肉おごらすからな!」
新しいヴィヴの一面が見えて嬉しいが、
どうやら最深部についたらしい。
「――おいおい これは。」
培養槽がいくつも並んでおり、その中には今まで見たこともないような生き物が沈んでいる。
「・・人と魔獣の混成体か。」
元の世界のいわゆるファンタジーものに出てくる半獣人ってやつだ。
ドヴェルグのように感覚器官や筋繊維に獣に似た特徴が現れるのではなく
完全に体の半分が獣の人間。
「そんなのありかよ。」
「――この文字は
培養層の隣に書物が積み重なっており、日本語の紙束が間に挟まっていた。」
「読めんのか?」
「あぁ。アマ姉 元いた世界の俺の知り合いの書いた文字だと思う。」
きれいで整った筆跡を見間違うわけがない。
「隅のおけねぇなってのは置いといて
なんて書いてあるんだ?」
「元いた世界の家電の電気回路や、エネルギーをどう熱や動力に変換しているか
モーターとかそういう基本原理だな。」
「? よく分からねぇが、魔具<ガイスト>に似たようなもんか。」
「あぁ。
それに」
[もしこの世界に悟士がいたら会いたい。]
と小さく書かれてあった。
「っ!? おいどうしたサトー?」
「ぐすっ 悪い。何でもないよ。」
そうかアマ姉は俺が死んで転生している可能性も考えてある時期までは待ってくれていたんだろう。俺が現れるのを ずっと。
「そ そうか。まぁ何だあたしはちょっと席外すぜ。」
ヴィヴが培養槽のある区画から出ていく。
気を使わせてしまったな。
他にも何枚かあった紙束を見てみるが、それ以外には残ってなさそうだ。
今度は魔具<ガイスト>への応用も書いてある。
転生者に対抗するために魔具<ガイスト>の開発に協力していたらしい。
そして自分自身の遺伝子情報をある計画に渡したらしいこともつづってある。
「人造星ノ獣<アーティアステリオ> 略称AA計画」
それは人工的に星ノ獣を生み出し、転生者と戦う相棒とする計画らしい。
滅びた北の王国の遺産と元いた世界の知識を組み合わせて計画は始動し、未来永劫
新しい生物種を作ることを試行し続けるプロジェクトらしい。
[悟士 ごめんなさい。仏の教えには背いているのは分かっている。
だけど、もしあなたが未来に現れるならきっと力になる。
あなたは仏の教えを大事にしてもしなくてもいい。
今度は長生きをして、もっと色んな人と会って色んなものを見て。]
恐らく晩年に書いたものなのだろう。筆圧が弱く文字がゆれている。
アマ姉 届いてるよ。確かに気持ちは届いてる。
「うぐっ」
涙が止まらない。
アマ姉 ありがとう。
「おーい こいつらの起動方法が分かったぞ。」
ヴィヴが戻ってきた。
「――そうか。教えてくれ。」
「ドヴェルグの古いことわざの暗号で書いてやがった。
黒き魔具<ガイスト>を台座に捧げよ。
そして名を呼べ らしいぜ。」
「黒き魔具<ガイスト>っていうのはあの黒い箱のことか。」
「あぁ。多分あのパズルみたいなのを解かなきゃならんのだろうな。」
黒き魔具<ガイスト>、立方体の下側に車輪がついるそれは1つ1つ絶妙に形が異なる。
そして台座にはその魔具<ガイスト>が全て収まるであろうくぼみが用意されている。
「こんなことならエルを連れてくれば良かったか。」
「エルは自分のやるべきことをやってるんだ。
俺達もやってみよう。」
「――サトー お前ふっきれたな?」
「そうかもしれないな。」
アマ姉は最後まで俺を想ってくれていた。
なら 俺はアマ姉にふさわしい男になる。それだけだろう。
「へっ 捕まえるのはあたしに任せろ!
組むのはサトーだ!」
数時間後
「はぁはぁ ちょこまかと動き回りやがって これで最後だ。」
体力お化けのヴィヴの息を上がらせるほどの逃亡力を見せた黒き魔具<ガイスト>達だが
無事に全て捕まえて台座にはめ込むことが出来た。
「それで後は名前だな。」
培養層の全てに古代文字で作られたネームプレートがある。
そのネームプレートも正しい形に組みなおさなければ名前が見えないらしい。
どんだけパズル好きなんだよ、この研究者
そういえばアマ姉も時々やってたっけ
俺が転生する直前は異世界ものの小説にはまったり多趣味で博識なんだよな。
「あぁ。だが起動していい個体とそうじゃない個体もあるはずだ。」
「そりゃそうか。」
「まずはコルプガイストの一族と相談して」
「ウゥ ウォオオオオオオオオッ!!!」
一番奥にいたもはや人の形をとどめていない悪魔のような黒い個体が震えだす。
「おいおい どうすんだ。あいつは駄目なやつだろ!!」
ピシっ!!!
培養層を突き破り人型に似て背中に翼の生えた顔が龍のような生き物が出てくる。
全身が真っ黒い、まるで神話に出てきそうな悪魔だ。
「おいおい こいつはやべぇぞ。
魔素<エレメント>の量があたしの2倍、いや5倍、もっと膨れ上がっていきやがる。」
「ヴォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
黒い獣が洞窟全体が振動でつぶれそうな雄たけびをあげる。