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第121話 凝り過ぎた設定

「明石は相変わらずでかいねえ……それにしても明石とかなめ坊か……すごい組み合わせだな……元やくざと現役SM嬢。なんだかうちが『特殊な部隊』と呼ばれる理由が良く分かってきたよ」 

 嵯峨はそう言ってニヤリと笑った。

 画面は銃を取り上げて再びかなめのいた場所に照準を合わせる明石の姿があった。

『あなたは……なぜ機械帝国のことを?あなたは……魔力も無いのになぜ?』 

 小夏の肩に飛び乗ったグリンを明石が見つめた。

「それよりこの奇妙な動物に突っ込むな、俺なら。どう見てもおかしいだろ?こっちの方が。なんで誰も不思議に思わないの?そっちの方が俺は不思議だよ」 

 そう言いながら嵯峨は明らかに無理をしておはぎを口に運んだ。

「新さん、お嫌いでしたか、甘いものは……もしかして迷惑だったかしら……」 

 明らかに顔色の悪い嵯峨を見て春子はそうつぶやいた。

「いやあ、そんなこと無いですよー。僕は大好物ですから……おはぎ……」 

 明らかに春子に気を使っている様子にカウラと誠は苦笑いを浮かべると再び画面を覗いた。

 答えることもせず明石は小夏に近づいた。明らかに変質者とコスプレ少女と言うシュールな絵柄に突っ込みたいのを我慢しながら誠は画面を見つめていた。

『知っている人は知っているものさ、どこにでも好奇心のある人間はいるものだからね』 

 明らかに関西弁のアクセントで明石は無理やり標準語をしゃべった。誠はとりあえず突っ込まずにそのまま黙っていた。

「やはり明石中佐は無理して標準語をしゃべってらっしゃるんですね。あの人の関西弁は店でも凄かったですから」

 春子はそう言って無理に標準語をしゃべろうとしている明石を笑った。 

「春子さんからもそう見えます?そうですね、アイツは産まれは鏡都なんですが、播州コロニー群暮らしがかなり長かったって聞いてますからね。俺の親友にも播州コロニーの荘官をしている武家貴族が居るんですがあそこの出身者の訛りはなかなか抜けませんよ」

 明石と同じ甲武軍からの出向の嵯峨はそう言って苦笑いを浮かべた。誠達が画像を鑑賞していた間も一人作業を続けていたカウラは大きく息をしてそのまま一度立ち上がり、再び椅子に腰掛けた。

『でも、あなたは魔法を見ても驚かなかったじゃないですか。この世界の人がそんなに簡単に魔法を受け入れるとは思えないんですが』 

 グリンの言葉に明石はにやりと笑って禿頭を叩いた。

『確かにそうだ。俺はある人物から話を聞いてね』 

「そのある人物が神前君……でもどう見ても……プリンスには見えないけど」 

『マジックプリンス』と言うなんのひねりも無い役名の誠の顔を春子はまじまじと見つめた。その吐息がかかるほどまで接近して見つめられて、誠は鼓動が早くなるのを感じたが、春子はまるで関心が無いというように再び画面に目を移した。

『いずれ君達と一緒に戦う日が来るだろう。それまではお互い深いことは知らない方がいい』 

 そう言うと猟銃を握り締めて明石は立ち去った。

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