第七話『リフルシャッフルの使い方』1/3
◆【リレイズ北村】
正明「レイズ800」
憂「リレイズ2,000」
正明「……」
ボードはA,A,4。で、オレのカードはK,Q。
つまりこの時点で憂ちゃんがAを持っていれば負け濃厚。4ならワンちゃんK,Qが落ちれば逆転。共に何もないなら……Aに近いカード、KQを持っているオレが有利だ。
ポーカーフェイス。
それは無表情の事だと思っていたが、目の前の女はニマニマと獲物を嬲るような表情を常に浮かべる。
ムカつく。
ムカつくように――誘導されている。
正明「……」
不思議なもので、人工物だとわかれば挑発も冷静に眺められる。
正明(つってもそれは眺めるだけど、イラつくもんはイラつくんで――!)
Aはない。それならKで――ッ
憂「うふふー。お姉さんポケットカード持ってるかもよ~」
正明(そうだ。ポケット――ッ!)
ポケット、というのはペア。
つまりKK,QQ,JJ,22など配られた二枚がペアカードの事。確かにそれならどんなペアでKQなら現状は負けてしまう。
正明「……」
ペアの確率は……1/13か。まあ大体そのへんか。
薄い確率。麻雀ならば切る。
だがこれはテキサスホールデム。
その薄い確率だからこその、2,000点のリレイズをしたと考えるべきか。
憂「うふふー」
そう、"考えさせられている"べきか。
ッハ。
楽しいじゃん。テキサスホールデム。
――ない!
正明「オラァッ!」
手持ちのチップを全て中に突っ込む。
正明「オールインだ!!!」
憂「ふーん」
駆け引きなしで、伏せたままカードを中央に捨てる。フォールド。つまりこの勝負は憂ちゃんのブラフを見破ったオレの勝利だ。
憂「目は良くなったね。でも、臆病だね」
正明「――あ?」
必勝のカードではないのにオールインをしたリスクが、臆病?
憂「本当にウソだと思ったなら、リリレイズをする。ベッドは3,000ぐらいかな?」
憂「私からすれば、2,000出している上に1,000なら、乗っかるであろう額」
憂「もちろん4枚目のターンカードが見たくないのはわかるけど、それでもカード1枚分のリスクなら1,000点乗せでもお釣りは来ると思うな」
正明「……」
なるほど。もっと絞れたのに、オールインなんてするから途中で死んじゃったと。
初日以降はこうやってポーカーを繰り返す日々。1アクション毎に心理指導してもらえる分、自分では上達しているつもりではある。
といって実戦経験0のド素人という事実ももちろん把握している。
だからこそ、自分の力量と賭場の力量がある程度見たい欲に駆られる。