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第2章47話:水中


水中に入る。

私はすぐに感動した。

……めちゃくちゃ綺麗だ。

太陽の光が水面を透かして、湖の底の砂利や岩石を照らしている。

大小さまざまな淡水魚たちがのんびりと泳いでいる。

あんまり深くないし、そのおかげで暗くない。

水の中に広がる絶景だった。

(狂った人魚がいるってぐらいだから、もっとおどろおどろしい湖を想像してたけど……)

まったく違っていた。

良い意味で予想外である。

私はそんな水中を、足を揺らすだけで優雅に泳ぐ。

(水がすごい澄んでて……なんというか、そういうリラクゼーションみたいだね)

ちなみにゲーム設定では、人魚はこういう澄んだ水の中に棲みつくという。

まあ、今回の人魚は狂ってるらしいけどね。

さてその人魚さんはどこかな?

……いた。

水の中で、タツノオトシゴみたいに直立して浮かんでいる人魚。

目を狂ったように見開き、何もない虚空を見つめている。

「……!」

人魚の目がこちらを捕捉する。

次の瞬間、いきなり私に向かって突進してきた。

(ちょっ……速い!?)

あっという間に接近してきて、尾ひれを叩きつけてきた。

痛くはない。

しかし、息が止まりそうになった。

(あんまり強くなさそうだけど……でも速いのが面倒だね)

この速さだと水中で攻撃を当てるのは難しい。

しょうがない。

アレを使おう。

私はウェットスーツに装着しておいた秘密兵器を手に持った。

それは、雷爆弾である。

その名の通り、雷撃を発生させる爆弾だ。

スタンガンよりも単純な仕組みなので作るのは簡単だったが、電圧は高い。

水の中で発生させたら、近くにいる生物は一撃で気絶させられるだろう。

(私はこのウェットスーツがあるから効かないけどね)

このウェットスーツは雷を無効化する力がある。

チート能力のように聞こえるが、絶縁体を意識して錬成したら、すぐに出来た。

雷無効スキルはおそらく、耐性スキルのなかで最も習得しやすいものだと思う。

(この爆弾が効かなかったら撤退も考えなきゃね)

そんなことを思いながら雷爆弾を構える。


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