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第1章18話:シャンプーとトリートメント


私はお風呂が好きだ。

だから前世では、結構、入浴にはこだわっていた。

しかし、それゆえ、異世界に来てからは不満も多かった。

なにしろこの世界の入浴グッズって品質が悪いんだよね。

まずボディソープは存在すらしない。

石鹸(せっけん)しかない。

リンスやトリートメントなどもあるはずがなく、身体をふくタオルですら微妙な出来だ。

だから錬金術を使って、まずお風呂グッズを中心に開発してみたいと思った。

その第一号が、シャンプーである。

プッシュ式で泡が出るタイプ。

匂いもクセがなく、甘くて良い香り。

老若男女、誰にでもウケが良さそうでシンプルな……。

そんなシャンプーが、ついに完成した。

自分でも試してみたが、上出来だった。

現在は、アリアにも提供し、試してもらっている。

今日はその報告会だ。

私の部屋で、アリアが言った。

「ルチル様の開発したシャンプーは……なんと申しますか。一言でいえば最高でした」

「つまり、使い心地は良かったと?」

「良かった……なんてものではありません。私が経験したことのない代物です。甘く優雅な匂いで、あんなにうっとりするような時間は初めてです」

「気に入っていただけましたのね。では、売れそうですか?」

「あれが売れないなら、世界が間違っています」

そこまで言うか。

まあ、私も売れると思うけど。

「ただお風呂というものは、貴族の邸宅か大衆浴場にしかありませんから、庶民に広く販売することはできませんね」

そう。

この世界では、お風呂は庶民の家に備わっているものではない。

貴族の家だけだ。

だから平民の場合、大衆浴場で入浴を済ませるのが普通である。

つまり庶民向けにシャンプーを販売することができないというわけだ。

「そうですわね。では貴族向けの高級商品として売り出すのがよろしいかしら?」

「それがいいと思います。値段は1つ200万ディリンでいかがでしょうか」

「た、高くありません? シャンプー1つで200万?」

「むしろ安いほうかと。1000万で売っても買い手がつくかと思いますよ」

「マジですか……」

シャンプー1個1000万なんて、ボッタクリのレベルを超えている。

それでも買い手がつくのだったらえげつない商売だ。

原価なんて1000ディリンもしないのだから。

「ちなみに錬金術を使って作ったのですよね? だとすれば、ルチル様以外には作れそうにありませんか?」

「いえ……作り方を知れば、私以外でも生産は可能だと思いますわ」

「なるほど。なら、錬金術師を何人か雇ってみますね」

こうしてシャンプーの生産と販売の構想が固まっていった。

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