第7話 時代行列に欠かせない助っ人
186センチの身長の誠が見上げるような大男がそこに立っていた。
二メートルを優に超える大男は僧兵の格好で仁王立ちしていた。どこからどう見ても武蔵坊弁慶である。
「なんじゃ?神前。アメリア達が探しとったぞ。クバルカ先任は見つかったのか?」
武蔵坊弁慶がそう言った。武蔵坊弁慶こと、司法局本局で調整担当のトップを勤めている明石清海中佐は手にした薙刀を天に翳(かざ)して見せた。
「ああ、クバルカ中佐なら見つかりましたよ。それにしても明石中佐。着替えないんですか?」
そう言う誠にしばらく沈黙した明石だがすぐに気が変わったとでも言うように本部に入っていった。
「でもありゃー本当に武蔵坊弁慶だな。グラサン外した明石の面は初めて見たわ。目が小さいな……顔とのバランスがまるで取れてねー」
ランは呆れたようにそう言うと誠を見上げた。
「そうなると、小柄な牛若丸がクバルカ中佐ですか?明石中佐はクバルカ中佐が先任将校だってことで頭が上がらないみたいですから」
誠は皮肉たっぷりにランに向けてそう言ってみた。ランは誠の皮肉に動ずることなくいつものにらむような目つきを誠に向けてきた。
「牛若丸?そんな弱い弓を使う将軍に興味はねーよ。アタシの趣味は和風と言うよりもむしろ中華風なんだ。『呂布奉先』以外の誰がアタシに似合うんだ?『人類最強』であるアタシだったら和風なら……そうだな……『本田平八郎忠勝』くらいじゃねーかな似合うのは。まあ時代は違うけど」
得意げにランはそう言ったが。歴史知識ゼロの誠には『呂布奉先』も『本田平八郎忠勝』も理解できなかった。
「それじゃあアタシ等もいくぞ。急ぐんだろ。こいつは着る時だってあんだけ時間がかかったんだ。脱ぐのも大変だろ」
ランの言葉につられるようにして誠は本部のテントに入った。